amadeus-世界の一握り

@Alce

第1話 愛を授けられた者

【こんな事を体験した事はないか?】

【自分の周りだけでも数多の生物がいるのに】

【この世界は広い】

【自分の知っている知識がすべてではない】

【一体どれだけの生物がいるのだろう】

【生物の種類だけじゃない、自身の種族である人種】

【その人種にも色々ある】

【そんな事を考えている内に時間が過ぎている事とか】

【そんな事を考え出すと、終わりが見えなくなってくる事】

【確かにこの世界は広い、だが何も全てを知る必要はない】

【自身の歩む一度の人生で知れる事などたかが知れている】

【ならばせめて自身の限界まで知りたくはないか?】

【もし君が望むのであれば、その機会を】

【世界の一握りが手にする力を君に授けてあげよう】


「俺は...知りたい...今の日常は退屈だ...」


【よかろう、ならば授けよう、上手く使いこなすといい】



・・・


・・・


・・・



トゥルルルルルル トゥルルルルルル


「ん...ぅぅ...」


トゥルルルルルル トゥルルルルルル


ピッ


「もう朝か....早いなぁ~」


神崎晴斗(かんざきはると)はあくび交じりに携帯のアラームを止める

そして携帯の画面を除く


「今日は学校休みだからゆっくりしたいけど、友達と出かける事になってんだよな~」

「仕方ない、準備するか...」


さりげのない愚痴をこぼしつつ、出かける準備をする


「そういや、なんか変な夢を見たな、何かが俺に対して話しかけてきて、何かを授けるだとかなんとか...まぁ夢なんて何が起こってもおかしくないからな、気にしないでおくか」


支度を終え部屋に戻ると一通のメールが来ていた


【時間覚えてるか? 9:00だぞ~ 時間厳守だからな!】


「わかってるっつーの...!」


メールを送ってきたのは昔からの親友、朝霧湊(あさぎりみなと)

困ったことはとにかくコイツに相談している。


「んじゃま、少し早いが行くとしますかね」


晴斗は家を後にし、集合場所に向かう


「さすがにまだ誰もいないか」


集合場所に到着した晴斗は既に来ている人がいないか辺りを見渡す

そうしていると後ろから声が聞こえた


「おーい!」


「ん?」


晴斗は後ろを振り返るとそこには

晴斗の学校の友達の綾瀬璃々(あやせりり)が手を振っていた


「やっほーい!」


「早いね綾瀬さん」


「うんっ!晴斗君も珍しく早いね!いつも時間ギリギリにしか来ないくせにぃ~!」


満面の笑顔でさりげなく毒を吐いてくる、それには晴斗は苦笑いを隠せない


「ははは....」


「時間まではあと20分くらいあるね」


「そうだね、湊はいつも10分前ぐらいに来るから、あと10分は二人だな」


「だね~、そういえば今日いく場所ってなんてとこなの~?」


「あれ?教えてなかったっけ?」


「ううん、聞いてはいたけどいまいちよくわからなくて」


「なるほどね、今日はマテリアルっていう場所に行く、昔の遺産というかなんというか、神話に出てきた武器だったりが展示されている美術館?という感じかな、といってもとても広くて、その建物内だけでカフェもレストランとかゲームセンターとか、そういったものもあるんだけどね」


「美術館というかなんというか、すごく楽しそうだね!」


「うん」


そんな話をしていると待っていた人物が現れる


「おう!待たせたなお二人さん!」


「あっ!湊君!!」


「やっと来たのか?」


「お?なんだ~いっつもギリギリに来る奴がよく言うじゃないか」


「どこかの誰かさんのメールを見てな」


「ははっ!そりゃ結構!」


「じゃぁ早速行くか!」


「だね!」

「だな...」


こうして3人はマテリアルへと向かう


マテリアル周辺はすごい人だかりができている

人の熱気がとてもすごく、汗が出る程だ

その人だかりを抜けてマテリアルの入り口にたどり着くと、マテリアルの自動扉が開く


「はぁ~!生き返るね!」


「まったくだな」


「だね...」


マテリアルの中はとても涼しかった

そしてそのまま受付に足を運び、受付を終わらせる


「どこから行こうか...」


「2人に任せるよ~?」


「俺はどこでも構わねーぜ?」


「なら4Fにある聖遺物や神器がおかれてる展示ブースに行っていいかな?」


「いいよ~」


「構わねーぜ」


こうして3人は4Fの展示ブースに移動する

そこには有名な神話に登場した遺物や過去誰もが耳にしたことのあるような英雄の物品などが飾られていた


「すごい....」


「晴斗君こういうの好きなの?」


「うん!」


晴斗はこういう過去に起こった今では考えられないような出来事の中で誕生した遺物が大好きだった

晴斗が展示品を凝視していると黒服で金髪長髪の人物が近寄ってきた


「おやおやこれはこれは、若いお方がこのブースに興味を持っているのは珍しいですねぇ~、おっと失礼、私はヴェリル・アーライト、この展示ブースのオーナーです」


「あっ...えっと神崎晴斗です」


「神崎さんですね、こういった遺物はお好きなのですか?」


「はい!子供の頃からずっと好きでした!今では起こりえない出来事から生まれた、遺物...まさに聖遺物です!」


「ははは...かなりお好きと見えます、ここにはあらゆる遺物がありますゆえ、ゆっくりとしていってくださいね」


「はい!」


「あぁそれと、今ではありえない...なんて事は無いかもしれませんよ?ふふふ」


「?」


そんな事をいうとヴェリル・アーライトは奥の部屋へと去っていった


すると他の展示品を見ていた 湊と璃々がやってきて


「かなり見入ってるな、もっとゆっくり見たいなら見ていていいぜ?、俺は少しミリタリーブースに行ってくる」


「私はここの3Fにあるカフェのとてもおいしいって噂のコーヒー飲みに行こうかな?」


「わかった、せっかく3人だし、それぞれの見たいものは、昼までに見て、そこからはもう一度3人で回ろう!」


「了解っと」

「わかったぁ~」


こうして、3人は別々の場所へと散らばっていった


1人になった晴斗は美術ブースを見回っていると、ある遺物に目を奪われる、それは、【天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)】

これはかつて、スサノオノミコトがヤマタノオロチ退治によって手に入れ、その後三種の神器の一つに加えられたとされているこの日本を代表するといってもいい神の剣

それを見ていると、ふと声が聞こえる


【今の君にはわかるはずだ】

【その神の剣を扱える者がいることを】

【そしてその扱える者の1人が自分である事も】

【君はかつて願った】

【今の現代では起こることのない出来事で生まれた遺物】

【その遺物を扱えるのなら、自身は現代ではない】

【異端の存在へと至るだろう】

【そしてそれは、この世界の自身の知らない世界への入り口だと】

【そしてその入り口は自身が目指す入り口だと】

【その入り口に至りたいと】

【ならば願え、我力になれと】


「俺は....」


晴斗は、ほぼ無意識に天叢雲剣に手を向け言葉を発する


【天叢雲剣よ、私の力になれ、私が新たな世界を見せてやろう】

【この広き世界の一握りの中のほんの一粒に等しき神の剣よ】

【我願いを聞き届けよ】

【amadeus】


すると展示されている天叢雲剣が粒子になり晴斗の中に入り込んでいく

晴斗はそれを無意識のうちに吸収する

そして吸収を終えると意識が戻る


「今のは....なんだ...」


先ほどまで強固に展示されていた天叢雲剣が消えている、もちろんそれが何故かは晴斗にはわかる


「俺は...何をしたんだ...」


「とにかくマズイ...! どう説明するんだ...!?」


焦っていると奥からヴェリル・アーライトがやってくる


「やはり...薄々そんな気はしていましたよ」


「え?」


「貴方は神に愛を授けられたようですね」


「え?ぇ?なんの事ですか?...」


「隠す必要もありませんよ、私は貴方と同じ側ですからね」


するとヴェリル・アーライトはある言葉を発する


【私の光を信じよ、さすれば道は正しき道へと至るだろう】


するとヴェリル・アーライトの手元に金色の指輪のような物が現れる


「私と貴方の力は違うようですが、ものは似ているといっていいでしょう」


ヴェリルは手を自身の前に出すと突如手が光、その光が一本の棒のように伸びてゆく、そして一定の長さで止まり先端が槍のように尖る


「この力は神の光を利用した力、光の形状を自在に変え己が力とする、これが私が授かった愛です」


「なっ...」


信じられない光景に呆然とする晴斗


するとヴェリルはその光を消滅させた


「貴方もその力を持つのなら、近いうちに知ることになると思いますよ、その時は...お互いどういう関係になっているのか楽しみです」


意味深な事を言ってヴェリル・アーライトはまた奥に戻っていく


「あっ!あの!結局展示品はどうするば...!」


「それはもう貴方のものですよ」


「え??」


「それではまたいずれ」


「....」


「なんだ...?なんなんだ?まったくわからない、わからないが...」


晴斗はいきなり起こった目の前の減少に理解が追い付かない、追い付かないのだが、心の底から思う事があった


「素晴らしい...!これが俺が求めていたものだ...!!!」


周りから見れば変な人に見えるだろうが、この時の晴斗は嬉しさに満ちていた


「おっと、もうこんな時間か、2人と合流しないとな」


晴斗は携帯の時間を確認し2人にメールを入れ集合場所を決める

そして場所を決め、その場所に向かうのであった





【君は今、入り口へと至った】

【だが所詮は入り口】

【そしてその入り口に出口があるとは限らない】

【せいぜい見せていただこう、君の求めた世界を】






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