リバーシ・ゲーム

丸ニカタバミ

プロローグ

 五月の満月の日。

 「今日は月がきれいだなぁ」と思いながら「月がきれいですね」なんて詩的で素敵な言い回しを言う相手が高校生にもなっていないことにショックを受けてふて寝した日だった。

 家のベッドで間違いなく寝ていたはずなのに、気がつけばよく買い物に来るスーパーマーケットの屋上駐車場にいた。

 その屋上の貯水タンクの上に二人座っている。

 そのうちの一人が急に立ち上がった。

「ささ、諸君よく集まってくれました。初めまして私はゲームマスター。端的に言うとゲームの運営責任者です。そして、私のことは”ゲームマスター”でも”マーちゃん”でもかまわないわ」

 突然、フランクに話し始めた赤髪の女性に全員が唖然としていた。

「うーん…思ったよりも反応が悪いなあ。もう少し騒然とするか『マーちゃんってなんだよ』ぐらいのツッコミは来ると思ったのに。まあ……いいや」

 ゲームマスターと名乗る女性はなぜか納得した様子で話を続ける。

「まあ、突然のことだろうからびっくりしていまいち状況がつかめないのも仕方がないし、夜はしっかりと寝ないとお肌にも悪いからサクッと済ませようか」

 そういうと、ゲームマスターは指を鳴らした。

 すると、すぐにSF映画に出てきそうな半透明のスクリーンを展開する。

「じゃあ、説明するわ。あなたたち8人にはこれから『リバーシ・ゲーム』という現実干渉型のゲームに参加してもらいます。ルールは簡単、表の自分と裏の自分との勝負をして勝ったほうがこの先ずっとその自分が表となって過ごしてもらいます。例えば、表向きにはとてもノリが良くて人当たりのいい女子がいたとします。しかし、彼女の裏の顔はとても腹黒く内心では『このブスが』とか『あの服マジだせぇ』とか思っている人です。この表の自分と裏の自分が勝負するというのがこのゲームです。そして、もし裏の腹黒女子が勝った場合、その子は建前とかお構いなしにズバズバ本音を言う子になるというわけです」

 ゲームマスターは全員の顔を見回してから「ちょっと長くなったけどわかったかな?」と付け足した。

「まあ、細かい話は明日にでも、マーリンに話してもらえればいいか。最後に一言、青春真盛りの諸君。青春は己との闘いである。己をかけて戦え。じゃあ、解散!」

 そういうと、ゲームマスターは手をパンッと鳴らした。


 こんなラフな感じで僕たちの自分自身をかけたゲームが幕を開けた。

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