いっせーのっ!

ひいらぎ星輝

プロローグ あれ?昨日の話だっけ?一昨日だっけ?

「検査結果は――—青、君、覚せい剤の反応が出たから署までご同行お願いね。」

テレビからは警察に24時間密着した番組が放送されている。

カチッカチッ…もうこんな時間か…

時刻はすでに夜の9時を回っている。

「飯何にすっかなぁ…」

東京まで出てきているので当然親はいない。作ってくれる彼女なんてのも当然いない。

「コンビニでいっか」

部屋着のまま近くのコンビニへと向かう。

「都会は近くに何でもあるなぁ…」

まだ東京へ来て一か月といったところだ、まだまだ見たことないものがたくさんある。

奇抜なファッション、専門店、ビル・・・

今の時代さすがにコンビニは田舎にだってある、聞きなれた入店音を耳で受け取りながら今夜の飯をあさる。

「何にすっかなぁ」

来ても迷ってしまうのがコンビニである、しかしそんなに沢山は買えない。

生活費のほとんどが両親からの仕送りだからだ。

アルバイトだけじゃ東京住まいは無理か…

そんなことを心でぼやきながら会計を済ませて店を出ると—――


「なんだよ…これ…」

悲鳴が飛ぶ、泣きわめく子供、そして燃え上がる炎。

一瞬交通事故かと思ったが、そうではないとすぐに分かった。

現場の中心には黒く半透明な異物が動き回っていた。

思わず近づいて見に行こうとした、自分の悪い癖だ。

しかしそれは阻止された、何者かの手によって。

俺は考えた、いや理解しようとしたのだ。しかし、そんなことが脳に伝わらないうちに意識が飛んだ。


「こいつどうするんすか~?」

気の抜けた声で少女は隣を飛ぶ小さな機械に話しかける。

「その子の住所は○×‐□○△よ、ちなみに好きな食べ物は干し柿とたくあんね」

機械からは少女より年上であろう女性の声。

「ありがとっす…って誰も食べ物の好みなんて聞いてないっすよ、てか渋っ!さすが田舎育ち…」

「こらこらあんまりいわないの、その子が悲しんじゃうでしょ?」

「……へい」

適当に流す。

「”へい”じゃないの」

「…はい」

この人はこういうところはやけに厳しいっすねぇ…

「よし、いい子いい子」

少し恥ずかしくなった、話題を変える。

「あ、こいつはどこに運ぶんすか?住所通りの自宅っすか?それとも”あっち”っすか?」

「とりあえずその子の家でいいわ、いきなり”あっち”だと状況が呑み込めなくなって…たくあんしかいえなくなっちゃうかも?」

「怖ッ!田舎民怖ッ…とりあえずあいつにばれないよう帰るっす」

「よろしくね~…あ、たくあんの話は嘘よ?それと…」

プツッ…

盛大に嘘をつかれた、めんどくさいから切ってしまう。

「あらあら冷たい子…まあいいわ、目的の子は手に入ったわ…」

女は口元だけ笑っていた。


「ったく煩いったりゃありゃしないっすよ…」

少女は闇の街を駆ける

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