2巻発売記念!「2章を思い出そうキャンペーン!」(1/4)


『ダンジョン農家! ~モンスターと始めるハッピーライフ~ 2。 夏だ!祭りだ!超級だ!』発売記念SS『イットの冒険 ~烈火の章~』

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「筋肉が足りない。特に質の面で」

 俺の名はイット。近衛騎士見習いである。

 なぜだか今、下着姿でベットの上に横たえられている。そして小柄だがコムエンド魔法組合副組合長のチカリさんに全身を隈(くま)なく触診されている。


「お前、今どこを見て【小さい】と考えた?」

 問答無用で胸に張り手を張られた。痛いです。勘弁してください。


「とにかく、貴様は騎士をやるのに魔法の補助に頼りきっている!」

 曰く、祖父が仕込んでくれた身体強化系の魔法が無自覚に発動できるまで高効率で自然に発動しているとのことらしい。よく理解できなかった。


「さすが伝説の魔法騎士、脳筋にこんな高度な魔法を仕込むとは恐れ入るわ……」

 ……小さい体とは反比例して態度が大きいな……。いった。胸に張り手を張るのはやめてください。同い年ですよね。……ん?そいつの存在が憎い? いやね。大きくたっていいことはないですよ?


「お前、地獄の特訓確定な……」

 それから俺は1ヶ月ほど地獄の特訓を受けた。初め面白がっていた見学に来ていた先輩騎士たちもいつの間にか男女問わず参加させられた。

 この特訓を経て近衛騎士団全体の魔法技術向上と同時に男女を越えた絆が芽生えたような気がしたのだった……。


「またくる」

「「「「チカリサン、モウホントウニケッコウデス」」」」

 王都勤務の近衛兵団全員が声を揃えたのであった。

 え?魔法使いなんだから実戦訓練に巻き込むとか色々牽制する方法はあっただろうって?……高位貴族でも武を誇りとする家の先輩がやりました……。その方はものすごく強い方でした……。だから調子に乗って『魔術師殿も騎士の訓練に参加されてみてはいかがでしょう。得るものがあると思いますよ』とか言っちゃったのよ。チカリさんも宮廷見学後で、なぜか殺気立っていて快諾した……。

 騎士の皆さんも武器を用いた訓練で一泡吹かしてやろうと張り切ってたみたいで……。結果から言うと欲求不満のチカリさんが不甲斐ない結果に終わった騎士たちを立ち上がらせて鎧越しにお腹に気合(拳)を注入していった……。地獄の光景だった。粉砕された鎧。もだえ苦しむ先輩達。頭を抱える近衛師団長達。結果。


「ようこそ、責任を果たせないほど糞弱い近衛の皆さん。これからチカリブートキャンプで生まれ変わってもらいます♪」

 いい笑顔だった。俺と先輩たちはその笑顔を見て希望を捨てたのでした。


「……宮廷にあんな絵画を納品しやがって……、親父、次あったら殺す……」

 私怨をぶつけられた気がする……。生まれ変わった我ら近衛兵団は去り行くチカリさんの後姿を見送りながらチカリさんの父親、画家アルホースこと繊細な斧使い殿が近衛兵団とは関係ないところでチカリさんと再会されることを一心に祈っていた。

「あ、娘帰った? いや~良かった。あの絵見られちゃってから殺気立っちゃってさ……、反抗期ってやつかな? そう思うと可愛いよねー。……お、きた! インスピレーションが下りてきた!!」

 ちょっ、戻ってくるから! 声を抑えてください……。ていうか、この軽薄そうな糞イケメンのモヤシ野郎が本当に伝説の斧使いですか?

 ……その後再び研修にいらしたチカリ様はもう1枚飾られていた絵画を眺めて殺気立ち、1日限定ですが想像以上の地獄を我々に見せるのでした……。イケメン滅びろ……。

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