第10話 再会

「先生、イオリ殿に妖刀の件お伝えしなくてもよろしかったのでしょうか。」

 古くからの門下生であるクダンが言った。

「その事は、封印が解かれていなければ杞憂でしかありません。それが、分からないうちは話すべきでは無いと判断したのです。」

「出過ぎた進言でした……」

「クダン、あなたも彼らの事が気に入ってしまったのですね。」と小村丸はニヤリとして言った。


「あ〜あ、あめですよ雨。イオリ〜っ。」ミツキがあめあめうるさい。

「同じことを何回も言わなくても分かってるよ。」

 先ほどから雨が、パラつき出したようだ。

「次に茶店があったら少し休もうか。」

「しょうがないなぁ。先を急がないといけないのに。」

 ミツキは、すごく嬉しそうに言った。


 いよいよ本降りになってきた頃少し先に茶店が見えた。

「イオリ、あれ団子が見えてきたよ。早く早く。」

 ミツキ、心の声がダダ漏れになってるぞ。お前には、茶店が団子にみえるのな。


 俺たちは、茶店に入るとほっとひと息ついた。店には、他にも数名の客が雨宿りしていた。

 帝都に向かう道中だけあって茶店と言っても結構な広さがあった。

 ミツキは、早速まんじゅうだか団子だかを頼みに行った。


 しばらくしてミツキは、団子とまんじゅうの乗ったお盆を抱えて戻ってきた。

 おいっ!

「別腹だから……。」

 わけわからん、団子とまんじゅうは、同枠だろう!


「それはそうとあっちにいたお客さんですごい綺麗な子がいたんだよ。」お前話題を変えただろ。それとナンパか!


「ミツキ、他のお客さんをジロジロ見て迷惑かけて無いだろうな。」


「あたしも見てたけど他の人もその子のことみてたよ。どっかのお姫様かなぁ。ほら」

 ミツキが指差す方に俺は、やれやれと思いながら振り向いた。


「あれっ、あのお姫様もこっちを見てるよ。」とミツキが驚くと同時にその娘が駆け寄って来てイオリに抱きついた。


 ミツキは、口にくわえていた、まんじゅうを床に落とした。


「ル、ルリお前どうしてここに……」

「逢いたかった。兄さん!」

 ミツキは、まだ固まっていた。


 俺は、ルリを落ち着かせるとミツキに声をかけた。

 ミツキは、はっと我に返って俺とルリを交互に見た。


「妹だ!」俺は、さっきからざわついている他の客にも聞こえるように言った。


 俺は、あらためてルリに聞いた。「お前、どうしてここにいるんだ?」

「はい、私はお父様の使いで帝都に向かう予定なのです。」

「兄さんこそどちらに……この方は?剣術修行は……」

 ルリは、疑わしそうにミツキを見た。


「妻です‼︎」ミツキが言った。


 ルリが気を失いかけるのを俺は、抱きとめイスに座らせた。


「ほんの出来心です。すいませんでした。」俺がルリに事情を説明した後、ミツキはルリに謝罪をしていた。

「そ、そうでしたか、兄がお世話になった方の……私の方こそ取り乱してごめんなさい。」

 ようやく誤解が解けて俺は、ほっとした。

「考えてみれば兄さんの好みとは違うようですし、冗談だとわかりますよね。」ルリは、ニコリと笑った。

「ほんとそうですよ。さっきのは笑っていいところですよ。ロリさん。」ミツキもニコリと返した。反省はしていない様だ。


 二人は、まだ何か言い争っていたが俺は、放置することにした。


 雨は、にわか雨だったようで間も無く止んでしまった。


 ルリには、お供の女性が付いて来ていたが俺の目的地が分かると急に女の二人旅は、危険だと言い出した。


 実は、ルリもお供の女性も相当な剣の腕前である事をもちろん俺は知っているのだか別々に行く理由もないので素直に同行することにした。


 なぜかミツキの機嫌は悪かった。まんじゅうを食べ損なったせいだろうか?


 道中は、何事も無く俺たちは、夕方近くにようやくひとつめの宿場町に辿り着いたのだった。

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