本の階段

@kinounoyume

プロローグ

6月1日、中学3年生の相葉翔は今日から新しい学校へ通う。

こんな時期に転校するには、それなりの理由があった。両親は共働きで、特に変化のない普通の生活を送っていた翔だったのだが、3年になってすぐに変化が訪れた。クラスでいじめられるようになったのである。

彼が何か変わったわけではない。それまで、いじめられていたクラスメイトが転校して、たまたま次のターゲットになってしまっただけである。今まで友達と思っていた奴らも見て見ぬふり。1か月は何とか耐えたが、5月に入ってからは休みがちになり、両親の知るところとなった。

話し合いの結果、母方の祖父母が住んでいる田舎の学校へ卒業するまで転校することになった。そして今日がその一日目である。

祖母が一緒についていくと言って聞かなかったが、転校の手続きはすべて済んでいるし、学校も小さな村の真ん中で道に迷うこともないので、翔は

「一人で行く」

と祖母に言って家を出ようとした。

「でも、何かあったら」

と言って引き留めようとする祖母の手を半ば強引に引き払い、「いってきます」と祖父母の家を出た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る