第2話
「寒っ...」
まだ、1月の上旬だ。そりゃ寒いに決まってる。冬休み中、外にほとんど出なかったから、外の空気というのは何処か懐かしくて新鮮だ。
別に冬が嫌いなわけではない。冬のシンとした静かな感じも、朝の冷たい空気もむしろ好きな方だ。ただ、直ぐに風邪を引くのでそれが、嫌。
受験勉強の息抜きにと少し外に出てみたが、思ったよりも寒い訳ではなかった。やっぱり、地球温暖化のせいだろうか。小さい頃の冬はもっと寒かった。
パキパキと霜を踏みながら、その辺を目的もなくただ歩く。
息を吐く度に白くなるのもなんとなく面白くて、受験勉強のことを忘れられた。
田んぼには霜が降っていて、茶色い土が白っぽくなっていた。田んぼに水をやる水路を見てみると水は凍っていなかった。ほんの出来心で少し手を浸けてみると、水は刺すほど冷たくて、指先が真っ赤になった。
ふと顔を上げ辺りを見渡すと、そこらには花も咲いていない。田んぼに、枯れ草、緑色の名前も知らない植物が少し。それと坂から見える家が何軒か。
寒いから誰も外に出ていなくて、稀に車が通るくらい。とても静かで心地よい。
坂を下ると、橋が見える。
川からの高さがほんの3m程度の低い橋だ。そのため水の音はよく聞こえる。
川の近くはやっぱり寒かったけど、水の音はとても綺麗だった。せせらぎと言うのだろうか。よく澄んだ水にサァッと流れる川の水。水の中には川原の小石やらがはっきりと見える。
疲れたときや、夏場はよくここに来る。何となく気分が晴れるから。
ハァーと、息を吐くとまた白くなる。それを見ながら水の音に耳を傾ける。
何にも考えなくていいから頭がスッキリとする。
この時間は無駄なのだろうか。
先生なんかは勉強に費やせと言ってくるだろう。そんな無駄な時間より受験勉強だ、と。
しかし、やる気が起きない。
だって私の成績だったら余裕だろうと皆言ってくるから。
別に私は頭が良いわけでは無いけれど、普通科の高校だし、姉が受かったのだからお前も行けると親も言う。
そんなに行けると言われればやる気なんか起きなくなる。
それに行きたい高校というわけでもない。単に行きたい高校は無かったし、将来の夢も無かったからその高校に決めただけ。
私みたいな決め方した人はどのくらいいるだろう。
そんな事を思いながら来た道を戻った。
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