君になる息遣い

許される場所ではいつだってイヤホンをつける

塞がれてる感覚に安心を覚えるようになったのはいつ頃か、

もう思い出せない


眠るとき ふいに夜の沈黙が膨らんで

一日の終わりを冷たく覆う


イヤホンを外した僕を守るものはどこにもなくて

今日も無駄な一日を過ごしてしまったと後悔する


助けを求めるように音楽を聞いた

嫌いな自分を肯定してくれる曲が流れる

イヤホンは居場所


――それではどこにもいけないというのは変わらない


背中を押す歌声が

その実、僕の空っぽさ加減を浮き彫りにしていく


音楽は決して僕たちを救わない


いっときの感情の起爆剤となって 

いずれ好きな曲に落ち着いて

やがて懐かしさに沈んでいく


孤独を抱きしめてくれるラブソングの"君"はいないから

これは"僕の歌"だと思う主人公を投影して

"君"になって 息をする 虚構のなかで 息を吐く

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