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@hiro19970131
谷藤 拓人
「助けて!!」
近くから女性の叫び声がした。
僕が助けに行こうとすると彼女に止められた。
「やめて。行かないで」
「そんな訳にいかないだろ。離せ」
僕は彼女の手を振りほどいて女性の元へ走った。
女性は男に襲われていた。
「おい!何やってんだ!」
僕がそう叫ぶと男は慌てた様子で逃げていった。
女性は服を半分脱がされていた。
「大丈夫ですか?」
女性が僕にしがみついてきた。
泣いていたので背中をさすった。
そんな事をしている間に、僕の彼女の方がその男に強姦された挙句、腹を刺されて殺された。
今から7年前の話だ。
もう結婚も決まっていたのに、僕は彼女の人生を台無しにした。
2階のベランダから眺める景色はちっぽけなものだ。
だけど風は気持ちいい。
今日も何事もなく1日が終わろうとしている。
ほっとして部屋に入った。
すぐにインターホンの音がして心臓が跳ね上がった。
モニターに映ったのは同じバイト先の松見怜だった。
「どうしたの」
「入らないから開けて」
「……わかった」
僕は仕方なく鍵を開けた。
「今からシフト入れる?って店長が」
「わざわざ迎えに来たのか……」
「あんたがケータイ持ってないからよ。家電もないし。行くの?行かないの?」
「……行くよ」
本当は何事もなくなんてなかった。
うっかり昼寝なんてしたものだから悪夢を見た。
あの真昼の夢。
彼女が殺されるシーンが鮮明に浮かぶ。
見てた訳じゃないのに。
彼女は服を破かれ、その先は……。
「うっ……」
歩きながら悪夢を反芻していると急な吐き気に襲われ、僕はその場にうずくまった。
「ちょっと、どうしたの?大丈夫?」
松見が僕の背をさすってくる。
あの日、僕は助けた女性の背を……。
どん、と、気づくと松見を突き飛ばしていた。
「痛……」
松見は尻もちをついていた。
行き交う人が僕らを避けつつもじろじろ見ていく。
見てんじゃねえよ。
「あんた、大丈夫なの?」
気がつくと松見が立ち上がって僕の方に近寄ってきていた。
突き飛ばしたのは僕なのに。
僕は急いで立ち上がった。
「俺は大丈夫。ごめん、痛かったよな?」
「別に、大丈夫よ。早く行くよ」
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