感染拡大/ブラックハンター

天辰レイ

序章

第0話 防衛線

「敵…多数。軽く1万近くいると思われます。」

索敵員がそう告げる。

あの化け物どもがそんな数いたとは。

「総員戦闘用意。死ぬ覚悟しておけ。」

そう言うとたった十数人の防衛班は自分達の武器の軽い整備をした。

「こちら爆撃隊。上空は飛行型がいる。護衛戦闘機に戦闘を頼んでいるが長くは持たない。爆撃を開始する。」

無線からたった5機の爆撃隊の小隊長がそう報告すると、上空から花火のような音がした。

次の瞬間化け物のいた場所は赤く光り、爆発した。

『爆撃完了。作戦空域を離脱する。』

爆撃隊はそう言い、離脱した。

「それじゃ…行くか。」

そう言って俺は紐を直剣の柄のしたに付け、右手で握り、空いている左手でレイピアを握った。

「我らは平和の守護者なり!貴様らを、感染体を駆逐する[ガーディアン]!」

叫び、感染体の群れへ突っ込んだ。

直剣の紐を握り、直剣を投げる。

直剣は弧線を描きながら確かに感染体を貫通し薙ぎ払って行く。

そして直剣が戻ってくる。

運良く薙ぎ払いを回避し、近付いてきた感染体をレイピアで突き刺す。

「甘いんだよ!」

敵を薙ぎ払うと味方から歓声が上がる。

それに続き、皆突撃してくる。

魔法援護の一斉砲火も加わったが感染体は一向に勢いを衰えさせない。

『こちらメイジ部隊。魔法触媒を使い切った。白兵戦に突入する。』

無線越しに錬金魔法の詠唱する声が聞こえる。

無線が切れるとほぼ同時に、魔法援護をしていたメイジ部隊が武器を持って物凄い咆哮と共にこちらへ走ってきた。

ある者は素早い身のこなしで槍を使い、ある者は大剣で感染体を真っ二つに。

戦況は有利と思われた…がいよいよ犠牲者が出始めた。

刀で斬り払っていたが、体勢を崩して、転びかけた。

そこへ小型の感染体がタックルをする。

地面に転げこんだところを感染体達は容赦なく噛み付く。

つい数分前まで立派な帝国軍の軍服だったが、今はもう軍服どころか、人間としての原型を留めていない。

次々に戦場に悲鳴が響く。

その度、誰かが役目を果たし、この世を去る。

俺の番は…まだか…

指揮官として、犠牲者を出すことは覚悟していた。

しかし、これ程辛いものとは。

そんな考えをしていると、直剣にくくりつけた紐が切れ、直剣は何処かへ飛んで行く。

急いでレイピアを抜き、レイピアでの戦闘へ変更した。

各個撃破を主な戦い方とするレイピアには集団戦はかなり不利だ。

そしてレイピアの繊細な刃が折れた。

ここで一旦二段飛びをし、少し離れ、戦況把握をした。

味方、敵共に半分兵力が潰れた…

こうしている間にもこちらはより不利な状況になりつつある。

俺は急いで主兵装の大剣と刀を抜き、大剣の先を感染体の群れの方に向け、大剣に刀を十字架のように見えるよう、添え再び、群れへ突っ込んだ。


まず大剣で横に薙ぎ払った後、刀で真っ直ぐ斬りかかり、突っ込む。

そして大剣に重心をかけ、腕を伸ばし、回転する。こうして殲滅して行く。

こうしているうちにも味方はどんどん落ちて行く。

「……ッラァァァァァァァァァァ゛!」

そう叫んで俺はひたすらに切りつけていった……が先程までいた上空支援班も、対空班もいなくなった。いつの間にか俺が最後の1人になっていた。

もはや抵抗も無駄-

そう悟って俺は持っていた小型の爆弾に火をつけ、なるべく感染体の多いところへ、爆弾を持って突っ込んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る