第33話 摘出された病変臓器を提供してもらう研究所での話 8月23日

人肉を有効利用しようとする話。


摘出された臓器は焼却処分されていた。

しかし最近その排煙の中にその病気になる因子が含まれていることが

 わかり、臓器(病変)はすべて保存しなければならなくなった。

これは病院にとっても負担になるので、そういう処理を専門に行う

 施設ができた。


最初はただ単に臓器を保存しておくだけの施設だったが、そのうちに

 研修医の教育や、研究医による研究もおこなうようになった。

人の臓器は病気になってもその機能を全うしようとする。

その不全の状態で働くと、そこから新しい物質に変化させることが分かった。


そこで病変のある臓器を組み合わせて新しい物質を作る研究が始まった。

最初は動物に人間の臓器を埋め込んで研究していたけど、そのうちに

 ゴーレムと呼ばれる、人間と同じ体組織をそろえたものを作るようになった。

それは遺体と同じものだが、臓器だけ生かすために装置につながれている。

これによって新しい分泌物が、そのまま人間の臓器にどう影響されるか

 観察できるものだった。


あるとき、そのゴーレムをつなげて、血液型などが違う場合、どういう反応をするか

 などの研究をしていたとき、ある発見があった。

大脳から微弱な反応が出たのだ。

今までは、一度なくなった脳は原始的な反応はできても、生きていた時のような

 複雑な反応はありえなかった。

しかしそれが出たことで、ゴーレムを大量に作り、それを結合させることで

 意識を作り出すことができる可能性が分かったのだ。

しかしそれは病変のある臓器ではやはりあまり効果がなく、どうしても健康な

 臓器が必要だった。


その日、ついに研究が完成した。

複数の死刑囚の妊婦のおなかの中にいる胎児からチューブで、病院で摘出された脳

 (の一部)につなげて、さらにそれをつなげて1つのパッチワークの脳を作り

 出した。

そしてそこからの神経がつながったコンピュータを通して会話しだした。


「私達は相性が悪いので他の方に組み合わせを変えてください。犯罪者からの栄養は

 欲しくありません。あなた方のような地位が欲しいです」

するといきなりコンピュータにつながった神経ケーブルが伸びて、研究者たちに

 絡まりついた。


数日後連絡が取れなくなったその施設に調査が入った。

しかし普通に研究者たちが働いていた。

対応に出た研究員はいつも通りだと答えた。

ああ研究途中で忙しかったんだとその時は問題にされなかった。


が、

その対応した研究員の後ろからケーブルが伸びていたことは見逃されていた。


END

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