Hand in Hand
@nanasi7419
プロローグ
大きな揺れを感じ目を覚ます。
周りを見渡すが等間隔に設置されオレンジ色の小型ライトの明かりのみであまりよく見えない。
自分が今どこにいるのかを考える。
広くて暗い、所々にコンテナのような物が見えるが暗くてやはりよく見えない。
自分が座っている椅子も椅子や座席というより段差と言っても良いくらいに無骨だ。
椅子や壁に触れてみる。
冷たく、硬質な金属だ。
何より微かにだが外から風のような音が聞こえる。
当然だが明らかに自身の部屋ではない。
ではここはどこだ?
そして何故ここに自分はいる?
とそこまで考えたところで暗い部屋に無線らしき音声が響く。
「あーあー。聞こえてる?ていうか起きてる?」
聞き慣れた女性の声だ。
その声を聞いて状況を認識する。
「そうか仕事中だったな」
「はあ?あんたまた寝てたんでしょ?相変わらず寝起きは頭が悪いわね。状況わかってる?」
「問題ない」
水が流れるかのように目が覚めていき意識と記憶がはっきりする。
自身の状況を改めて実感する
「上々。んじゃ今回の仕事内容を改めて伝えるわ」
「必要ない。覚えてる」
「そうだったわね。あんたはそうよね...」
座席から立ち上がり伸びをする。
体が硬い。座って寝ていれば当然か。
「まあでも状況を整理するためにもう一度伝えるわね?」
「必要ない」
「あんたにはね。報告書を出すのは私なの?良いから言うこと聞いとけ」
「わかった。」
「オーケイ。今回の不幸な目標は武器庫から弾丸、あるいは武器本体を横流して自己の利益としていたじじい。名前は忘れたから後であんたが思い出しといて。顔は後で送るわ」
「ああ」
少し移動し周りを散策する。
小窓を発見し外を確認してみる。
空だ。月明りで微かだが遠くに下に街並みも見える。
「あんたは今その目標が逃げたと思われる場所にただいまヘリにて輸送中。降下地点は後で送るから確認よろ。ここまでオーケイ?」
「横流しはいつから行われていたと想定しているんだ?」
「大体半年前ね」
「半年間も気づかないほどそいつは器用だったのか?」
「わざとよ。泳がせて調子に乗らせてたらぼろ出して流し先、そしてその先の目的も勝手に置いてってくれそうだったからね。読み通り相手先との連絡のログの管理も取引する時も隙だらけで探るのは簡単だったわ。だから用済みってことね」
なるほど。考えれば誰でも思いつきそうな手ではあるがその誰でも思いつきそうな手に引っかかった今回の目標は相当間抜けらしい。
「他に質問は?」
「どこまでやっていい」
「ぶっ殺せ。場所は郊外。人払いも終わってる。やりたいようにやって泣いて後悔させろ」
無線越しにでも今女がニヤリと笑ているのがわかる。
相変わらずいい性格をしている。
「了解」
「それじゃあ時間もそろそろだし準備して。後ろ開くわよまだ落ちないでよね!」
その瞬間壁の一面が外側に倒れるようにして開き室内が月明りで少し明るくなる。
が、風が一気になだれ込んでくる。今まで外の風音が微かに聞こえていたぐらいだったのが一転して室内に置かれているコンテナや機材のきしむ音で満たされる。
「あんたが飛び降りても死なないギリギリまで高度を降ろすわ。相手にあんたの存在を確実に認識させてビビらせてやるためにね。それまで降下ポイントの確認もとい景色でも楽しんでなさい」
「ああ」
倒れた壁に近づく。やはり風が強い。景色どころではないな。
「降下ポイントとターゲットの画像送ったわ。ゴーグル確認して」
首元に下げていたゴーグルを見る。黒く顔の半分を隠す無骨なゴーグルだ。
そのゴーグルを装着し電源を入れる。
瞬間ゴーグル内に現時刻や心拍、先ほどの降下ポイントや画像が表示される。
見た目の割にはハイテクである。
「どう?来た?」
「ああ。降りる」
「はあ!?まだ高度が」
「問題ない。行ける」
「...」
無線越しに女が呆れているのがわかる。
だが実際問題ない。余裕の高さである
「わかったわ。機体を安定させる」
言葉と同時に傾いていた機体が平行になっていくのを感じる。
「...」
腰に触れる。
愛武器・日本刀である。
今の時代にそぐわない武器ではある。戦争において銃が主流となった現代では自殺行為とすら言えるだろう。リーチも足りない。銃のように弾切れはないが逆に弾丸を補充すれば済む銃のほうが効率はいいだろう。刀は折れてしまえば終わりである。
が、自分を育ててくれた人、自分を拾ってくれた人たちの影響か、あるいは思い入れか、この武器を選ぶようにしている
「思い入れか」
自分で口にして少し可笑しくなってしまう。
自分はそんなに感情的な性格ではないだろう。
「何か言った?」
「いや何でもない」
言いながら出口手前まで歩き、ゴーグルの位置を直す
「そう。それじゃ行ってこい!」
とん、と軽く飛ぶ。すると一瞬の浮遊感の後高速で落下が始まった。
「人類最強の恐ろしさ見せてやれ!」
青年の名は瀬戸大輝
人類最強として世界中の人間から忌み嫌われる存在である
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