わたし、学びます

「調べてきてやったわよ! 別にあんたのためなんかじゃないんだからね!」

「自分のためやろ。アホなこと言うな」

「すみません.....」


 翌日、朝礼前にわざわざ早く来てくれた二人に昨日の成果を見せたら怒られた。

 ちょっとは努力したねぇとか無いのかな.....。


「チャコちゃん。それはニワカのツンデレ知識」

「そうなん?」

「『〜〜なんだからね』は定型文。前後が大事」

「むつかしいなぁ」


 つまり、そのセリフが合う状況作りから始めればいいのだろうか。

 そこで、ある事を思い出した。


「そうや、今日の日直イッキくんと一緒やったわ。ちょうどええな」

「やめろ。今のやろうとしてるやろ」

「大丈夫。ちゃんと理解したから」

「全然してへんて! まてチャコ!」

「先に先生のとこ行って数学のノート運んどくねん!」


 わたしはそう言い残して、走って職員室に向かった。なんだかうまくいきそうな気がする。今日のわたしは妙に身体が軽いのだ。




 そして放課後。中庭で。




「どうやった?」

「.....うん。運んでる最中にイッキくんが来てくれて、ありがとうって言われたから『あんたが遅いから仕方なくやってあげたのよ。勘違いしないでよね!』って言ったん」

「それでなんて?」

「『.......ごめんな』って」

「ぶふぅ!! 謝らせてるやん!! チャコおもろすぎやろ!!」


 涙が出るほどケラケラ笑うせっちゃん。もう嫌い。一ヶ月は髪の毛ゆさゆささしてあげへん。

 タンちゃんは逆に心配そうに、わたしの顔をのぞき込む。


「そんなに落ち込まんで? 朝とテンション違いすぎる」

「あ、大丈夫。朝はナチュラルハイでした。あんま寝てないから。いまめっちゃ眠いだけ」

「.....ふふっ」

「ん?」

「あ.....」

「みんな嫌い.....」


 なんだか目の奥がじんわり熱くなってきた。頑張ったもん。寝ないで調べて、緊張したけどイッキくんに話しかけて。

 わたしが両手で顔を覆うと、せっちゃんは笑いを堪えてわたしの頭を胸に抱き抱えてきた。


「ごめんって。眠くてちょっと泣き虫なってんねんな? ほら、もしゃもしゃ〜」

「もしゃもしゃ〜」

「うぅ〜.....」


 タンちゃんも一緒になってわたしの頭を優しく撫で回す。

 あったかくて、気持ちよくて、いつの間にかベンチに座らされていたわたしはせっちゃんの膝枕で眠りについていた。


 やっぱり睡眠不足はだめだ。感情がふわふわする。

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