18 まるで永遠に終わらない雪かきでもしているみたいだった
『デブリ迎撃完了』
『右方向より大型デブリ接近』
『支援に向う』
巨人『エンケラドス』での――連鎖爆破作戦は続いていた。
僕たちは『巨人』から剥がれ落ちる隕石の欠片――デブリを、嫌というほど破壊し続けた。しかし、無数に降り注ぎ続ける黒い槍の雨は止まるところを知らず、破壊の濁流となって襲い掛かり続ける。
まるで永遠に終わらない雪かきでもしているみたいだった。
すでに疲労はピークに達し、精神的にも参りはじめていた。
集中力の低下も著しく、それに比例して射撃の精度も落ちる一方。
これまで一機で対応していた大型デブリも、味方機の支援がなければ撃破が難しくなるという状況で、
僕自身も、ほとんど回りが見えなくなっていた。
すでにレールライフルの弾薬は尽き、今は機体左腕に装着したギガントパイルのみでデブリの直接破壊を行っている。
遠距離ではなく近距離での直接迎撃による負荷と疲労は激しく、もちろん機体にかかる負荷と衝撃も激しい。
デブリを撃破するたびに、僕は目の前が
「はぁはぁ。目がかすんできた。機体の制御が上手く行かないし、情報をうまく処理できてないぞ? ははっ――逆にハイになってきた。どんどこいっ。こっちにこいよっ」
僕は、自分自身に発破をかけることで何とか意識を保った。
強がりを吐くことで、なんとか気持ちを繋ぎとめた。
『――ギガス・ブレイカーの掘削軌道計算完了。これより爆破予定に
残り時間が五分と迫った時――
リーダー機から、待ちに待った報告が届いた。
『3,3,1――
同時に、リーダー機から送られてきた映像とデータが、『
『コマンドポスト機――こちら第七班。
『コマンドポスト機より、第七班へ。
この巨人迎撃作戦の前線指揮官と――作戦の要の爆破計算を行うアリサの声が、七班の全員に伝わる。
『了解した。これより第七班は前線を離脱する。全員、前線を離脱次第――地球低軌道への降下準備を開始してくれ。これより、ギガント・マキアーは第二フェーズに移行する』
『了解』
七班全員の了解が響き渡り、僕は前線からの離脱を行うべくフットペダルを踏み込もうとした、
その瞬間――
光学センサーが望遠で捉えたのは、リーダー機の足元が崩れ、沈んでいく光景だった。
突如して激しく
それは、無理な掘削による影響で引き起こされる『巨人』外殻の崩壊現象。
蟻地獄のように沈んでいく岩盤と、針山のように突きだす断層による二重の沈下現象だった。
リーダー機の『ヤクトドラッヘ』は、
「――まずいっ、崩壊現象がっ」
僕は咄嗟に操縦桿を倒し、スラスターの向きを変えて機体を横ロールさせると――急いでリーダー機の元に向かおうとした。しかし、それが手遅れであることは分っていた。
「クソッ、最後の最後でこんなこと――」
『秋水』は、崩れた岩盤が巻き起こす嵐のようなデブリが当たり一面を包み込み、砂のように微細なデブリの影響で視界の悪くなった『巨人』の上を猛スピードで進んでいく。
リーダー機の無事を確かめるために。
しかし最悪なことに、微細デブリのせいで通信が途絶され、各種レーダーの精度も著しく低下していた。これでは、現場につくまでリーダー機が無事なのかどうかも分らない。
『――こちらスバル機、リーダー機応答してくれ? 無事なのか?』
やはり、各種レーダーやセンサーを使用してもリーダー機が安否は判明せず、通信にも反応は無い。そして、そんな混乱した状況のまま、光学センサーがリーダー機を最後に捉えた座標にたどり着く。
それとほぼ時を同じくして、デブリによって乱れていた視界が回復する。
そこで見た光景は――
沈下した地盤と盛り上がった断層に飲み込まれて、ぐしゃぐしゃに潰された『ガンツァー』の姿だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます