そんな性器は嘘である
@hybrid
第1話 明日もう一度来てください、本当の交尾を見せてやりますよ
※動物性愛と動物虐待は全く異なります。動物に無理やり性行為を迫る等の動物虐待はやめましょう。
2017年、秋の夜長に僕――和久井 なをき――は女体を前にして猛烈に焦っていた。ただしここでいう”女体”には、研究室の同期である石川さんと、別のもう一種、「ルナ」ちゃんが含まれる。「ルナ」ちゃんとは昨日僕が名付けた名で、産業上及び行政上、彼女には「JPN114514-364364」という味気ない名が付いている。しかしそれも、ルナちゃんが生物分類でいうところの牛、つまり産業動物であることからして仕方のないことだ。国内で家畜として飼われている牛には全て、3文字の国コードと12桁の個体コードが割り振られていて、それらコードが示されたプレートが耳からピアスのようにぶら下がっている。そのおかげで消費者は安心して牛肉を購入できるらしい。僕の専門は畜産業ではないので全部知り合いの知識の受け売りだが。
僕が焦っている訳はいくつかあるが、その中でもクリティカルなものは石川さんの手のひらで汚く輝いているUSBメモリーだ。僕と彼女の卒論共同研究で得られたデータを蓄積すべく、彼女が用意してくれたUSB。石川さん好みのイケメン俳優がデザインされたUSBであったのだが、それが今や、見るも無残に牛の糞にまみれてしまっている。牛の糞は僕の予想とは裏腹に中々水っぽく、固形分は意外と少ない。今流行りのふわとろオムライスくらいの流動性だ。そんな糞が僕たちの卒業を左右するUSBに飛散してしまったのだから僕はデータの心配を第一に、USBの洗浄を試みようとルナちゃんから離れて石川さんに近付いた。今までUSBのことだけが気がかりで気が付かなかったが、石川さんの惨状にやっと気が付いた。
後述するが、石川さんは”研究のため”という名目で、僕がルナちゃんとセックスを試みてから現在に至るまで、全裸でいてくれた。が、どうやら一糸まとわぬ生まれたままの石川さんにルナちゃんの糞噴射が直撃していたようだ。眼鏡をかけていたのが幸いしたか、目には入っていないようだが彼女の裸体を糞が覆っている。石川さんもイケメンも顔中糞まみれだ。
だがここで彼女に泣き叫ばれるのはかなりまずい。僕も彼女も全裸なのだ。おまけに僕のペニスには先の膨らんだコンドームが付いている。何も事情を知らない農家さんが見たら、ルナちゃんとセックスをしていたとはさすがに想像しないだろうが、僕と石川さんが青姦に励んでいたと断定するに違いない。僕ははっきり言って石川さんは好みではないし、スカトロジーの気があると思われるのも心外だ。それに警察でも呼ばれたら研究どころか除籍処分もくらうかもしれない。どうやって石川さんをなだめようか思案していたが、思いの他彼女の反応が薄い。糞の臭いが立ち込める石川さんに更に近付く。と、白目を剥いた石川さんの体が僕の方に傾いてきた。
失神しているのだ、と考える間もなく、僕は糞まみれのファースト・キスを経験してしまったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます