出会い×一目惚れ

 彼からの返事を待つ間に彼のことを考えましょうか。


 彼は私が言うのもなんですが見た目は地味です。背は180ぐらいと高いことには高いのですが、体格はがっしりしているわけでもなく、ひょろっとしています。髪型は最近では珍しいくらい短く、好青年という印象を抱きました。


 きっとそれは私だけでしょうが。


 顔は全くとっていいほど整ってなく、むしろ不細工と呼ばれる部類でした。


 

 そんな彼を初めて見かけたのは文芸部の部室で、彼は映画部でした。文芸部員である私が文芸部の部室にいるのは当然として、映画部員である彼は映画部の撮影で文芸部の部室に訪れていました。


 その彼は特段顔が整っていたり、目立つ演技しているわけでもなく、そもそも彼は裏方で、それも監督やカメラマンなどの目立つ裏方でもなく、つまり何故彼のことが目についたのかはわかりませんでした。今思えば一目惚れだったのでしょうね。



 臆病で小心者な私に話しかける勇気などなく、彼が道具を片付けていく様をチラチラと横目で見ることしか出来ませんでした。このとき私はあまり見ないようにしていたのですが、私の≪見ないように≫は凝視だったようで、次の日、特に部長には見すぎだとからかわれてしまいました。


 淡い恋心を抱くことが初めてだった私はこの胸の高まりをどのように抑えればいいのか解らず辟易としてしまいました。名前も知らない彼と廊下ですれ違うたびに顔が熱くなり、朱く熟れた顔を彼が見ているのではないかという羞恥に襲われ下を向いて歩くこともしばしばでした。

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