第18話 街への道

 村を出て街に向かって俺達は草原を歩いている。

 よく晴れた空、燦々と輝く太陽。

 そういえば、リフクエまだ夜が実装されていない。

 ログイン時間的にずっと夜ばっかになる人とかそういうところへの配慮という話だ。

 話を戻して。

 草原を吹き抜ける風を感じられるかのような風景が360度のパノラマで広がっているのは圧巻の一言だ。


「すっ…………ごい綺麗だね!!」


 めっちゃ貯めてミーナが両手を広げてクルクルと回っている。

 俺のことを茶化すときもあるのに、妙に子供っぽいときもある。

 見ていて退屈しない。


「もうすぐ上り坂が終われば敵が出てくるから注意してねー」


「わかってるー!」


 背中の弓を取り出し装備するミーナ。

 俺も剣と盾を構える。俺もミーナも防具も一新した。

 俺はレザーヘルム、レザープレート、レザーガントレット、レザーブーツ、ラウンドシールド。レザーセットというセット効果でスタミナ減少軽減ってパッシブスキルが着いた。

 ミーナは羽根帽子、鉄の胸当て、革の手袋、レザーブーツだ。

 これだけ揃えると、弱いモンスターからはほとんどダメージを喰らわなくなった。


「お、初めて見る敵がいるよ。仕掛けていい?」


 弓使いのスキルで俺よりも先に敵を発見するミーナ。


「OK。よろしく」


 ミーナは弓を振り絞り放つ。


 Critical!! 


「あ、倒しちゃった」


「凄いね、この距離……」


「あ、スキルでね焦点みたいなの合わせると当たるのがあるからね」


「そういうのもあるんだ……俺のカウンターみたいなものか」


 剣士のスキルカウンターは敵の攻撃がヒットする瞬間に出る枠が自分の枠に重なった瞬間に攻撃すると発動する。自分の枠は盾とかステータスによって太さが変化する。


「ウルフ……狼だね。経験値的に少し強い敵だったんだね」


「頼れるミーナ様におまかせであります」


「接近されたらよろしくね」


「おまかせください姫様」


「あ、姫様っていいね。もうそんな扱い受ける年じゃないしなぁ……あ」


「き、聞かなかったことにしとくよ」


「う~~~~、そうして……恥ずかしい……」


 最近ミーナは油断しているのかリアルの情報をちょこちょこ漏らしている。

 まぁ、わざとやってるネカマ説もずっと持っておくけど、子供じゃない女性の可能性が高いのかもしれないなぁという淡い期待もある。

 結構人妻はネトゲにハマるというのはインターネットで見たことがある。

 もしかしたら俺より遥かに年上の女性の可能性だってあるわけだ。

 中身がどんな人でも、俺はミーナのことを友だちと思っているし、仲間だと思っている。


「あ! 外しちゃった! 来るよ!」


 ミーナは短剣に持ち替える。

 長弓は近接はまず無理だ。相手が一人なら俺が受け持つけど、向かってくる敵はウルフが3匹だ。

 駆けてくる敵を十分に引きつけて……


「アピール!!」


 ガンガンと盾を叩いて敵の注意を引きつける。

 上手く3匹ともこっちを狙ってきた。

 

「ガードスタイル!」


 攻撃頻度を半分にして防御を上げるスキルだ。

 上手くターゲットを引き受けたのをみてミーナが弓を装備し直す。

 俺に集中している攻撃を耐えながら、ミーナが一匹づつ敵を打ち倒してくれる。

 

「ダブルショット!」


 これでもう後一匹だ。ちょうどガードスタイルも切れるから……


「シールドアタック! からのパワースラッシュ!」


 シールドアタックで気絶状態になったウルフに強撃を加える。

 ボンッと敵が消えて戦闘終了だ。


「おお、今の戦闘綺麗だったよね!」


 俺が嬉しそうに振り返るとミーナがポーションを使ってくれている。


「ありがとー」


「いえいえ、こちらこそ。いつもごめんね……」


「いやいや、お陰で楽に戦えるし、今みたいにバッチリ行くと楽しいじゃん!」


「そう言ってもらえると、嬉しいな」


 エヘヘと嬉しそうに笑顔になるミーナ。

 なかなかいいチームになってきている感じがする。


「そう言えば、魔法ってどうなんだろうね?」


「ギルドで使った時は、ちょっと使いづらそうだったよね……」


「そうなんだよね、あんまり周り見ても使ってる人いないよね……」


 高台には俺たち以外にもパーティが居る。依頼をこなしたりレベリングしたりしている人もいるんだろう。

 でも、その中に魔法で戦っている人は見当たらない。

 剣士のソロが多くて、パーティだと剣士、弓、回復って組み合わせが多かった。


「さー、もうすぐ下りになるぞー」


「ホントだ……うっわー! リュウヤ! 早く来て! すごい眺め!」


 ミーナに言われて急いで最後の丘に登ると、そこは一番高い場所に当たるらしく、眼下に街を含める草原、森などが一望できる場所だった。


「おおおお、あんなに遠くまでしっかりと見える……綺麗だね……」


「これはすごい景色だよ! なんかこのあたり敵が少ないなーと思ったら、景色を楽しむためなのかもね……」


 ミーナは感動している。

 俺も、ゲームの中ってことを忘れて目の前に広がるファンタジーな景色に感動していた。


「ん? ……リュウヤ、あそこ……」


「敵……多いね、プレイヤーは一人か、厳しそうだね……」


 少し下ったところで戦闘している人がいる。敵が多く、一人で戦うにはつらそうだ、そしてもう一点目を引くことがある。


「魔法使いだねあの人、聞いて必要なら助けようか!」


 俺はミーナに提案する。


「うん!」


 すぐにコールする。助力要請だ。

 相手も厳しかったらしくすぐに承認される。


「よし、ミーナ援護して、俺は突っ込む!」


 承認されると同時に俺は駆け出している。

 戦闘に入ったので敵の正体がわかる。

 スモールベアとウルフが4体、結構厳しい戦いになりそうだ。


 

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