1話目「吸血鬼と人間との出会い」
ヴィンスは人間世界に憧れていた。
様々な文化、その中でも派閥同士で争ったり、協力したりする光景が。
ヴィンスは悩みに悩み、そして決意した。
人間世界に行くことを。
行くにあたって、反対する仲間はいたが、ヴィンスが一度決めたことは曲げない性質だと分かっていたようで、すぐに折れてくれた。
そうしてヴィンスは人間世界へとやってきた。
人間世界にきて、一番に出迎えたのは眩しい太陽。
太陽は吸血鬼の敵、しかも一番輝いてるお昼、もちろんその対策も色々と考えたのだが…
「うっわやばい忘れてきた!?」
あろうことか、自分の家に全部おいてきたのである。
とりあえず日陰に移動し、これからどうするかを考える。
今人間世界では妖怪という存在を認知されており、
妖怪が人間の仕事をしてもいいという存在になっている。
が、そのためには色々と手続きをしなければならない。
その前にも自分の拠点となる部屋探しもしなければならない、
やることは多い、だが今ヴィンスには実行するだけの体力がない。
「…頭クラクラしてきた…」
お昼にしようと思っていたトマトも忘れ、空腹と日光によって体力はどんどんと消耗する。
ヴィンスは空腹感により倒れる。
そこで、一人の女性が通りかかった。
「……行き倒れ?」
倒れてるヴィンスに近づき、女性は話しかける。
「もしもーし、生きてる?」
ヴィンスはその声で少し目を覚まし、顔をあげる。
黒髪…いや少し青がはいってるロングの女性がこちら側に座り込んで話しかけてくる。
生きている、大丈夫と答えようにも今の体力ではそれも無理だった。
「ちょっとー、なにか喋りなさいって」
そう女性は手を差し伸べ、ヴィンスの頬を触ろうとする。
ヴィンスは女性が嫌いなわけでも苦手なわけでもない、悪気も一切なかった。
しかし本能的に、ヴィンスは差し伸べた女性の手を掴み、手首あたりを噛んで血を吸った。
ヴィンスが人間世界に来るにいたって、人間の血を飲むことは禁止事項としていた。
それが破られた今、ヴィンスは激しく後悔しながら、少しだけ血を吸い、安心したのか深い眠りに落ちる。
「ちょ、ちょっと…というか血を吸った…? ええとたしかそういうのって吸血鬼…って言ったかしら…ちょっとぉ、起きなさいよ……」
頬をつねっても叩いてもヴィンスは起きる気配がない。
「…はぁ、全く仕方ないわね」
女性は持っていたカバンを一度おき、ヴィンスを背負った。
「うっ…流石に重たいわね…まぁでもすぐ近くだし…」
カバンを持ち、すぐ近くあったマンションへとはいる、どうやらここが女性の家のようだ。
「こんなところで行き倒れても、私が困るのよっ!」
そういい、女性はエレベーターのボタンを押し、自分の家へと向かう。
ドアの前に達、一度ヴィンスを下ろした後、カバンから鍵を取り出しドアを開ける。
ドアを固定してあまり引きずらないようにヴィンスを部屋の中へと連れて行く。
これ傍からみたら、女性一人が男性一人監禁するための作業だね。
女性は自分の部屋まで連れてきたあと、ベットにヴィンスを転がす。
「あー重かった…さて着替えよう…」
と隣の部屋に行き、着替えを始める。
それから数十分後ヴィンスは目を覚ました。
「…あれ…?天井?」
「あ?起きた?」
と女性はベットの近くにあったソファで本を読みながらこっちを見てきた。
「あーえっと…もしかしてここまではこんd…」
ヴィンスは意識が朦朧としていた記憶を呼び覚まし、顔が一気に青ざめる。
「あぁあああああああ!!!ごめん!!すごくごめん!血吸っちゃったでしょ!?大丈夫!?」
「落ち着け、そして大丈夫だから安静にしてなさい」
傷を確認しようとマッハで女性に近づくヴィンスであったが、女性は来るなというオーラと共に左手をヴィンスの前に出す。
「あんた…もしかして吸血鬼?」
「え? あぁ、うん、名前はヴィンス、元はイギリス?だかって所にいたんだが、人間の世界に来るにあたって「にほん」って所が面白いって知ったからこっち来たんだ」
「ふーん、あぁ私は人深 紗羽(ひとみ さは)、紗羽でいいわ」
「あーえっと、紗羽助けてくれてありがとな」
ニッっとヴィンスが笑うと、
女性…紗羽と名乗った女は少し顔を本で隠しながら。
「別に…まだ妖怪がこの世界に馴染んでないし…ここの町はある程度マシだけど、あんなところで倒れられたらこっちが困るのよ、家の前だし」
「そ、そうなのかそれはスマン…」
笑い顔が一気にショボーンと落ち込む、それから少し思いついたように。
「あっ、そうだ住む場所とか色々決めなきゃだし色々書類かかないといけないんだよな!?あわわわわどうしよう!!!」
「住む場所?なら別にここに住んでもいいわよ、部屋は余ってるしこれから探すにしたってまた外でなきゃいけないわよ」
「えっ」
紗羽がそう言うとヴィンスは驚きを隠せないでいた。
それもそのはず、マンションの前に行き倒れ、助けてくれて…しかも家にまで住めというのだ。
「でででででも迷惑じゃないのか…?」
「私がいいっていうからいいのよ、別に、最低限のルールさえ守ってくれれば」
紗羽は本から目を離さずにパラパラとページをめくり、淡々と言う。
「えぇ…じゃじゃあ 言葉に甘えて…」
「さてと、そろそろ日が落ちるわね…流石に書類は明日になっちゃうけど…今のうちに明日日中で動けるようなもの買いに行きましょうか?というかなんでなたはそれを準備しなかったのよ」
「い、いやぁ準備したけど忘れたというかなんというか…あとで仲間に連絡して送ってもらわないと…」
「普通に送れるのねここまで…」
そう言い、二人は玄関の扉を開いたのだった。
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