ニヒルのおとぎ話
第9話 よみがえりの一族
ステルラ帝国の首都から大きく離れた、端の端である風の吹き荒れる丘。そこに『よみがえりの一族』と呼ばれる民族が住んでいた。
よみがえりの一族は伝説上ではあるが、不死の体を持っており、かつて地上の全てを支配した唯一の一族であると囁かれている。そのためか、不吉なものの代表として、その末裔である彼らはずっと差別されていた。
首都ではもちろん、王国中どこにいたって石やゴミを投げつけられては街を追い出されることが多かった。
しかし、その一族は誰もがみな魔法に優れており、ある時、よみがえりの民から世界でも希に見る魔法使いが輩出されることがあった。名をグラキエスという。
彼はその類稀なる魔法の才能から、彼ら一族が絶対に不可能だと言われていた帝国魔法隊入りを果たすだけではなく、その部隊で隊長になった。
彼の帝国魔法隊への入隊は、少なくともよみがえりの一族へいい影響を与えた。
今までの差別が嘘のようになくなったのだ。
だが、この国における問題は差別に関するものばかりではない。国中では魔物の被害が増えていた。最も最悪なのは、最恐の災害カラミタスが発生したことだろう。
カラミタスは単なる災害ではなく、超巨大な魔物であり、被害は帝国の人口の約10分の1程の死者が出る程大きかった。
グラキエスはその魔物を撃たんとすべく、帝国の魔法隊総出で挑んだ。
しかし、撃退は出来ても討伐することはできなかった。撃退によって被害は減ったもののそれは一時的なものに過ぎなかった。
さすがのグラキエスも頭を抱えた。結局天才魔法士が数人いた程度じゃなにもできないことを知っていたからだ。
グラキエスは王に騎士団を進軍させるように進言するも、被害の集束を早めるために人材を派遣していたため、人が不足していた。結局、戦況は悪くなるばかりである。
そんな時、グラキエスのもとに親友の騎士がやってきた。
その騎士もよみがえりの一族の末裔で、一族では珍しく、魔法が使えないが騎士としては最高クラスの者だ。彼は火の騎士を名乗っていた。
火の騎士はグラキエスとともにカラミタスの弱手を探り続た。
ようやく弱点を見つけた時には2年の月日が流れている。
グラキエスと火の騎士のおかげで被害は減っていたものの、民の不満は限界だった。依然として、騎士団は復興のため王都には戻っていない。
グラキエスたちはカラミタスを倒せる唯一の方法である聖なる剣、聖剣を得るため神の試練を受ける。2人は神によって与えられた様々な苦難に耐え忍んだ。
そうして、1ヶ月後ようやく聖剣を手に入れた。
グラキエスらが下界に帰ってきた時には、もう帝国は見る影がなかった。それも、カラミタスのせいではなく、全て人の業による者だった。王は処刑され、世界には混乱が溢れている。
彼にはもはや、本当の正義がわからなくなってしまった。彼が救いたかったのは、美しくも愛にあふれた帝国で、それはもうここにはそれがない。
それでも、グラキエスたちは諦めなかった。彼らは国民をまとめカラミタスを撃つために動き始めた。
なかなかまとまらない国民たちや、かつての仲間たちや立ち上がったよみがえりの民たちをまとめあげた。
カラミタスとの戦いは熾烈なもので、多くの命が奪われた。
しかし、グラキエスと火の騎士のコンビネーションでようやくカラミタスを討伐することに成功した。
そんな彼らをたたえ、よみがえりの一族に対する差別は無くなっていった。
そしてグラキエスと火の騎士は新たな国の王と将軍となり、それをもとに魔法帝と騎士王を立てるようになった。
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