第28話 ドキドキ
「うう……うまく寝付けなかった……」
はい、ドキドキして眠れなかったです。
「とりあえず朝食買いに行くかぁ……家で飲むって言ってたよな……あ、あとリフクエ確認しとかなきゃ」
パソコンを立ち上げると確かにメンテナンスが実施されていた。
ちょっと覗いたリフクエ掲示板では俺の人生がメンテ中なんだが、などの名言が生まれていた。
「わかるわかる」
俺も今晩のイベントが無ければ、きっと何をしていいかわからなかっただろう……
ついこの間まで何の目標もなく日々を過ごしていただけなのに、変われば変わるもんだ……
男39にして、初めて部屋に女性が入ったり、今日の夜にはお酒を飲むのか……
あんな綺麗な女性と……
「き、緊張してきたぞ!」
夜のことを考えると、初めての飲酒とかのワクワクよりも瑞菜さんと二人っきりで飲むという事実のほうがプレッシャーになってしまう。
「ゆ、夕方までに買い物とかもしないと、座椅子とかも買わないと……」
インターネットという便利なものを使って必要そうなものを探しながら、惣菜屋さんまでの道のりを歩いて行く。
「ソファーは今日買っても持ち帰れないから、やっぱり座椅子とクッション。
お皿とかコップの食器類も買わないと……ショッピングセンター行くか」
ちょっとバスで移動すればショッピングセンターがある。
バスとか久しぶりだな……
そんなことをごちゃごちゃと考えていたらお店に着いていた。
「お、琉夜くん。昨日はお楽しみだったかな?」
「い、いえ。ご飯食べてすぐ用事あったんで……」
「なーんだ……で、琉夜くんはどうなんだよ瑞菜の事は?
いい子だろー? あんな子が彼氏もいないなんて世の中の男は何を考えているのか……」
店長さんこんなキャラだったのか、ぐいぐい来るなぁ……
「やっと、話せるようになったばかりですから、それにあんな綺麗な人俺なんかになにかあるわけ無いですよ……」
「それはたぶん平気だぞー、瑞菜はあの通り美人だからかなりお客さんに告白されたり連絡先もらったりしてるが、一緒に帰ったりしたのは琉夜君が初めてだから、まんざらでもないと思うんだよなー……」
い、いけない。顔がにやけちゃいそうだ……
「は、ははは……」
愛想笑いをして本日のオススメへと目を移す。
「今日はいい鰺が入ったからアジフライだ。おすすめだよ」
「これにします!」
即答だ。お味噌汁はほうれん草と卵。これも美味しそうだ。
「これください」
「まいどあり。でも、真面目な話琉夜くん。瑞菜と仲良くしてやってくれ。
あの子も、君と似ていると思う。明るく振る舞っているけど、寂しいんだと思う」
「え、はい。俺は話せるだけでもうれしいです……」
寂しい。と言う言葉がピンと来なかった。
彼女みたいに美人で明るくて、話を聞くと人気者の女性が、寂しい?
わかるような気もしなくもないが、いまいち理解できない。
モヤモヤと考えながら帰路についた。
「いただきます……」
家に帰り手を洗い。お茶を用意してお弁当を広げる。
カリッときつね色に揚げられた鰺がドンと存在感を放っている。
ソースとタルタルソースが両方とも用意されている。
まずは半分ほどにソースをかけてかぶりつく。
サクッとした衣、そして熱々の肉厚な鰺、こんなに厚みのある鰺はあまり食べたことがない気がする。
衣で封じ込められた鰺のほっくりとした身から旨味がブワッと口の中に弾けだす。
脂も程よく乗っていて、ソースとの相性も抜群だ。
「うんまいなぁ……!」
アジフライの旨さを堪能しながら米も掻き込んでいく。
「こっちも楽しみだな。卵がゴロゴロ入ってるのがいかにも美味しそうだ」
タルタルソースをたっぷりと乗っけて一口にかぶりつく。
さっぱりとしたタルタルソースとさっくさくの衣、そして鰺の身が一つになる。
絶品だ。
タルタルソースだけをちょっと食べてみると、これだけでも美味しい。立派にサラダしている。
一部は千切りのキャベツと一緒に貪るように綺麗に食べてしまった。
「はぁー……、って味噌汁、味噌汁」
お弁当を一気に食べてお味噌汁が残ってしまったが、うん。ほうれん草と卵の優しい味噌汁がさらに身体を温めてくれた。
食後の充足感を感じながら、お昼に買うリストをスマホにメモしていく。
「店長が変なこと言うから、へんに気になってるなぁ……」
店での会話を思い出していると、今更気がついた点があった。
「……店長さん、なんで俺の名前知っているんだ?」
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