雨降って地固まる、時もある

def

第1話

「おはよ〜」


「ああ、おはよ。」


間抜けな欠伸をしながらごしごしと眼を擦り挨拶をしてきた。そんなに擦ると腫れてしまう。

不意にぱちりとした猫目と目が合い、無意識に伸ばしていた右手に急ブレーキをかけた。


「ん?何その手」


「擦り過ぎやでって止めようとした手」


「あっはは!なるほど、ありがとう」


くすくすと小さく笑いながら俺の右手を撫でてくる。全く!人の気も知らないでこいつは。朝っぱらからお前に欲情してるんやで、なんて幼馴染の男に言える訳も無い。同性だし。いやきっと女の子相手でも俺は言えない、そんな事。


そんな事はさておき。俺だって思春期の立派な男だ。好きな人に手を撫でられ照れない性分でも無い。ほんのり赤らんでいたであろう頬を目ざとく見つけて来やがるこいつは多分性悪。


「あれ?風邪?」


「テンプレか」


「んふふ、ごめんごめん。照れてるんやろ?」


俺の方が身長が高い。こいつは一般的に見ても低い方だ。だからと言って頬に手が届かない訳でもない筈なのに、ちょこんと控えめに背伸びをして俺の頬を微笑みながらわざわざ撫でてくる。

俺の気持ちを分かっててやってるんじゃないだろうな?とは思いつつも怖くて聞けない俺は紛れもなくヘタレだと思う。

それでも見栄っ張りでプライドの高い俺は、今日も今日とて背伸びして生きている。


男が好きだけど割と平和だ。



「なあ、もう行かな遅刻やで」


「やっば!また怒られる!」


「いっつもギリギリ過ぎるんやって。気を付けてね、いってらっしゃい」


「いってきます!」


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