第13話 呉越
帝都に入った俺たちは、なるべく宮中に近い場所まで移動する事にした。
結局、宿は宮下という町で取る事にした。宿に荷物を置いた後、夕飯がてら町を散策した。
「兄さん、あれは何でしょう。」
「あれは、たこ焼きだな。たこをカリッと焼いたやつだよ。」
さっきからルリは、質問ばかりだ。俺は、適当に答えている。
この辺りの繁華街には屋台がたくさん出ており珍しくてしょうがないのだろう。
ミツキは、ヤケに大人しいなと思っているとユリネと何か話をしていた。
時折、ユリネは、驚いた顔をしていた。何を話しているんだろう気になる。
もう少し近づいてみるか。
「兄さん、そのカリッとしたたこ焼きを食べてみたいのですが。」
思わぬ伏兵がいた。
俺は、急いでたこ焼きを買ってルリに渡した。
今度こそ近づいてみよう。
ルリが涙目で俺のそでを掴んでいた。「どうした、ルリ。」
ルリは、赤い顔をして、たこ焼き指指した。なるほど丸ごと1個を口に入れたらしい。
それは熱いよな。
「まだ口の中が、ヒリヒリします。でも、これ美味しいですね。」ルリの嬉しそうな顔を見ていると何だか落ち着く。
話は、後でミツキに聞くとして今はルリに付き合う事にした。
「兄さん、あれは何でしょうか?」
「あれは焼き鳥だ。鳥をカリッと焼いたやつだよ。」と適当だ。
俺は、ルリに焼き鳥を買ってやった。ルリは、美味しそうに食べていた。
ユリネとの話が終わったのかミツキが戻ってきた。ルリの食べている焼き鳥を羨ましそうに見ていたが、意地を張って何も言わない。
「ほれ、お前の分も買ってあるぞ。」と言って渡してやると嬉しそうに受け取った。
それを離れたところから見ているユリネの視線を感じた。
俺は、ユリネの分もあるからねと言って焼き鳥を渡した。
ユリネは、俺に礼を言って素っ気なく受け取ったが少し嬉しそうにも見えた。
屋台で買い食いをした俺たちは結構お腹も膨れて来たので宿に戻る事にした。
明日は、宮中だ。
封印に異常がなければ良いのだが
俺はせつに願った……
翌朝、俺はユリネに起こされた。
「起きろ!」耳元で怒鳴られたのだ。びっくりした俺は、飛び起きた反動でユリネのひたいを頭突きしてしまった。
「ったい。起こしに来てみれば、あなたという人は一体……」
ユリネは、赤くなった額をおさえながらコブシを握り締めている。
「ま、まてまて、今のは、わざとじゃないだろ!」
俺は、慌てて言ったが手遅れだった。
朝食を食べながらミツキが不思議そうに聞いた。
「イオリとユリネの額は、どうして赤くなってるんだろう?」
ルリも首をかしげている。
「それは、ユリネが」「イオリ様が」
俺とユリネは顔を見合わせ言った。
「「朝稽古だ!」」
支度が整った俺たちは、宮中に向けて出発した。程なく到着する予定だ。
「しかし、帝都の有力者に先に話をつけてから行くんじゃなかったのか」俺は、ユリネに言った。
「はい、それは宮中に行き要請を渋られた際の保険です。」
まあ、いざとなれば俺が小村丸先生に頼めばいいか。
「とりあえず俺たちは、水無月師範という人に会う予定だが一緒に入る事にするか。」
「はい、助かります。イオリ様」
ようやく宮中の門の前に着いた俺たちは、その規模に驚いた。
ちょっとした町ぐらいありそうだ。
しかし、どうやら門番がいない。
「あたしに任せて!」ミツキが自信ありげに言った。大丈夫か、ミツキ。
ミツキは、声を張り上げた。
「たのもー‼︎」
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