第46話:小説の文章における体言止め
昨年からある読書会に参加していて、毎月、指定された課題図書を読んでいる。
ところが、読書会専用の課題図書は人気作の奪い合いになるということで、残りは不人気作品が多く、正直なところ指定される本は質的にどうかと思うようなものが多い。
先月の課題図書は、読み始めてすぐに「これは読了できない」と思った。
なぜかというと、地の文に体言止めが多いからで、数えてみたら1ページに3,4回も出てくる。一応は歴史小説で、書店員が選ぶ何とか歴史小説賞や、別の何とか賞の受賞作ではあるものの、とにかく読めないほど体言止めが多い。
常識的に考えて、あまり良くない文章だと思ったのだが、他の参加者はその点には違和感を持たなかったらしい。
ネットで文章や創作に関するアドバイスの類を調べてみると、地の文における体言止めは、基本的に「やめておけ」という意見が多い。この辺りは好みの問題もあるだろうし、意見や立場も様々かもしれない。
三つほど引用してみる。
↓
「ライトノベル作法研究所」より。
http://www.raitonoveru.jp/howto2/bunn/05.html
体言止めの使用には注意を!
●例1 歓喜のうなりを上げるエンジン。
●例2 彼のくれた花束。
●例3 紅の残照に沈む銀杏並木。
●例4 夏の陽射しを浴びて銀色に輝く海原。
●例5 凛とした声を響かせる少女。
これらの文章は、『体言止め』と呼ばれます。
『体言』とは、国語の教科書風に説明するなら、「自立語で活用しない、文の主語にできるモノ」。
要するに『名詞や代名詞』のことですね。
『体言』である名詞や代名詞で『止める』から『体言止め』と呼ばれます。
体言止めは歯切れが良く、余韻・余情を生じさせるのに効果的です。
文章に味わいを持たせることを追求した和歌・俳諧から生じた描写テクニックです。
描写などに使用すると、場面の美しさをより引き立てることができます。
ただし、「わー、これは便利な技だぁ!」などと思って、安易に多用してはいけません。
体言止めはブツブツと途切れた形になるため、読者に対して、とても投げやりな心証を与えるのですね。
しかも、過分に余韻・余情を生み出すと、筆者が自分の文章に酔っているような悪い印象も与えます。
そのため、連続で使用すると、逆に文章の質を落とすことに繋がってしまうのです!
・・・・・・
「これだけはやめろ」より。
http://www1.odn.ne.jp/drinkcat/topic/lecture/stop_it/yamero.html
体言止めは減らせ
もし、まだプロになってない人であるなら、体言止めは控えて欲しいと思います。
体言止めは効果的に使えば文章のテンポが上がります。でも、まだ文章の下手な人が体言止めを多用すると、まるで書きかけの中途半端な文章や、シナリオを読まされてる気分になります。非道い時には文章の断片を羅列しただけのような、とても他人に見せる文章とは思えない仕上がりになります。
・・・・・・
「小説の書き方のメモ」より。
http://ncode.syosetu.com/n0752be/118/
・体言止めの乱用
これもよく言われることですが、体言止めの使い過ぎもよくありません。
体言止めは、バトルシーンなどのスピーディーな展開や、引き締まった印象を与えるのに有効です。しかし、体言で終わるということは動詞が省略されているということなので、読者にその先を想像させる部分となります。
体言止めには、文章によってはあいまいな表現になるため、乱用すると読者に丸投げしている、自分に酔っているという悪印象を持ちます。
そもそも、小説で不必要な体言止めは感心されない傾向にあるようです(おそらく、基本的に「~した」「~する」で終わるという、小説は「主語+述語」をきちんと示すものであるため、そこにその形にそぐわない体言止めが入るのは不自然だから、ではないかと思われます)。
ですから、「基本的には体言止めを使わない」「使うとしてもここぞという場面で使い、数を少なくする」ということを心がけるべきでしょう。
↑
上記三つの意見は、ほぼ完全に同意できる。
私自身が文章を書く場合、体言止めの文章には「絶対にしない」とまでは言わないが、ほぼしない、なるべくならしたくない、できれば避ける派である。ただし文章の流れを止めたい場合や、場面の意味合い、その他の理由で、体言止めにした方が効果的な場合はする。
自分が誰かの書いた小説を読む場合も、なるべくなら避けてほしい。
冒頭に挙げた課題図書では「~は、◎◎◎の娘。」「描かれているのは、~の鳳凰。」といった表現が何度も出てくるので、そこは単に「娘である。」や「鳳凰であった。」とすれば済むだけの話である。
どうしても横着で粗雑な印象を受けるので、書き手が損をしているのではないだろうか。
たとえばラーメンの中に髪の毛が一筋だけ入っていても、おそらく人は不愉快になる。それが5本や10本であれば尚更で、この小説はとても我慢してまで読む気にはなれなかった。別の作品は面白かったとか、後半は面白かったと言われたのだが、ちょっと私には無理だと思う。
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