第2話 マジすか異世界⁉︎
「ヒナ、お前夏休みの宿題終わったのか?」
俺は、リビングでのんびりとテレビを見ていた妹に話しかけた。
「お兄ちゃん、夏休みに入ってまだ一週間だよ。そんなに早く終わるわけないよぉ」
「そうか? 俺は、もう終わっちまったからなんか手伝おうかと思って……」
我ながらせっかちな性分である俺は、早々と宿題を終わらせていた。
「マジっ! 早すぎでしょう」
妹は、驚いた後、少し考えたような顔をしていたが
「だったら自由研究に付き合わせてあげてもいいんだけど……」
ヒナは、兄の俺が言うのもなんだが正統派の美少女だ。肩まで伸ばした黒髪は、妹にとても良く似合っていた。ただ少しツンデレの気質があるようだ。
「わかった。じゃあネットで検索して作っちゃおうか」
「ダメだよ。ネットで調べるのは、禁止だって学校の先生が言ってたんだもん」
「黙ってたらわかんないだろ」
ヒナの通う中学校では、過去ネットで調べて宿題を提出する生徒が続出した為、これを禁止したのだった。笑える事に10人ほどの生徒が、同じ文章を引用していた為、このことがわかったそうなのだ。
「笑い事じゃないよ。証拠として写真や現地の近くのお店のレシートなんかを一緒に提出しないといけないんだから……」
それは、ないだろうと俺が疑いの視線を妹に送ると
「う、疑うんだったら連れてかないんだから、バカっ!」
となぜか逆ギレされてしまった。
◆◇◆◇
「お兄ちゃん、これおいひぃよ!」そこにはとびっきりの妹の笑顔があった。
「てか、俺たち何で自由研究に来てパンケーキ食ってるんだよ。」
俺たちは、海の近くの洒落たパンケーキ屋の中にいた。
「しし、しょうがないよ。だ、だってレシート必要だから」
ヒナは、目を逸らして言った。
どうもあやしい。
俺が店内を見廻すと雑誌に紹介されました的なコピー記事がカウンターの裏に貼ってあった。
ははあ〜ん。やらかしましたねヒナさん。
道理で駅を降りてから先頭きって歩いてたはずだよ。
「ヒナ、ワリカンな」
「えっ、お金持ってないよ」
「!?」
確信犯だった。
ピピッ、お会計は、3千5百円になります。あれっ、二人ぶんで3千円のはずじゃ……。
「はい、そちらの生キャラメルが5百円になります。」店員のお姉さんがにっこりと妹の方を見た。
「お前かっ! 何だこの"ふうわりトロける生塩キャラメル"の袋は⁉︎」俺は、ヒナの両方のほっぺたをひっぱりながら言った。あと塩とキャラメルどっちが生なんだよ!
「いだだだだっ」
「すいませんでした。調子に乗ってました。」店を出て妹は、俺に謝罪した。それでも生塩キャラメルは、手放さなかった。
「だってお母さんに……」
そうか、そう言うことか。
母さんにお土産を……やさしいところあるよな。
「ヒナ、さっきは怒り過ぎてごめ……」って、食べてるじゃん⁉︎
ヒナは、さっきのふうわりだかふわふわだか言うキャラメルを食べていた。
「お土産じゃなかったのかよ! さっきの母さんにって」
「ああ、お母さんにお金が足りなかったらお兄ちゃんに出して貰いなさいって言われたけど。」
そっちかよ‼︎
俺たちは、海岸沿いの道を歩き標本になりそうな生物が居そうな場所を探していた。
「お兄ちゃん」
「なんだ」
「なんかめんどくさいね」
俺は、妹の頭をグリグリしてやった。
そのうち適当な岩場を見つけた俺たちは、小さな海の生物を探し始めた。よくわからないヌルヌルした生き物を見つけた妹は、ギャーギャー騒いでいたが写真を撮って後で図鑑で調べることにした。
ヒナは、しばらく嬉しそうにデジカメで写真を撮っていたが突然、俺を呼びつけた。
「何だろうあれ」
「いや、何もないけど……」
「うん、でもデジカメに……」
俺がデジカメの液晶を覗くと確かに人影が写っている。
だか実際には、その空間には何も見えないのだ。
そのうち人影は、何もない空間に吸い込まれるように消えていった。
"なんだ今のは"
「べべべ、別に怖くなんかないからね。」
いや怖いだろ!
俺達は、人影が消えていったであろう空間に近づいてみた。
別に何も無いように思える。
「お兄ちゃん、何にも……きゃあっ」
声とともにヒナの姿が消えた⁉︎
「どこだ! ヒナっ!」
「わからない! でも来ちゃダメ!」声だけが聞こえる。
「待ってろ。助けるから」
「だめだよ、だってわたしの大事なお兄ちゃんだも……」声が途切れた。
俺は、迷わずその空間に飛び込んだ……
しばらくして俺は、目覚めた。
どうやら気を失っていたようだ。あの空間に飛び込んで何か体がぐにゃりとしたところで俺の記憶は、途切れている。
今は、ベットに寝かされているようだ。妹は、ヒナは、どうなったんだ。
俺が目覚めた様子に気づいたのか奥から人がやって来た。
「あなたが、助けてくれたんですか?」
「ああ、君はこのカイザルの町の外に倒れていたんだよ」
「カイザル?」
「この町の名だが君は、遠くから来たのかい?」
「……多分」
「ふむ、少し記憶が混乱しているようだね。わたしの名は、ケインズ、これでも勇者の血筋なんだよ」と笑った。
ハッと気付いてタケルは、ケインズに問いかけた。
「妹、妹は一緒にいなかったでしょうか?」
「兄妹でやって来たのかい。わたしが見つけた時、君は一人で倒れていたんだが……」
ケインズは、思いついたように続けた。
「もしかしたら魔王軍に連れて行かれたのかもしれない。あくまで可能性でしか無いが」
な、何を言ってるんだこの人は、魔王って……
タケルは、何気なく窓の外を見た。そこには、いてはいけない生き物が空を飛んでいた。
"ドラゴンだ"
ゲームの世界でしか見たことの無い存在……
それは遥かに上空を雲を切り裂くように飛んでいたのだが巨大な翼と顎を持った様子が俺の眼でも捉えることが出来た。
マジかよ……どうやらここは異世界だ‼︎
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