2章:大賢者の頂

プロローグ ~五大任務を攻略せよ~

19話:闇精霊の捕縛

 五大任務。

 国際魔導機関が発行するクエストには、その性質に合わせて更に上位のミッションがある。

 主に単独での攻略は不可能であり、長期間の束縛が余儀なくされるものがほとんどだ。中でも一度も達成されることなく長らく停滞したミッションの存在に、当の国際魔導機関は頭を悩ませていた。

 それこそが危険度、難易度共に最高位に位置づけされる五つのミッション。俗に五大任務と呼ばれるものである。

 特に国際魔導機関が近年攻略に躍起になっているミッションがある。


 ――闇精霊シェイド捕縛任務。


 大賢者の一人にして、精霊の二つ名を冠する正真正銘魔法王国に在籍する一人なのだが、その特異な生い立ちゆえ厄介なことになっているのだ。

 本来、魔法とは大気中のマナ濃度の関係で、現実世界での行使は困難を極める。しかしながら、闇精霊シェイドはこの制約を受けない。否、正確には影響は受ける。それでもなお弱体した闇精霊シェイドを前に、正規軍では例え一個師団を投入しようとこれの撃破は不可能なのだ。

 そのため、闇精霊シェイドには全ての権限を剥奪する大賢者の地位が与えられ、現実世界への出入りを禁じた。これは禁止しているのではなく、障壁ゲート側で完全に弾き現実世界への出入りを不可能にしているのだ。


 しかし、闇精霊シェイドはこれを突破する。


 国際魔導機関がどれだけ対応しようとも闇精霊シェイドを止めることができず、現実世界で度々問題行動を起こす。その度に日本政府、警察へ介入し隠蔽いんぺい、人払いに奔走する。事後対応に追われる中、次第にエスカレートする怪物に、いよいよ本格的な捕縛に乗り出した。

 この日も現実世界へと向かおうとする闇精霊シェイドを、障壁ゲート前で待ち伏せし大規模な魔法戦を繰り広げる予定であった。投入された賢者の数は八名。対して敵は大賢者と言えど、闇精霊シェイド一人。圧倒的な戦力差で挑んだ任務であったが、予想に反し戦闘は僅か十秒足らずで決着した。

 悠々と現実世界へと向かう闇精霊シェイドに、いよいよ危機感を覚えた国際魔導機関は、とある計画を転用することを決めた。

 同じ五大任務の一つ新人類党壊滅。その切り札となり得る精霊文字ヒエログリフ。それを用い、障壁ゲートの精度を向上させ、闇精霊シェイドの現実世界への出入りを完全に塞ぐというものだ。

 だが、これには一つだけ問題があった。

 精霊文字ヒエログリフは黎明期に失われた技術。これを今なお有しているのは皮肉にも新人類党だけということだ。

 この精霊文字ヒエログリフを求め、かつて聖戦の舞台ともなった新人類党の研究所を中心に物語が動く――

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