漫画を描いてたらカッパに脅された
おっぱな
第1話
「おい、お前、何サボってるんだ? 尻子玉抜いちゃうよ?」
「ウヒィ! す、すみません!」
俺は今、人生最大の困難にぶち当たっている。
それは、突然、現れた河童に漫画を描けと脅されているからだ。
俺はどんなに辛くても漫画を描き続けてもう辞めたいとか漫画なんて描かなきゃ良かったと考えた事もなかったのだが、この日ばかりは漫画を描いていた事を死ぬ程後悔した。
「と、とりあえず、1枚目完成しました」
「おう。見せろ... ...。おい!」
やばい! 殺される!
「お前、うめぇじゃねぇか。才能あるぜ」
まさかの高評価。
担当編集にも言われた事ないのにまさか河童に褒められるとは思わなかった。
「あ、ありがとうございます」
「おう。とりあえず、キュウリでも食えや。頭使うとキュウリ食べたくなるだろ?」
河童に飴とムチ使われた。
いや、キュウリは甘くないけど。
ってか、チョコレートと勘違いしてません??
「あ... ...。甘え... ...」
まさかのキュウリの糖分の豊富さに俺は涙を流す。
それを見た河童は上機嫌でもう一本くれた。
何故、河童が俺の部屋にいるのか?
それは俺にも不明だ。
バイトから帰宅すると当然のように緑色の物体がそこにいたのだ。
そして、俺に「河童が活躍する漫画描け」
と自己紹介もなしに言われた。
そりゃ、突然、家に現れた全身緑色のビショビショ生物にそう言われたら従うしかない。
俺は抵抗する事なく机に向かい、現在に至る。
「俺たち河童は沼とか川とかでしか生きられないと思われてるだろ?」
いや、そもそも、河童についてそこまで深く考えてる奴いないよ。
しかし、そんな屁のような事を口走って鋭利な刃物で突かれたらたまったもんじゃない。
俺は宇宙で一番空気が読める男の真価を発揮し、ため息交じりの相槌を打つ。
「はぁ」
「だからよ、河童が海に出る冒険譚がいいと思ってよ。笑いあり涙ありのハートフルコメディに仕上げてくれ」
この河童、まさかのコメディ好きだった。
あれかな?
オッカナイ人が実は犬好きとかそんなニュアンスなのかな?
「あ、あぁ、じゃあ、ちょうど良い作品がありますよ。それを少しイジる感じでいいんじゃないですかね?」
「ほう。それはどんな内容だ?」
「えぇ。主人公の少年がゾンビーズという秘宝を手に入れる為に海賊になってなんやかんややるって内容です。ゾンビーズって知りません? 今、めっちゃ流行ってるんですよ?」
「知らんな。海賊物の漫画はフルヤヘッドロロしか思いつかない」
いや、そっち知ってて何でゾンビーズ知らないんだよ。
「ま、まぁ、とりあえず、河童が海賊になって伝説の秘宝を手に入れるって内容にしましょう! 絶対、面白いですよ!」
「ほう。まぁ、描いてみろ」
この河童には早く帰ってもらいたい。
オリジナルで勝負するよりも既存の売れている作品をアレンジする方が簡単だし、内容も保証出来る。
自信と勢いで2枚目を描き、ファサっと天に掲げる。
「はい! 2枚目出来ました!」
「早いな」
感想を聞く前に三枚目に取りかかる。
作家というものはランナーズハイ的な状態を感じることがあるがまさか、この極限状態で味わうことになるとは... ...。
「___さ、三枚目!」
そこから俺は高速で描き続け、全20ページを一夜で描き終わった。
こんなに早く描く才能が自分にあったとは......。
「ど、どうでしょうか?」
「うん。流石、俺が見込んだ漫画家だ。とても、面白い」
ほっ。
これで、やっと帰ってくれるぞ。
「よし、お前、俺たちの世界に来て漫画描け」
「えー!!!! いやいやいや! 無理ですよ!」
「あん? てめぇみてぇなポンチ絵作家が文句でもあんのかええ?」
すごい剣幕や。
こりゃ、絶対、何人か殺してる目やで。
「いやいや! そういう訳では! ほら、そんな名誉な事、僕なんかの底辺作家がお受けしてよろしいのかなぁって... ...」
河童は自身の皿をパシン! と勢い良く叩く。
あ... ...。それ、そんなナチュラルに叩いていいもんなんだ... ...。
「___気に入った! こんなおもしれぇ作品を描ける奴がこんなに謙虚だとわ! 遠慮するな! 金や住む所は俺が面倒みてやる!」
何故か上機嫌になる河童。
そして、俺は嫌々ながら河童の世界とやらに連れて行かれ、書いた作品がベストセラーとなり小綺麗な河童の嫁を貰って幸せな人生を送れました。
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