第23話 零度
「クダン、この度の件、ご苦労様でした」
「はい、無事に終わり正直ほっとしております」
クダンが、今回の報告を終えて言った。俺たちは、急いで小村丸先生の屋敷に戻って来たのだった。
「イオリ殿、ミツキ殿ありがとうございました。あなた方の助力が無ければどの様な結果になっていたかと思うとゾッと致します」
ミツキは、少し照れた様子だった。
「小村丸先生、今回なんとかなったのは、ただ運が良かっただけです。奴がハルマが、不完全な状態だったからこその結果でしかありません」
「わかっています。妖刀には、まだまだ、未知の部分が隠されています。しかし、そこに踏み込む為には多大な危険を伴うことになるでしょう、ちょうど私の兄のように」
「ハルマは、誰かの命令で動いていたようです。俺は、帝都に向かう先であった影たちも絡んでいるような気がしてるんです、あいつらはヨシツネのことも知っていたようですから」
「邪魔な存在の排除ですね、ならば私もその輪の中に入っているのでしょう」
小村丸は、水無月師範のことを考えているのだろう
「そして、妖刀に関わる俺たちもね」
ハルマが妖刀に飲み込まれたのは霊力にも関係するのではないかというのが小村丸の仮説であった。妖刀との力関係のバランスの問題だと考えているようだ。
仮に俺と妖刀の力関係が等しいとすれば剣士の意識は残り、劣っているのであれば妖刀の意志のみで行動することになる。
それなら妖刀に勝る者はどうなるのか?
「小村丸オビト、それが私の兄の名前です」小村丸は、言った。
オビト、妖刀に勝りし者の名だった。
小村丸先生は、宮中と妖刀の情報を集めているようだった。手掛かりが掴めたら、あらためて話をすることになった。それまでは、俺たちも骨休めをしようと思う。
俺は、ミツキと町に出掛けたのであった。
「レイドの町をゆっくり見物するのは初めてかもしれないな」
「そうだね、美味しいものも探さないとだね」育ち盛りのミツキが言った。
「たまにはいいかもな、おっ、アレ何だ」
そこには、甘味屋があり、表に『レイド氷、始めました』と貼ってあった。
俺とミツキは、よし、とばかりに中に飛び込んだ。
「レイド氷ふたつ頼むよ」
と店員に声を掛けた。
間も無くそれが運ばれてきた。
いわゆる、カキ氷である。
サラサラに削られた氷は、山のように盛られ緑色の液体が掛けられていた。
そして横に餡子の餅がふたつ添えられていた。
ミツキの目がキラキラと輝いている。
「これ、抹茶だよ、スゴイ美味しい!」
「ああ、当たりだな!」
俺たちは、レイド氷に感激していた。
この時までは…
「ううーーっ、なんかお腹がゴロゴロする」
やらかしていた。3杯は食い過ぎだろう
「イオリにいい所、見せたかったんだよ」
フードファイターか!お前は!
というか、いい所、見せる為だったのかよ!
それなら、戦いの時に見せてくれよ……
そう言えば、この町には昔、氷の霊界師がいたって話だよな、近くに石碑があるとクダンから聞いたことがある。
ちょっと寄ってみるか、俺は何となくそう思い、少し具合の良くなったミツキを連れて向かってみる事にした。
人に尋ねてようやく石碑のある場所に辿り着いた。
「おおっ、スゴイよイオリっ、なんか大きい石像があるよ」
「確かにすごいな、これ女の人みたいだな」
と言って俺は、石像の顔を見た。
「あれっ、これ……」
俺は、驚いて固まった。
なぜなら、それは以前風呂場であった、あの女の顔だったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます