【第31回】異世界ユーチューバ―配信 byビカキン

ちびまるフォイ

だいじなことはすべて動画でまなんだ

『い・い・い 異世界チャンネル~~♪』


「ハローワールド。どうも異世界からお届けするビカキンです。

 今日はちょっとこんなものを買ってきたんですよ」


画面には剣がうつる。


「これね、城の近くの武器屋さんで買ったんです。

 そう! "どうのつるぎ"ってやつです!

 これ切れるのかな? すっげぇ色がにぶいんだけど」


ユーチューバ―は野菜やら紙やらを試し切りして、

わざとらしいほど大きなリアクションとデカい字幕を出す。


「というわけで、今回はどうのつるぎ回でしたーー!

 シーユーアゲイン!!」



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収録が終わると、チューバ―はすぐに反応を見た。


「どれどれ増えているかな~~♪」


毎日待っているだけの退屈な生活だったが

ユーチューバ―と活動してだんだんと日々に活力ができてきた。


最近では再生回数とチャンネル登録数が増えるのが最高のごほうびだ。


「……あれ? 増えてない……むしろ減ってる」


「あのぅ、ま――じゃなくて、ビカキンさん」


「なんだい? フォロワー」


最近ではユーチューバ―としての自分を浸透させようと、

仲間にも自分のハンドルネームで呼ばせてる。痛い。


「もうそういう配信やめませんか?

 フォロワー3人で再生回数は10回じゃないですか。

 広告収入もないわけですし……」


「ば、ばっか!! これから増えるんだよ!

 今が底辺ってことは最高にのびしろがあるってことなんだよ!!」


ビカキンはけしてあきらめなかった。


「今までは単に異世界で売られている商品を紹介していたな。

 でもこれじゃテレビショッピングとなんら変わらない。

 よし、もう少し趣向をこらしてやってみよう!!」


「なにをするんです?」


「ちょっとふもとの町まで行って、粉塵買い占めてこい」


「まだよくわからない無駄遣いを……」


しばらくして、部屋に大量の粉塵が届いた。

ビカキンはカメラを回す。



『い・い・い 異世界チャンネル~~♪』


「ハローワールド。どうも異世界からお届けするビカキンです。

 みなさん、お仕事で疲れたときとかどうしてます?


 実は異世界にこんなものがあるんですよ!」



_人人人人_

> 粉塵 <

 ̄Y^Y^Y ̄



「これね、基本的には飲んだりかけたりするんですが

 僕はひとあじ違うんです。

 これを大量にお風呂にいれてつかってみようかなと!!!」


ビカキンは準備していた風呂場へカメラを移動する。


「じゃん! 粉塵風呂です! これに入ればめっちゃ回復するでしょう!!」


そのあとはビカキンが風呂に入ってコメントする映像が流れた。

描写するのもめんどうなので省略。



「というわけで、今回は粉塵風呂回でしたーー!

 シーユーアゲイン!!」



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投稿後、ビカキンはすぐにチェックする。


「どうかな? どうかな? 今回は増えたんじゃね?」


「す、すごい……! ものすごい再生回数です!!」


「っしゃーー!! 神回確定ーー!! 好きなことで生きていけるぜ!!」



「でもほとんどが低評価です!!」



>粉塵もったいない。

>作ってる人に謝れ。

>使い方が汚い。

>くさそう。


動画に寄せられる評価は散々なものだった。

それ以降もアンチが定着したのかなにを投稿しても低評価つけられてしまう。


「ビカキンさん、どうするんです? もう続ける意味もないじゃないですか」


「フォロワーは増えてるんだ……フォロワーは……」


「アンチですけどね」


「アンチだってかまわない! そいつらが納得できる作品を出せば、

 間違いなくファンに変わるはずだ!! そうに決まってる!!」


「そのポジティブさは別のところに出してほしい……」


ビカキンはけしてあきらめなかった。

追い詰められた今こそ、大きく変えるときだ。


「もう異世界の品々を紹介するのはやめだ!!

 普通のユーチューバ―がやってることをなぞってなんになる!!」


「それで、次は何を配信するんです?」


「異世界から配信されてることをフルに生かした内容だ!!」


次の撮影がはじまった。



『い・い・い 異世界チャンネル~~♪』


「ハローワールド。どうも異世界からお届けするビカキンです。

 今日はね、というか今回からはね、スタイルを変えようと思います。


 ずばり、異世界紹介です!」


ビカキンはカメラをもって歩き回る。


「どうですか、この作り! 今、僕は魔王の城に来てるんです。

 まがまがしいでしょう? これがドラゴンですかね」


などと、異世界ぶらり途中転生の旅的に紹介をした。



「というわけで、今回は以上ーー!

 次に行ってほしい場所があればコメント欄へ!

 シーユーアゲイン!!」



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配信終了後、アンチもファンも巻き込んでの大人気になった。


「どうだ! 言った通りだろう! これで俺も一流配信者だ!!

 ビカキンチルドレンとかできちゃうぞ!! やったー!!!」


異世界を紹介することで動画を見ている人は、

はじめて見る世界観に誰もが釘付けになった。



配信から数日後、魔王の城に勇者がやってきた。



「あ! ここ、ユーチューブで見たところだ!!」



難攻不落とうたわれた魔王の城は、

事前学習済みの勇者によって日帰りで攻略されてしまった。


「ま……まだ俺には投稿したいネタが……」


「魔王様……自分のダンジョンを見せてどうするんですか……」



ビカキンこと魔王は、魔王の城の配信回を最後に投稿が止まった。

そして、世界はなんなく平和になった。






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