花火のように、消えてゆく

YR^83

第1話 輝いていた時

僕は、いつ頃から落ちぶれていったのだろうか。

過去を思い返し、その理由を探す。ただ、昔は良かった記憶力も、今ではその時ほど効力を発揮してはくれない。

だが、人生においてのターニングポイントというのは、脳がそんな状況でも直ぐに見付かるものだ。

僕はその時――小学校、中学校とずっと一緒にいた、優孝琴音まさたかことねの事を思い出していた。


僕の生まれたところは田舎だった。コンビニなんて無いし、デパートも言わずもがな。

僕は、自分の住んでいるこの場所が嫌いだった。同級生は頭の冴えない奴ばかりだったし、便利な物が何もない。娯楽施設も何一つ無かったため、お世辞にも住み心地が良いとは言えなかった。

それを僕は、流石に人前で自分から口に出したりしなかったが、聞かれたら素直にそう答えてしまっていたため、周りからは大分嫌われていた。

でも、そんな辺境の地でも考え方が似通っている人はいるみたいで、僕と似たような人がもう一人いたんだ。

そう、その似たような人というのが、琴音だ。

彼女もまた、僕と同じ考え方で、しかも僕と同じ、控えめに言って高飛車な性格だったんだ。僕ほどではないけれどね。

おまけに、その地域には保育園、小学校、中学校が一校ずつしか無かったから、僕たちは必然的に同じ所に通うことになる。

当然地域の子供も少ないから、学年のクラス数は一つしかない。だから僕と彼女は、幼いころからずっと一緒だったんだ。いや、一緒に居ざるを得なかったと言った方が正しいかな。

で、彼女も案の定、僕と同じ嫌われ者だった。だから、授業でよくある、『二人組を作る』なんてことはしょっちゅうあったから、その度に僕らは一緒になった。

当時の僕はそんな彼女を心の支えにしていたんだ。

『あぁ、あいつよりかは僕の方がマシだな』みたいな調子でね。

だから、ランドセルにカッターで切れ目を入れられたり、上靴をゴミ箱に捨てられたりしても平気だった訳だ。

それは彼女も同じだったようで、だから彼女も僕と全く同じ環境下で過ごしていたけれど、休まず学校に来られたのだと思う。

もちろん、そんな辛い生活を送っているのだから、時の流れが速いと感じることはなかったけれど。


そして時は、中学の卒業式の時にまで進む。

僕と彼女は卒業式を休み、当時お気に入りだった場所に二人で並んで座っていた。

その時の会話は、今でも鮮明に覚えている。

「ねぇ神夜しんや。もし五年後に、私達お互いに好きな人がいなかったら、私と一緒になってくれる?」

彼女が、やけに挑戦的な笑みを浮かべてこう言って来たんだ。

僕は当時、彼女――僕も然り――が売れ残るはずがないと思い込んでいたので、彼女の、その言葉の奥に潜む願望を見抜く事が出来なかった。

「何言ってるのさ。僕たちが売れ残るはずがないだろう?」

だから、愚かしくも僕は彼女にそう返した。

「・・・ちょっとした冗談だよ。忘れて」

すると彼女は、微笑を浮かべてこう返してきたんだ。僕は、その微笑にどこか違和感を覚えたが、無視した。

このとき以降彼女と会うことは殆ど無かった。

今覚えば、この時がきっと、僕の人生で最も輝いていた瞬間なのかもしれない。

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