第89話 団子より花! ラブバトル!
アリサが雷属性の召喚獣ライハルトゲルマタークで攻撃を仕掛けた。ライハルトゲルマタークの拳を紫炎のドラゴンは巨大な尾を使って防ぐ。今度は、ライハルトゲルマタークの反撃! 紫炎のドラゴンの尻尾を掴み回転させて地面に叩きつけた。そのままライハルトゲルマタークは、ボディプレスを試みる。避けるドラゴンにライハルト……
なげえわっ! 名前っ!
言いづらいし、わけわからん
だよな……俺は、アリサの付けたニックネームを採用することにした。ライハルトのライちゃんだよな
「お兄様、雷属性だからライちゃんです」
「なるほど、そっちの意味合いもあるんだな」
って、漢字ないだろ、この世界!
俺が怪訝そうな顔でアリサを見るとしまったという顔でぺろっと舌を出した。
アレだ、可愛い仕草ランキング上位のやつだ。
んんんっ、しかし誤魔化されたようにも感じる。
「タケル、私もライちゃんが良いと思うわ」
ライちゃんに2票入った。
てか、それどーでも良いよなクラッカル!!
「ああっ、タケルっ、いまクラッカルって」
しまったああああっ!
指輪を外した俺の心の声は意識している相手にダダ漏れなんだった! よく言えば一方通行のテレパシー。相手の心を読む事は出来ない不便極まりないものだ。
クラッカル王女は、恥ずかしそうに頬を染めて、上目遣いで俺を見ている。
これも可愛い仕草ランキング上位に入ってるやつだ。
「タケル、もう一度クラッカルと呼んで下さいますか」
一国の王女様を呼び捨てにするなんて命がいくつあっても足りねえ
「せめて、クラッカル様……じゃダメかなぁ」
「ええ、今はそれでも良いです。肌を見せた仲なのですから、ここから始めましょう」
ちょ、いいかた! 言い方!
そして何を始めようとしてるの!?
「お待ち下さい! クラッカル王女、お兄ちゃんと私は実は婚約してるんです」
えええっ、何言い出したヒナっ。
ヒナは、耳まで真っ赤になって身体を震わせながらクラッカルに訴えた。
「でも兄妹じゃ、結婚なんて出来ない……はず」
クラッカルは、当然の疑問を口にした。
「で、出来ます! 私達の世界……いえ、国では認められているんですう。そんなの竹輪に穴が空いてるくらい普通なんですう」
いや流石に認められてないよ! ヒナっ!
「ええっ、そうなのチクワが何かは分からないけど……」
クラッカルの眼は驚きで竹輪を横から見た様に丸く見開かれた。
結構信じる方の人だなクラッカル……様
「竹輪に穴が空いてるのは、絶対不変の定義なんですう。同じく兄妹が結婚しても良いのは両性の合意に基づきという事なんですう」
ヒナは、訳のわからん理論でクラッカルを丸め込むつもりのようだ。屁理屈だなこりゃ
だがな、そんな喋り方だったか、お前!
口を尖らして喋る姿は可愛い仕草ランキングに入っているのかも知れないけど
「ちょーーーーーーーーっと待ったあ!」
今度は、メルが二人の間に割って入る形になった。待った、と手のひらを突き出す仕草はランキング外だと思う。
「あたしがタケルのメルだよ。一緒に寝た事もあるんだからあ!」
おいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ! ハイ終わった、俺終了!
蒼ざめる、ヒナ、クラッカル、リンカ、アリサ、マシュ、グライド……
いや、グライドお前は違うだろっ
それ以上に蒼ざめる俺のTAMASHI
そして、イイネするドルフイーナさん……
全く無責任だ! あんた重症でしょうが!
今までの楽しい思い出が走馬灯の様に駆け巡る。
もはや何か言い訳をすれば、すべては終わる。たとえそれが誤解であったとしても……
"だったら答えはひとつ"
「俺を信じろ、お前達! そしてすべては、奴の仕業だ!」
俺は、紫炎のドラゴン、つまりカイニバルを指差した。ちょうどライちゃんに叩きつけられて奴はふらふらになっている。
「一気にせ、攻めるぞう」
俺の必死な気迫に押されて皆は、はっと気が付いた様にそれぞれの攻撃を始めた。
元はと言えば、このような事態に陥らせたのはカイニバルのせいなのだ。それは嘘じゃない。
とは言え全くのとばっちりであるのもまた事実
アリサがライちゃんで雷を落とし、ヒナが凍らせ、リンカと俺が砕き、メルが炎で焼き尽くした。
そして残った灰は、グライドが風で空に飛ばした。あまり意味ないけど……
こうしてカイニバルは、俺達に呆気なく倒されたのだった。
「ヨシ! やったぜ」
俺の仲間達は、先ほどの事は忘れて喜び合っている。本当に単純な仲間で良かったいろんな意味で……
そんな中、クラッカルだけはひとり浮かない顔をしていた。
「どうしたんですか、クラッカル様」
「タケル、実はわが軍隊には、ザナックスの代わりを務められる者がいないのです。サブマネージャーのホサマンネンでは一時的に各部隊の取りまとめは出来るとは思うのですが、リーダーとして必要なカリスマ性がこれっぽっちも無いのです」
でしょうね、その名前だったら……
隊長に次ぐ階級がサブマネージャーって言うのも問題だと思うが、もう少しホサマンネンに優しい言い方をして欲しい。
「姫様、私が不甲斐ないばかりに申し訳ございません。せめてザナックス隊長の心臓の毛程のカリスマ性があれば良いのですが」
ホサマンネンは、申し訳無さの中にチクリとザナックスへの皮肉を入れる。心の小さい男、いやコンパクトな男なのだ。故にカリスマ性はないのだろう。
恐らくカイニバルに命を絶たれたザナックス。ザナックス本人の実力は確かめようも無いが最期の攻撃が、コピーしたものならば相当な魔剣士であったに違いない。
「良し! 決めたわ!!!!」
深刻そうなクラッカルの表情は、決意に変わり、それを見た俺は、もうただただ悪い予感しかしなかったのだった……
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