第32話 蔓延

 ここにある霊力研鑽会は、どうやら支部のようだ。この街の名前をとって鎌柄かまつか支部とある


「イナスケ、ここで良いんだよな」

「へい、ダンナ、ここの主幹に聞きました」

 会社かよ、主幹って管理職だよな。


「主幹は、取締役にあたると思うよ、イオリ」

 なんで、お前が詳しいんだ、ミツキっ!


「よし、じゃあ乗り込むか、ミツキ例の奴を」

 ミツキは、俺の目を見て頷いた。


「たのもーっ、たのもーーっ」

 ミツキは、今日もキレッキレだ


 実は、この支部の建物は、道場に近い作りになっている。であれは俺たちは、道場破りといったところだ。


「坂田だっ、主幹は、おられるかな」


「坂田殿、どうなさった」

 門下生らしき男が中から出てきた。


「客人を連れてきたので取り次ぎ願う」

「では、通行料をお支払い下さい」

「えっ、お金取るの!」


「イオリ殿、ここでは全て金で動いているんだよ」

 イナスケが、文句を言おうとしている俺に言った。


 俺は、3人分の料金を出した。


「いえ、おひとり分で結構ですよ」

「ああ、1組いくらみたいな事かな」

「いえ、美しい女性は、無料となります」

 ドヤ顔の美しい女性がふたり、後ろに立っていた。


「イオリ様、もしかしたら霊力研鑽会って、そんなに悪い組織ではないのかも……」

「あたしもそれは、強く感じたよ、なんかわかってるって感じだよ」


 はいはい、やっぱりね。言うと思ってた。


「いや、聞いた話だとここに来た女の人は、居心地がいいのか、結構帰ってこないようだね」

 イナスケが、さらりと重要な事を言った。


 怪しいっ!てか、誘拐だよなそれ


「イオリ様、私はどうもここは、うさん臭いと思っているんですが……」

「あたしは、気づいてたよ、ここの企みにさ」

 そのセリフは、さっきのお前らに言ってくれ!


 通行料というかむしろ入場料を払った俺たちは、お客様と呼ばれている。


 奥の部屋に向かいながら俺は、妖刀の件がハッタリであればいいのだが、などと考えていた。


 部屋に案内されるとひとりの人物が座って待っていた。


「主幹の氷堂と申します。何かご用があるそうで」

「イオリと申します。本日は、急な訪問誠に失礼致しました。霊力研鑽会があると聞きまして、いったいこちらでは、どう言った事をされているのか霊界師を目指す身としては大変気になりまして」

 ハッタリです、ハッタリだけど怪訝そうに俺を見るのやめてくれ、ミツキ!


「ほう、霊界師を、後ろのお二方もそうですか」


 ミツキは、持っていたお札を取り出した。

 おいっ、それは、隠し芸だろう!


 零度が、氷堂の前に両手を差し出した。

 そのまま両方の手のひらで空間を包み込むようにするとそこに小さな氷の塊が現れた。


「はあっ、はあっ、これが限界です」

 零度は、かなりのハッタリを効かせた。

 その気になればこの屋敷ごと簡単に消滅できるはずだ。


「だ、大丈夫っ、零度っ」

 ミツキっ、演技だよな、それ!


「いや、なかなかのものです。私どもは、霊力を高める研究をしております。是非、ご入会頂ければ皆様の霊力をさらに高める事が出来るでしょう」


「あのっ、妖刀なんかの研究もされてますか」


「ええ、ご興味があればお見せしますが……」


 氷堂は、俺たちを修行場に案内すると言って近くの門下生に指示を出していた。

 指示を受けた門下生が、準備をする為に部屋を出て行き、零度とミツキは、氷堂に簡単な自己紹介をした。


「それでは、お二人は今はお身内の方がいらっしゃらないと……、そうですか」

 氷堂は、気の毒そうに言ったが少し口元が曲がった事に俺は気付いた。


 氷堂に連れられて修行場に入ると後ろから戸を閉められた音がした。


 中には武器を持った奴らが大勢待ち構えていたのだ。


「イオリ殿、誠に残念ですが、あなたの入会資格は、無いようです」

 氷堂は、今度は、ニヤついた顔を隠さなかった。


「ふふっ、わかりやすくていいよ」

 俺もニヤリとやり返した。


 さあ、始めようじゃないか‼︎

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