光のポーション

モネノアサ

第1話 プロローグ

 いつの頃からだっただろう。

 前世を思い出し始めたのは……


 名前はシャイン、6歳になったばかり。

 母譲りのハニーピンク色の髪は、私のお気に入り。

 祖母と母との3人暮らし。


 子爵の父親には正妻とその子たちがいる。だから、元侍女だった平民の母と私とは別に暮らしている。

 妊娠発覚と同時に屋敷を出た母は、祖母が営んでいる町はずれの薬屋に住まいを移して私は生まれた。

 父とは月に1度だけお屋敷で会う。見た目が可愛らしかったのと、正妻の子供たちに女の子がいなかったため、うまくいけば高位貴族に縁をもてる可能性を考慮した正妻が、私の認知と屋敷への訪問を許したらしい。

――かわいくて貴族になれた! ビバ美幼児!……ゴホン、本音がもれた


 月1の訪問行事以外は、母について薬草を探したり、家やお店のお手伝いをする日々。

 お手伝いが終わったら、近所の友達と夕食までの時間は自由に遊んで過ごしている。


「今日も泥んこでかすり傷だらけなの?」


――潟にはあまり行かないから、泥んこなのは久しぶりなんだけどな……


 ため息をつきながらも、ちゃんと洗って、ポーションまでかけてくれる優しい家族に恵まれたね。かすり傷もポーションで痕も残らない!


 ポーションと言えば、前世を思い出したきっかけとなったのが、お店にポーションを買いに来たごつい冒険者を見あげたときのことだった。


『この人は太陽人』


 そんな言葉が脳に浮かんだ。


――太陽人? お日様のようにキラキラしてるとか……ではないよ、ねぇ? というただの思い過ごしのような知らない言葉に首をコテッと傾げたのが前世を思いだした始まりだった……



 この世界でも、前世の記憶を持っている子はいる。

 2歳くらいの子供たちに前世のことを聞くと話をする子が結構いるのだ。大きくなるにつれて、その記憶は薄れたり無くなったりするらしい。


 だが私の前世の記憶は少し変わっていた。

 5歳すぎという思い出すには少し遅いと思われる年齢に加え、記憶がふいに出てくる。聞かれてもいないのに……。それに異世界転生をしているようなのだ。


 おまけに、前世は地球の日本にいたようなのだが、宇宙は星シリウスの未来から来たという前世記憶を思い出した記憶があった。つまり前前世の記憶がある。

 と言っても、シリウスから来たというだけのもの。


――なーんも役立たなかった前前世の記憶ね


 前前世の記憶のなさよりはましだが、前世の記憶は曖昧で、当時の名前すら思い出せない。ただ、日本を基準に考えるとこちらは中世ヨーロッパに近い様子をしている。

 生活水準は前世である日本のほうが、一見進んでいるように思えた。でも、思い出していくうちにこちらの方が進んでいると思えることもあった。


 次第に前世の話はしなくなっていった。宇宙からきたという前前世の記憶や魔法のない世界の話は変わりすぎていたから。


――なんせ未来の宇宙から来た前前世だよ? 「目覚めてしまった」らしいと厨病扱いか魔女狩りされたりしちゃう? 魔女狩りがあるのかは知らないけど。……てか、魔法だらけの世界で魔女狩りしたら人が滅びるな! 魔女狩りはなさそうだ! 助かったぁ


……というような心配を繰り返してたら自然と言えなくなっていったわけで……


 ちなみに、他の子供たちは過去からの転生にしか思えない前世ばかりで、わたしの話とはだいぶ違っていた。

 実際、親に話をしたこともあったのだが、笑顔で聞いてくれるものの、ただの子供の作り話としか思われていなかった。


 幼馴染に話しをしたら「おまえを俺の一番弟子にしてやる!」と宣言された。

――なぜ? わけ分からないよ……




話別小説情報

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る