第25話 キャラ設定
「……はぁぁぁぁ……」
俺は今、リフクエの中。ギルドで腰掛けながらため息をついている。
ゲームを理由に瑞菜さんを急がせて、これは瑞菜さんも予定があったらしくむしろ俺よりも素早く帰宅していたけど、お弁当も凄く美味しくて急ぐのがもったいないーと言いながらも女性にしてはびっくりするほどの速度で平らげて、ナシを摘んで帰っていった。あっという間だった。
「お陰で間に合ったけど……なんか、折れた気がするよなぁ……」
ゲームで言ったら恋愛フラグを粉々にしたような行動だ。
流石にゲームの予定が! と言ったわけではないが、ちょっと予定が、とごまかしてしまったし……
「お店でるまではいい感じだったんだよなー……」
「なにがいい感じなんですかー?」
「うおっ!」
突然声をかけられて椅子ごとひっくり返りそうになってしまった。
「だ、大丈夫?」
ミーナが不思議そうに見つめていた。その隣にはラック、それと小さな女の子が立っていた。
「外で一緒になったんだよー」
「こんばんはラック、そちらは……」
「おお、言っておったヒーラーじゃよ」
「は、はじめまして……ケアって言います。よろしくお願いします」
ラックの袖を掴んで小さな声で挨拶をしてくる。
「かわいいわよねー。そう、可愛いのよ……」
なんかミーナの様子が変だ。
「ワシも大概じゃが、こいつのロールプレイは徹底しているからのー。
深く考えないほうがいいぞミーナ殿」
「ふえぇぇん! ラックがいじめるー><」
「ちょっと、ラック泣いてるじゃないか?」
「全部フリじゃて、そいつ中身いい年したじーさんじゃよ?」
「ふぇ!?」
俺まで変な声が出た。
「そんなこと無いもん! アタチはケア、ピッチピチの15歳だもん!」
ぴっちぴちですか、そうですか。
確かにこれでもかと言うぐらいの幼女アピールしたアバターだ。
「そういうわけでリュウヤ、こんなやつじゃが構わんか?」
「あ、はい。今が大事ですよ、うんうん」
ゲームにリアルの事情を持ち込んではいけない。
俺は色々なことを飲み込むことにした。
「ワーイ! リュウヤおにーちゃんやさしー!
も~ラックなんて嫌いだもんプンプン」
確かにノリが古い……そして痛い……
ラックは慣れているみたいで平気そうだが、ミーナの笑顔が引きつっている。
「と、とりあえずこのメンバーでクエストいくつかやって、行けそうならダンジョンに行きましょう!」
「「「おー!」」」
こうして、俺達のパーティが動き始める。
「ケアの祈りに応え、彼の者の傷を癒やし給え……ヒール!」
「ラック、魔法って詠唱いるの?」
「いらん、あいつの趣味じゃ!」
「は、はははは……」
「やったぁ! お兄ちゃんたちつよーい!
ケアも頑張ったよ! 褒めて褒めて~♪」
「プロだなぁ……」
へんな所に感心してしまうが、冷静に見てケアさんはかなり出来るプレイヤーだ。
HP管理も完璧だし、バフ管理も徹底している。
よくあんな次から次へと呪文を唱えながら立ち回れるものだ……
「あいつはボケ防止とか言って、かなりゲーマーじゃからな
この手のゲームもウル○ィマから様々なものを嗜んでおるそうじゃ……」
ルンルンと口に出しながらスキップで歩いている幼女の中身には、壮大な歴史が隠れているのだな……
「それにしてもケアさんも入ってかなり楽になりましたね!」
「もー、リュウヤおにーちゃんケアさんじゃなくて、ちゃん!」
「け、ケアちゃんのおかげですごく楽になったでござるよ……」
「リュウヤの日本語がゲシュタルト崩壊を起こした!」
ミーナはケアが加入してから笑いっぱなしだ。
「ミーナ今日はごきげんだね、まぁケアちゃん強烈だけど」
「ほんと、今日はおかしーわ。でも、ちょっとね、外でもいいことがあったから浮かれてるのかも」
「それは良かったね!」
「世の中は狭いんだなーって……だいぶ距離がちぢまったかなぁ……そうだといいなぁ……」
「皆の衆、だいたい問題ないことも分かったし。一度街へ戻って念願のダンジョンへ行くかのー?」
「いいですね!」
「キャー、ダンジョンなんてこわーい。リュウヤおにーちゃんケアのこと守ってね♪」
「う、うす!」
俺はまだ距離感をつかめずにいるけどね……
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