ゼロから始まるバリスタな日常

高月夢叶

第1話 [ゼロからのスタート]

春、それは新しいことが始まりそうなワクワクする予感のする季節。

今、本当ならワクワクが止まらないはずなのに嫌なドキドキが止まらない。

今、古風感のある不思議な雰囲気のする喫茶店の前で立ち止まる一人の女の子がいた

ボブショートの髪をおもむろにに指でクルクル触り、意を決したように扉を開けて中へと入る。純喫茶ビューティフルレイン。今、若者の達の間で巷で話題の喫茶店なのだ。

なんでも願いを叶えてくれるとゆうのがこの店の売りで未だに人の群れが絶えない。


私、小野田奈緒子は、この春から社会人となった。正確にはなるはずだった。

今、その輝かしい社会人生活が音を立てて崩れ去ろうとしていた。店内を軽く見渡し

場所を定めると、カウンター席の中央にはにとスンと座る。

目の前でマスターが笑顔で出迎えてくれる。幾つものテーブル席が設置されているこの店内でのカウンター席にと腰を下ろす。 カウンター席は唯一、目の前で、バリスタがコーヒーを淹れてくれる様子を間近で見ることができる席となっていて気分はラーメン屋に訪れたお客さんだった。「いらっしゃい。今日は、一人?」マスターが顔を覗かせて訊いてくる。「ええ。ちょっと、あって。」


どうやら、以前にこの喫茶店に高校の友達と訪れたことを覚えてくれていたみたいだ。

「どうかした?今日は、一人?長めの春休みかな……」何故か申し訳なさそうに伺ってくる。


まるで割れ物にでも触るように。「とにかく、高校くらい出ておいたほうがいいよ、自分の為にね。」と。「えっ!?私、高校生じゃないですからね。」すかさず反論する。

「じゃあ、中学生?」「いや、違いますから。社会人ですから!」否定する全力で。「そ、そうなんだ…」にわかに信じがたい顔で言葉を返すマスター。それもそのはず。

目の前でカウンター席に座る彼女は、高校卒業をした学生にしては童顔な顔つきであどけなさが残るる女の子で、この春から高校に入学すると言われても可笑しくないそんな子であったのだから。「そっかそっか。じゃあ、私達の仲間入りになるかもしれないんだね。」

「そう、ですね……」言いはしないけど社会人でもないとゆう。

高校は卒業したものの在学中の就活の成果は0で現在は無職。宛を探してここに辿り着いたのだから。

「うーん。」「あっ、そうだ。ブレンドコーヒーでいいかな。」

あ、はい。よろしくお願いします。」メニューを悩んでいるかと勘違いしたマスターは気を利かしてくれる。目の前のでマスターがコーヒーを淹れる準備を始める。コーヒー豆をハンドミルでリズミカルにゆっくりと挽いていく。

コーヒーの芳香な香りと共にコーヒーが出来上がっていく様子を楽しむ側でいるのも悪くない。こうしていると一杯のコーヒーが自分の為だけに淹れて貰っている感覚になって軽い大様気分に浸ってしまう。目の前でネルドリップにより抽出されたコーヒーが出されてくる。「冷めないうちにどうぞ。」マスターが優しく差し出す。それを私は、ゆっくりと口へと運ぶ。するとほのかな苦味が口の中へと広がり優しい酸味コーヒーの味を楽しみそして、喉を突き抜ける衝撃のコク。やっぱりこれだと思った。

「良かった。口に合ったみたいだね。」マスターはニコリと微笑む。「しまった。顔に出ていた?」にやけてしまった緩んだ口元を元に戻そうとする。と、不意にマスターが黒のエプロンを外して、よそ行きの恰好に支度を始める。

「えっ!?どうしたんですか?」慌ててマスターに尋ねる。「ごめん。これから、用事があるから店番を頼めるかな。」頭の前で掌を縦にしてチョップの形を作り申し訳なさそうに頭を下げる。

「えっ…そんな、せっしょうな!」しまった。つい、京都弁が出てしまった。ではなく、まずい事態になってしまった。

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ゼロから始まるバリスタな日常 高月夢叶 @takatuki

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