女桃太郎

遠山李衣

第1話 桃は川からやってくる

 昔々、あるところにおじいさんとおばあさんがおりました。おじいさんは銀峰山ぎんぽうざんへ芝刈りに、おばあさんは億之瀬川おくのせがわへ洗濯に行きました。

 おばあさんが川で洗濯をしていると、川上の方からどんぶらこっこ、どんぶらこ。大きな桃が流れてくるではありませんか。

「なんて大きな桃なのかしら! 今夜のデザートは桃で決まりね!」

 このおばあさん、とんでもない桃党で、朝、昼、間食、晩、夜の5食すべて桃でもいいというぐらい桃を愛しているのです。

 おばあさんは、舌なめずりをしながら、わらわが一人入れるぐらいの大きな桃を、昔宮中で鍛え上げた腕力で抱え上げ、家への道を急いだのでした。

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