呪壊
アルセーヌ・エリシオン
呪壊
人間誰しも
生まれてから、
死を迎えるその瞬間までに
一度は経験するのではなかろうか。
そこにあるはずのない、
いるはずのないモノの
気配や視線を感じる事が。
だが、それが
気のせいではなかったことに
気付く瞬間が
いつかアナタにも
訪れるかもしれない・・・
あれは、私が22歳の夏。
夜中だというのに
うだるような暑さのなか
ネクタイを緩め、
冷房を節電モードでかけつつ
いつものように
サービス残業をしていた
火曜日のことだった。
翌日行われるプレゼンの
資料整理と最終確認をしていた為、
気が付けば時計は午前2時を回っていた。
久しぶりの午前様、
しかも独り残業だった。
入社2年目、
居慣れた会社と言えども
深夜となれば
やはり不気味な雰囲気が漂う。
外を走る車の音や
道を歩く人の気配すらなくなる
生活音の消える時間帯。
丑三つ時を控えた独特の静けさが
あらぬ恐怖心を駆り立てる。
視覚、聴覚はもちろん、
全ての感覚が
鋭敏に研ぎ澄まされ
体中が敏感を纏う。
一度でも『畏怖』に踏み入ると
払拭するのが極めて難しくなるため、
大抵は『気のせい』でやりすごしていた。
そういうこともあり、
独り残業の時は必ず
社訓に反して不必要な所まで
煌煌と電気を付けたまま
パソコンに向き合っていた。
そんな時に限って
当たり前のようにふと思い出す
テレビやビデオで観た
『恐怖体験』や『恐怖映像』。
不自然さのない音すら
ラップ音に聞こえる。
蛍光灯の明滅が
不自然な超常現象に感じる。
窓やドアの小窓、物陰から隙間、
机に隠れて見えない足下まで、
全てが注視すべき箇所へと
変貌を遂げる。
ただ、今日だけは、
そのあらゆるものに対し、
いつも以上に
敏感な小心者になっていた。
なんとなく
気配というか視線的なものを感じて
振り返る、
思い過ごしでキーボードをたたく、
また感じて振り返る、
やはり思い過ごし・・・
流石に三度も繰り返すと
そのうち仕事に対する集中力も途絶えて
気力もなくなる。
何とか、
自分の中の
得体の知れない恐怖心と闘いながら
やっとのことで仕事を片付け、
日報を書こうと棚の日報に手を伸ばした。
すると、
何処からともなく聞こえる
リィ~~~~~~~ン
という微かな高い音・・・
いや、音ではない・・・
「耳鳴り?」
3秒程で、
頭の中から耳へと抜けるように
その音はフェードアウトした。
久しぶりに夜中までした
残業の疲労が出たんだろうと
いつものように、
そう無理やり思い込むことにした。
が、次の瞬間、
すざまじい鳥肌に全身が硬直した。
今まで感じたことの無い
生まれて初めて感じる
明らかに異質な、
禍々しい視線と気配。
これは思い過ごしなどではないことを
本能的に躯が感じ取っている。
確実な気配を纏った視線が、
こびりつくように
ぬったりと執拗に私に絡んで来る。
身の毛もよだつ狂気に満ちた気配。
恐る恐る部屋を見渡すが
何も変わった様子は無い。
しかし、何かが居る。
確実に、この部屋に。
気のせいだと言い聞かせ
前を向くと
スリープしたパソコン画面に映る
自分の姿に飛び上がり尻餅をついた。
「うわっ」
「なんだよ・・・
びっくりした・・・」
倒れた椅子を戻し座り直して
先ほどのスリープ画面に目を向けると
先ほど自分の目に映った光景と
今の光景に違和感を感じた。
「ん?
何かが・・・」
と、その瞬間、
戦慄とともに
私の全身が鳥肌で覆われ
指の先まで硬直した。
パソコン画面ではない。
・・・その・・・上だ。
パソコンの上に・・・
と言うよりモニターの裏から
恐らく顔の上半分が微動だにせず
こちらを凝視しているのが
視界の中に入り込んだ。
というより、
強制的に認識させられた。
パソコンを挟んで
ソレと対峙している
恐怖を帯びた緊張感。
手を伸ばそうものなら
確実に触れる距離に互いがいる。
ここにいてはまずい・・・
直感がそう告げた。
一瞬にして
無条件に
背筋から全身を凍らせた『ソレ』に
今更ながら
気付いてる事を悟られぬよう、
決して目を合わさぬように
普通に立ち上がると
気力をふりしぼって
ごく自然な行動を装い
出口へと向かった。
自分の席から部屋の出口まで
10秒もかからない。
体中に
恐怖というプレッシャーがのしかかり
その出口までの距離が
異様に遠く感じた。
私に向けられた
存在という気配がこびりつく。
振り返るという選択肢など
微塵もなかった。
振り向けば、
恐らく『ソレ』は
私に息がかかるほどの
目と鼻の先にいたからだ。
全身に走る恐怖で、
背筋を引き裂かれる程の邪念を感じたが
走る事は出来なかった。
走れば、気付いていたことがバレる。
そうなれば、
必ず、
何かしらの接触をされるという
確信があった。
部屋を出てなお、
確実にソレは
私に触れられる距離にいるのを感じる。
全身の力が
強制的に抜かれる感覚に抗いながら
電気を付けゆっくり歩いた。
この時点では、
既にゆっくりとしか歩けないという
表現が合っている。
いつも通る通路が
迷宮のようにうすら嘲笑っている。
「長い・・・
こんなに長かったか・・・」
不信感と不安に
思考が理性を失いかけるが
平静を装うために
背伸びとあくびをしながら歩く。
あくまで、
『何にも気付いてない』
ということを強調するために。
階段の電気を付け、
不自然な足取りで階段を下りるが、
動揺の為か
クラクラして
段差を踏み外しそうになる。
目も動揺を隠しきれていないのが
自分でもわかる。
やっとの思いで辿り着いた
1階出入口の自動ドア。
マットの上で
ドアが開くのを待つ。
いつもなら1秒もかからず
センサーが反応して開くドアが
微動だにしない。
「えっ?」
何度か足踏みをしても
開かない自動ドアにパニックになり
今の今まで、
やっとの思いで維持できていた
上辺だけの平常心が
とうとう崩れ去った。
「うわぁ~~~」
あわてて自動ドアに手をかける。
時間を稼ぐかのように
重くゆっくりと開く自動ドア。
次の瞬間、
私は完全に凍った。
自動ドアの
格子状になった窓のひとつに映る
自分の右肩に
『ソレ』はいた。
完全に目が合った。
断末魔を容易に想像させる
その表情に絶句した。
聞こえもしない声が
私の中で断末魔として拡張される。
「だ・・・ず・・・」
あきらかに私に向けられた思念。
シタシタとその恐怖がずりよってくる。
「うわぁ~~~~~」
全身の毛が逆立ち、
がむしゃらに自動ドアをこじあけ
外に飛び出した。
生気のない苦悶に満ちた『ソレ』が
「だ・・・・・で・・・・」
とまた何か言ったような気がしたが
気に留められるはずもなく
恐怖をひきずり無我夢中で迷走した。
次第に体力の限界に近づく中、
恐怖という原動力だけで走っていたが、
とうとう立ち止まってしまった。
息も切れ切れで、
もう走れないと
道端に腰を下ろそうとしたその時、
1台の車が私に横付けした。
パトカーだ。
こんな時間に
息絶え絶えにふらふら走っていたら
間違いなく不審者だ。
自分でも用意に理解できたが、
なにより、
安堵に襲われ私はそのまま
その場にへたり込んだ。
「よか・・・った・・・」
案の定、助手席側から若い警官が降りて来て
職務質問の社交辞令で切り出した。
「大丈夫ですか?
どうかされましたか?」
「こん・・・ばんわ・・・
ちょっ・・・ちょっと・・・
まって・・・
ください・・・」
警官のなかでは、
私は明らかな不審者だったろうが、
私にどうこうできる
気力も体力もないことがわかったのか
時間をくれた。
「乗って落ち着きましょうか」
落ち着いたのを見計らって
その警官が優しく肩を叩いた。
パトカーが無償の安全地帯に思え、
だいぶ気持ちが落ち着いた。
やっとのことで息を整え、
その警官らに
自分の身に起こった
信じられない一部始終を話した。
私の話しっぷりの勢いと
その俄かには信じがたい内容に
警官2人とも口を挟まずに
最期まで耳を傾けてくれた。
一通り説明が終わると
「すいません
身元確認出来る物をお持ちですか?」
と普通の答えが
というより普通に職務質問が始まった。
「えっ?」
自分でも突飛な話しだというのは
重々承知のうえで話していたが
あまりにも淡々と
職務をこなそうとする警官らに
少しの失望感を感じたまま
免許証を提示した。
普通に免許証を確認すると
「すいません
ちょっとアルコール検査
いいですか?」
「えっ?
呑んでないですよ
仕事してたんですから
臭いもしないでしょ?」
「えぇ
ただ、お話しの内容が内容だけに、
信じないわけではないのですが・・・
お手数ですがご協力願えませんか?」
こんなところで、
問答の末、
厄介な問題になってもと思い
しぶしぶ応じた。
当然、陰性という結果に、
改めてさっきの話しを
真剣に聞いてくれるのでは
と思っていると、
次はクスリを疑われた。
少々の憤慨と、
しょうがないという思いとが
入り交じったが
先ほど同様、
素直に従った。
勿論、
所持品の確認で
不審物が出るはずもなく、
「だから、何も無いですって
信じてないんですか?」
「すいませんね
信じる信じない以前に
一応決まりなんで」
「じゃ~
狂言や妄想だとでも
おっしゃるんですか?
私の気のせいだと」
と少々、声を荒げてしまった。
「ま~落ち着いてください
全てを否定してる訳では
ありませんので」
堂々巡りの問答を繰り返しながら
とりあえず私の会社に戻ろう
という話しになった。
パトカーに乗り5分程走ると、
2階に煌煌と明かりが付き、
ドアが開けっ放しの会社が見えて来た。
「ここですか?」
「はい
そうです」
「本当にこんな時間まで
お仕事されてたんですね~」
「え?
信じてなかったんですか?」
「ま~
あの状況でしたから・・・」
「はぁ・・・
そうですね・・・」
「では、気をつけてくださいね」
普通ならここでほっとするだろうが、
あんなことがあった後だ、逆に焦った。
「あっちょっと
すいません
私の話し聞きましたよね?
あの話しを聞いて
このまま放置ですか?」
「放置じゃないですよ
ちゃんと会社まで
送り届けさせていただきましたよ
それにもう大丈夫そうなので」
「で、このまま一人で
あの幽霊屋敷へ帰れと?」
「はははっ
気のせいですよ
お疲れなんですよ、きっと」
「いやいやいやいや
百歩譲って
気のせいだったとしましょう
それでも、
私は絶対に一人で
あそこには戻りませんよ
これも何かの縁です
一緒に来てくださいよ」
「しかし・・・」
「おまわりさんは
市民を守るのが仕事でしょ?」
「それは、そうですが・・・」
「じゃ~
困ってる市民を
ほっといたりはしないですよね?」
「おいっ
行ってこい」
と運転席の警官が
助手席の警官に促した。
「わかりました
じゃ~行きましょうか」
その言葉に全身全霊でほっとした私は、
それでも警戒しながら会社へと向かった。
開きっぱなしの自動ドアに
一瞬違和感を感じたが
夜9時を過ぎると節電のために
電源を切っていることを思い出した。
「そうか・・・だった・・・」
自動ドアが自動で開かなかった原因は
自己解決できたが
それ以外は何一つ解決できていない。
いくら警官が一緒と言えど
恐怖感は拭えずにいた。
警官は私の3歩ほど後を付いて来た。
「ここは何の会社なんですか?」
「広告代理店です」
「遅くまでやられるんですね~
そういえば
パトロール中に
何度か夜中に電気が付いてるのを
見た事がありましたね~
広告代理店だったんですね~
なるほど~」
こんなどうでもいい日常会話すら
凄くありがたかった。
「どの仕事も、
大変なんでしょうけどね・・・
私から見たら
おまわりさんもかなり大変ですよ
こんなことまでしないと
いけないわけですから」
「いえ
逆にあなたに先ほど叱咤されて
思うとこがありましたから
心機一転という感じでした」
「すいません
先ほどは生意気な事・・・」
「いえいえ、正論ですよ
でも、さっきのお話し本当ですか?
私も結構信じる方なんですが、
ただ上司もいましたし
仕事柄うかつなことは言えなくて」
「そうだったんですか・・・
生まれて初めてでしたよ
あんな怖い思いしたの・・・
あっ、この部屋です」
さっきとは打って変わって
いつもの社内の広さと雰囲気に
戻っていた。
「さっきは、
すごく広く重い感じがしたのに・・・」
「ま~
おっしゃるような
体験されたなら
そう感じたでしょうね・・・」
「えぇ・・・」
「これは、あなたのですか?」
とその警官が
床に落ちていたファイルを拾い上げた。
「あ~日報です
それを取ろうとして手を伸ばしたら
いきなり気配を感じたんで
落としちゃったんですよ・・・」
「聞いた上で現場にくると
臨場感が増しますね・・・
私もちょっと寒気がしてきました
具体的にどこだったんですか?」
「ここです
この自分の席に座ってたら・・・
あっちょっと
座ってみてくださいよ
実演しますから」
「怖いですよ」
「まぁまぁ
ここに座って横の棚を見ててください」
「は・・・はぁ」
とその警官を
半ば強制的に自分の席に座らせた。
私はパソコンモニターの裏に回って
状況を再現した。
目から上だけを覗かせて
警官をガン見したままの状態で
「どうぞ
いいですよっ」
と警官を振り向かせると
「うわぁ~~~~」
と警官が
予想以上のリアクションをしてくれた。
「でしょ~
怖いでしょ?
これ一人で体験しちゃったんですよ~
わかってくれました?」
「こ・・・これはヤバいですね
自分、
一人の時にこんなことんなったら
失神するか発砲してますよ」
「ははっ・・・
ってか全然笑えないですけどね・・・
もう一人で残業なんて出来ませんよ」
「自分も無理ですね・・・」
怖いもの見たさで
本当に怖い物を見るとそうなるな~
と思う警官の落胆ぶりを見ると、
改めて、さっきの恐怖が蘇って来て
寒気がした。
「すぐに支度しますから
先に帰らないでくださいよっ」
「えぇ大丈夫ですよ
ところで帰りはお車ですか?」
「えぇ
そうなんですが、
今日は一人で
車に乗る気分じゃないですね~」
「でしょうね・・・
ちょっと待って下さい」
そういうと少し距離をとって
その警官が無線で何かを話した後
「今日はご自宅までお送りします」
と神様のような言葉をかけてくれた。
「いいんですか?」
「えぇ
でもパトカーですよ」
「全然構いません
自分の車で
いきなり二人になるよりは
ずっとましですから」
「ははっ
それ、怖いですね」
一通り片付け、消灯、
戸締りをしてパトカーに乗り込んだ。
「遅くまで頑張られますね・・・」
と運転席の警官が話しかけてきた。
「いやいや
ボクら一般市民からしたら
おまわりさんたちは
年中無休なイメージがありますよ」
「ははっ・・・
企業体で言えば
そんな感じですからね・・・」
そんな日常会話をかわしつつ
見慣れているはずの帰り道、
普段運転席から見る景色とは違う景色に
若干の違和感を感じた。
自宅のアパート前に着いて
パトカーを降りた。
改めて考えると
パトカーから降りるという
ちょっとした優越感と
罪悪感か入り乱れた。
「お世話かけました
ありがとうございました」
と告げると、さっきの警官が
「絶対、お祓い行ってくださいね」
と耳打ちしてきた。
「ですよね~そうします
わざわざありがとうございます」
「では
おやすみなさい」
「おやすみなさい
気をつけて」
と私のアパートを後にする
パトカーを見送った。
なぜ、あんな世界を垣間見たのか・・・
実は本当に疲れていて
気のせいだったのだろうか。
それとも私の心の問題なのか、
気持ちの問題なのか。
もしかしたら
『ソレ』は常にそこにいて
たまたま波長が合って
『見えた』だけなのかもしれない。
しかし、あの出来事は、
私の視界の一部にいた『ソレ』が
半ば強制的に
私に視認させたとしか思えてならない。
ただ、もうひとつ
どうしてもひっかかることがあった。
あの若い警官が最後に言った
『絶対』という言葉。
『一応』ではなく『絶対』。
話の流れ上、
さほど気にすることもない言葉だが、
何気に聞き流せなかったまま、
頭から離れなかった。
私は部屋の電気はおろか
テレビも消せないまま
ただ、ぼ~っとしていた。
どれくらいの時間が経ったのか
微かな話し声が聞こえた気がして
ふと視線を上げると
テレビのニュースキャスターが
ニュースを読み上げる声だった。
テレビの時刻は7時過ぎ・・・
いつの間にか寝落ちしていたようだ。
警官の言葉もそうだが、
あおのおぞましいモノが発していた言葉。
その両方が耳から離れなかった。
今思えば、
何かを私に伝えたかったのだろうか・・・
あれから4年。
私はあのあと直ぐに退職願を出し
あっさりと受理された後
あの街を離れた。
会社の同期や先輩と、
まだそこまで
親しくしてなかったこともあり
割とあっさりと決断できた。
責任感云々より、
身の安全を最優先した。
流石に、
あの会社で続けていく気にはなれなかった。
正直に退社理由を話そうとも考えたが、
話がややこしくなりそうで
親の体調不良で帰郷することを理由に
退社した。
引っ越して3ヶ月後、
この街の広告代理店に入社できた。
幸い、円満退社ということと、
一応経験者ということで即採用となった。
その後、
程なくしてその会社で知りあった女性と
5年の恋愛を経て結婚をした。
その翌年、娘まで授かって
ごく普通に幸せな日常を送っていた。
あることを除けば。
世に言う普通の人々と何ら変わりはない。
と言うのも、
私はあの日を境に『彼ら』が
見えるようになった。
こちらに迷い込んだのであろう
異世界の住人が・・・
昼夜を問わず場所を問わず、
『居る』ところならどこでもいつでも
『ソレ」は見えた。
目さえ合わせなければ、
『ソレ」が寄ってくることはないと
何回かの経験でわかった。
初めてのあの時、
私は『ソレ」と目が合ってしまったことで
『ソレ」が私を認識して
寄って来たのだろうと思うようになった。
今でも慣れる事はない。
やはり心の底から怖いし、
心療内科でカウンセリングも受けている。
もちろんお祓いにも行った。
が、見えなくなる事は無かった。
しかし、ルールさえ守れば
彼らに悩まされる事もなく
今の幸せは維持できる。
今の会社に勤めて10年近く経ち
今ではこの会社の課長として
忙しい日常を送っている。
今回、大手との取引が決まり
部下を引き連れ打ち上げの飲みに出た。
2軒目を出て、
気の合う同僚と二人、
3軒目に向かう途中、
自宅からの着信音の携帯が鳴った。
「もしもし」
「パパ~
のみちゅぎちゃいけまちぇんよっ
マヤはもうねゆね
おやちゅみなちゃい」
「マヤか~
わかったわかった
もうちょっとで帰るから
ゆっくりママと寝てなさい」
「はぁ~いパパ~
ママとかわゆねっ」
「いいよ別に~」
「な~にがいいのかしら~
ひっどぉ~いっ」
「変わるのはやっ・・・
ごめんごめん冗談だよっ」
「どぉ~だかぁ~
程々にして
気をつけて帰って来てよ~」
「あぁ~
わかったぁ~
ありがと~」
「じゃ~
楽しんで~
お先にね~
おやすみっ」
「あぁ
おやすみ~」
マヤの言葉も
明らかに
妻からのメッセージだとわかるが
それでも
愛娘からのおやすみのラブコールは
嬉しいもんだ。
若干、後ろ髪をひかれつつも
電話を切った。
「マヤちゃんと奥さんですか?」
「あっ・・・あぁ・・・」
「いいですねぇ~家族って・・・」
「あぁ~いいもんだぞ
お前も早く見つけろよ~」
「探してはいるんですけどね~
なかなか・・・」
「ま~
こればっかりは
縁とタイミングみたいなもんだからな~」
「やっぱそんなもんすかね~」
「そんなもんさ~」
「今日、もう上がりますか?」
「な~に気を遣ってるんだよ
いいよいいよ行こう行こう
嫁さんからもOKが出てるし
もう1軒だけ行こうや~」
「いいんすか~」
「あぁ~もちろん
さ~行こう行こう」
「じゃ~今日の〆は
ボクのとっておきのとこ
連れて行きますよ」
「おぉ~まぢかっ
行こ行こっ」
そうして3軒目のスナックで
想像以上に盛り上がったあと
それぞれの家路についた。
終電は終わっていたため、
タクシーを捕まえた。
元々、アルコールとは相性が良く、
悪酔いや泥酔したことは一度も無い。
もちろん、自制してるのもあるが、
楽しく嗜むことができる。
今回も、気持ちよく酔えた。
勿論、千鳥足にもなってない。
酔い覚ましに買い物をして帰ろうと
自宅近くのコンビニで下ろしてもらった。
愛するマイホームまで歩いて5分という、
酔いを醒ますにはちょっと短いが
体力的にはちょうど良い距離だ。
「いらっしゃいませ~」
若い男性の店員の声に軽く会釈をし
奥の飲料ケースへと向かった。
こんな時間にも関わらず
雑誌を見ている青年と、
お菓子を選んでる若いカップルの
2組の先客がいた。
いつものお茶を手に取り、
娘と妻の明日のデザートにと、
ちょっとしたケーキを買うことにした。
レジへ向かうと
先ほどのカップルが
支払いを済ませたところだった。
そんなに?と言うほど買い込んだ
お菓子が入っているであろう
ビニール袋を彼氏が右手に持ち、
左手は彼女と繋いで
楽しげに店を出て行った。
「どうぞっ」
店員の声にはっとして
商品をレジのカウンターに置いた。
手際よくレジを打つ青年に感心した。
「合計872円になります」
千円札で支払い
レシートはカウンターの上に置いてあった
レシート入れに入れ、
おつりはその横の募金箱へとすべらせた。
「ありがとうございます」
明らかに、買い物に対してではなく、
募金に対しての言葉に
気持ちよく店を後にした。
午前3時過ぎ、
人影も車通りも全くなく、
しんっと静まり返った歩道を
お茶を飲みながらゆっくり歩いた。
先ほどのカップルは
どっちに帰っていったのだろう。
そんなことを考えながら
ゆっくりと家路に着いた。
心地よい風が吹く中、
ふと立ち止まって、
ぼんやりと月を見上げた。
今夜は空気が澄んでいるせいか
星がくっきりと見える。
いつもマヤと戯れる
自宅のまん前の
公園にさしかかったところで
いきなり背後から
何の前触れもなく衝撃を受けた。
「あいてっ・・・」
気配も何も感じなかった分、
何が起きたのかわからなかった。
ゆっくり振り向くと、
先ほどコンビニにいた
野球帽を目深にかぶった青年が
薄暗い中、
うっすらと笑みを浮かべて
目と鼻の先に居た。
その青年は、
虚ろな状態で
よたよたと私を押しのけて
先を歩いた。
「おいっ
ぶつかっ・・・」
おかしい・・・
息が・・・出来ない・・・
次第に背中が熱くなり、
さっき受けた衝撃が
痛みという感覚に置き換わった。
左の背中を中心に
ねじ込まれるような衝撃に
体中が強張りよじれた。
景色が斜めに崩れ落ちる。
不意の無重力感に陥った瞬間
目の前にアスファルトが現れ
私は防御する間もなく
顔から道路に叩き付けられた。
顔面を襲う激痛と
背中から襲い来る激痛の中
呼吸することも出来ず、
躯も意識さえも
握りつぶされ引きちぎられるような
絶望のなか
自宅へと這って進んだ。
「マヤ・・・
み・・さ・・き・・・」
やがてキチキチと
苦しみと絶望に蝕まれながら
深く暗い闇に堕ちていった・・・
ふと気がつくと
うっすらと明るんだ自宅前の
公園の芝生の上に
独り私は立っていた。
上から呼ばれたような気がして
空を仰ぐと
一筋の光が私に向け降り注いできた。
温かく優しいその光に包まれ
意識が溶けそうななか、
このまま包まれていたいという感覚に
身を任せようとした次の瞬間、
公園の外の路上に
なにやら慌てた様子の
3人のひとだかりがあるのに気付いた。
私は、その光に後ろ髪を引かれつつも
そのひとだかりが気になって
その光を振り切った。
「これはたぶんだめだ・・・」
「一応、救急車と警察をっ」
一人は警察に、
もう一人は救急車を呼んでいる。
もうひとりは路肩で嘔吐していた。
そのひとだかりに近づくにつれ
全身に身の毛もよだつ嫌な予感が走った。
一瞬、躊躇したが、
そのひとだかりの元凶を私は覗き込んだ。
次の瞬間、
私は何が起きているのか理解できなかった。
そこには血だらけの私が横たわっていた。
爪は剥がれ、目は血走っており、
苦悶の表情で歯を剥き出しにしている
悪鬼のような
おぞましい形相の自分がそこにいた。
「なっ・・・
なんだ・・・
これ・・・」
それを見た瞬間、
今まで見ていた景色が暗転した。
そこは、先ほどまで居た場所だが
周りのもの全てが赤茶けている。
焦げ臭いような臭いと
暗雲が立ち込めた
重苦しい光景に変わっていた。
すると先程の光の柱が
再び私に降り注ぎ、
今まで感じていた言いようの無い
不快感が一瞬で消え去った。
改めて自分の両手を見てみたが
今までの自分と変わりない
『存在』がそこにはあった。
しかし、目の前には
紛れもない自分が横たわっている。
しかも、
彼らの言うように確実に絶命している。
私は再び、その温かい光を振りほどいた。
「死んでるのは・・・
私か?」
思い出そうとするが、
コンビニを出た後の記憶がない。
いくら思い出そうにも
全く記憶をさかのぼれない。
「なにが・・・」
先に着いたのはパトカーだった。
続いてすぐに救急車が現れた。
惨状にひるむ事なく救急隊員は
救命を行おうとしたが、
いくつかの確認をすると
搬送に切り替えた。
恐らく、手遅れだという判断だろう。
警官は発見者3人に事情聴取をしている。
まだ、血だまりが剥がれ落ちた爪と共に
生々しく残っている。
改めて見ても、
素人目にも助からないであろう事は
想像できる程の出血痕だ。
意識が遠のく中、
気付くと私は
泣き崩れる妻と娘がいる
霊安室の片隅に立って居た。
ここにいるんだと
いくら叫んでも抱き寄せても
声も手も虚しく空を切る。
絶対なる死の宣言を
受入れざるを得ないことに
深い絶望を感じた。
リアルな現実に存在してしまっている
受け入れがたい不条理。
頭を整理する時間もないまま
霊安室に一人の男が入って来た。
風体がいかにも
刑事のオーラをかもし出している。
その刑事らしき男は、
娘に聞こえないよう妻に耳打ちした。
「奥さん、
こんな時になんですが、
犯人が捕まりました」
やはり、刑事のようだ。
しかし、妻はその事実より
重大な現実に崩壊寸前だった。
娘の存在がそれをさせまいと
必至で自分と闘っているのがわかった。
その二人の姿に寄り添えないことへの
無力感と絶望感で
自我を押しつぶされそうななか
「犯人・・・」
という言葉を聞いた瞬間、
想像を絶する痛みと吐き気を伴い、
『記憶』に仕組まれた
僅かな憎悪が生まれた。
「犯人・・・
そうか・・・
俺はコンビにの帰りに・・・
殺されたのか・・・」
そこでまた
強制的に意識を引き裂かれる感覚に堕ち
気がつくと
テレビでよく見るような
取調室らしきところの隅に
私は立っていた。
この部屋には3人いる。
記録している人間が私とは逆の片隅に、
あとの二人は向き合って座っている。
一人は刑事らしき風体の男で
タバコをふかしながら
もう一人の男を凝視している。
もう一人は・・・
とその男に目を向けた瞬間
見た事のある薄ら笑いに
強烈な耳鳴りと頭痛が襲った。
事切れる瞬間までの
生々しくもおぞましい記憶が
鮮明に蘇った。
「ア《゛》~~~~~~~~~」
痛みと苦しみ、
そして恐怖と悲しみが慟哭となり
さきほど芽生えた憎悪に拍車をかけた。
「ユルサナイ・・・」
私の、妻の、娘の幸せを、
これからの人生を、
全てを奪ったこいつは、
こいつだけは許せなかった。
薄ら笑いを浮かべて反省すらしてない
このいかれた男だけは・・・
「イキテイルカチハナイ・・・
コロシテヤル・・・」
そう思った瞬間、
さらに景色が暗転し
今度は吐き気がするほどの
血生臭さに包まれた。
頭に直接響く
耳を覆いたくなるほどの
甲高い金きり音が鳴り響き
黒い雨が降り注ぎ
赤黒い空が広がっていた。
そんな悪夢のような光景の中、
魂ごと躯を引き裂かれるかのような
激痛が一瞬だけ全身に走った。
その痛みは一瞬で消え
再び憎悪の思念が沸き起こり
復讐という明確な目的に
なんの躊躇も理性も働かなかった。
とは言え、姿を見せる事も、触る事も、
誰かに何かを伝える事もできない私に
この時はまだ、成す術は無かった。
ただ、傍観するしか・・・
そんな中、
あの男は裁判で精神鑑定の結果
責任能力無しとのことで
罰せられることすらなく
精神病院送りとなることが決定した。
冷静さを取り戻しつつあった妻は、
あまりの非情な判決に
怒りをあらわにしていたが
弁護士に静止されるも、
取り乱していた。
あんなに温厚だった妻が、
面影を無くす程の変貌ぶりだった。
あの男は、娘から父親の私のみならず、
母親さえも奪ってしまうのかという思いに
ひたすら憎悪の念が募った。
「カナラズ フクシュウ シテヤル」
再審虚しく判決が覆る事はなかった。
私は、暫く妻と娘に寄り添う事にした。
どのみち、何しようも無かったし、
恐らくは、このことが気がかりで
成仏というものが出来ないで
いるのだろうという思いもあった。
妻は娘に心配をかけぬ様、
努めて明るく振る舞っていたが
時折、隠れて泣いていた。
貯蓄も裁判の費用やらで
底をつきかけているふうだった。
私も何もしてやれないはがゆさに比例して
あの男への憎悪が膨らむ一方だった。
ニュースでも
取り上げられる事がなくなってから
周りの関心も薄れ、
3ヶ月程経った頃、
妻は失意のなか、母親に説得され、
娘の事も考えた上で
マイホームを売却して
娘を連れ実家へと帰ることを決意した。
妻と娘のことを考えると
これが最善策だと私も思った。
ただ、私に宿る憎悪は
日に日に増すばかりだった。
娘や妻に何も出来ない以上、
私の矛先は
あの男へと集中できるようになった。
精神病棟で安らかな毎日を送るその男に
私は固く復讐を誓った。
毎日毎日、来る日も来る日も
私はその男に付きまとい監視した。
ある日、
その男が監視の中
シャワーを浴びているとき
急に振り返って私の方を見た。
あまりに急な出来事に私の方が驚いた。
絶対に見えてはいないはず・・・
感じるのか?
その男は私の方を凝視している。
今までの薄ら笑いは消え失せていた。
「カナラズ コロス」
そう言った途端、
男の表情が強張った。
明らかに動揺している。
聞こえたのか?
私は試してみる事にした。
「イッショウ ツキマトッテ
ノロイコロシテ ヤル」
そう言った瞬間
「ぎいやぁ~~~~~」
とその男が暴れ怯え出した。
たぶん実際に聞こえたわけではなく
感覚的にということだろう。
監視員も慣れているせいか
慌てる事なく対処し、
部屋へと連れ帰った。
明らかに
何かしらの存在には気付いたはずだ。
私は、復讐という目標を改めて見いだした。
これでやっと復讐が出来る。
本当の復讐が・・・
遅れてその男の部屋に入った途端、
今度は私に
痛みと苦しみと恐怖が襲いかかった。
それはいつものように
慟哭となり苦痛に拍車をかけた。
この発作とも言える症状は
数を重ねるごとに
その度合いが増して来る。
このままいけば、
あの男に復讐できないまま
私が先に壊れてしまう。
そんな恐怖と憎悪に挟まれながら
時を待つしか無かった。
私はことあるごとに、
その男に復讐を続けた。
そんなある日、
私は自分から
血が滴っている事に気付いた。
「チ・・・?」
どことかではない。
私自身から血が滴っている。
勿論、着ている服にも血痕が付いている。
心無しか、呼吸も苦しい。
体中に痛みとだるさもある。
元々死んでいるのに
こんな感覚がある不可解さに
逆に恐怖を憶えた。
呼吸の苦しさに加え
声も出しずらくなってきた。
「シンデ ナオ
コンナニ クルシム ノカ・・・」
だみ声の掠れ声が自分の中に響いた。
いかにも恐ろしい声に
不安と共に満足感も少々あった。
怨霊やら悪霊の類の自分の存在に
目的には必要な進化だと考えた。
しかし、
そこからが進化というか進行が早まった。
視界が狭まりもやがかってきた。
そのままだんだんと
目が良く見えなくなって来たうえに
体中の激痛で
まっすぐ立てない程になっていた。
多分、今の自分を見たら
満足しながらもどん引きするであろう
出で立ちを想像出来た。
考え事も次第に出来なくなって来ていた。
あるのは復讐という
本能のような衝動だけになりつつあった。
その憎むべき男に復讐を重ねつつも
自身も発狂しそうな苦痛が
ゆっくりと浸透してくる。
徐々に広く深く確実に
自我を食いつぶして行く狂気。
自分で自分を
真綿をひきちぎるように裂きちぎる。
押さえつけられない狂気が
ゆっくりゆっくり全身を支配して行く。
「グゾ(くそ)~~~~
グゾ(くそ)~~~~~~~~~
バダダ(まだだ)・・・
バダダンダ(まだなんだ)・・・」
この頃には、
私自身が『恐怖』そのものだと
認識できるまでになっていた。
復讐の質も頻度も
私の症状悪化とともに激しさを増していた。
既に、
自分で自分をコントロール出来ない程に。
ある晩、
記憶も無いままに
復讐が遂げられている現場に
這いつくばる自分に気付いた。
目の前には恐ろしい形相で絶命している
ヤツがいた。
「オバッダ(終わった)・・・」
監視員が騒動しているのが
夢物語のように繰り広げられていた。
次の瞬間、
今までに無い狂気が自分を貫いた。
自分を切り裂く自分の狂気。
諸刃の剣のように
自分で自分を駆逐していく。
「ダンデ
(なんで)
ダンデゴンダニ
グルジイオボイオズルノダ~~~~
(なんでこんなに
苦しい思いをするのだ)
ア《゛》~~~~~~~~~
ギャ~~~~~~~~~~~~~
ダズゲデ・・・
ダ・・・ズ・・・ゲ・・・デ・・・・・」
襲い来る狂気と発狂に誘われながら
自我を維持できなくなり
意識が遠くなる中
自分の選んだ道を
走馬灯のように垣間見た。
初めて立った公園で
空に背を向けたのが最初の選択だった。
失意が絶望に変わった瞬間。
復讐が狂気に変わった瞬間。
永遠という牢獄が
発狂という狂地へ変わった瞬間。
意識を閉じることのできない
本当に終わる事の無い悪夢へ向けた
いくつもの選択肢を
私はかいくぐってここまで堕ちた。
自分がいつしか
『あっち側の住人』に
なってしまっていた・・・
朦朧としたまま
浮遊感に身を任せていた。
死んでから初めて感じる安寧に
流れる事の無い涙が溢れた。
「これで・・・死ねるのか・・・」
そんな穏やかな意識体のまま
やっと終わりが近づいてきたと
安堵にも似た感覚に
意識を閉ざそうとした瞬間
「グギィギヤァア~~~~~~」
狂気と苦痛を帯びたリアルが
ワタシという存在を許さぬかのように
再び襲い掛かってきた。
実体が無いにも拘らず
想像できる全ての
恐怖と苦痛と不快感が
同時に何度も何度も輪廻する。
意識を失わないぎりぎりの状態を
維持したまま続けられる拷問のように。
あらゆる懇願も怒りも抵抗も
無意味な戯れに終わる。
ワタシは・・・苦しみ抜きながら
再び・・・絶命した。
ワタシは今も彷徨っている。
定期的に襲い来る狂気に
人間としての記憶はかき消され
ただただ逃げる『ソレ』として
本能のみで救済を求めて
彷徨っている。
復讐という
欲望を満たすことと引き換えに
到達してしまった呪縛の輪廻。
『狭間』から
決して抜け出す事の出来ない
穢された魂の懇願が
今日も救済を求めて・・・
『ダ・・・ズ・・・ゲ・・・デ・・・』
『ダ・・・ズ・・・』
『ダ・・・デ・・・』
呪壊 アルセーヌ・エリシオン @I-Elysion
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