15センチメートル・リフレイン
たれねこ
1st refrain
僕とキミとのことを思い返すといつも15センチに行き当たる。そして、その15センチが僕とキミの話を
僕がキミと初めて出会ったのは中学校の入学式の日だった。
玄関口に貼り出されたクラス分けの
僕は自分の席に座り、筆記用具以外何も入っていない新品の
キミは犬のシルエットのイラストが描かれたブックカバーをした文庫本に目を落としていた。時折、ページをめくったり、長い
僕はその姿に目を奪われ、前の席の女の子はどんな女の子なのだろうかと興味を持った。できることなら仲良くなりたいと思ったが、席が近いという地の利を
次の日、LHRで委員決めがあった。学級委員長には立候補者がおらず、お
「先生ー! もう一人は俺がやりまーす。やりたいでーす」
と、誰かに取られる前に勢いよく手を挙げる。
「渡井……か。その素晴らしいやる気を学級委員長の時に見せてくれたら、先生はお前のことを出来るやつだと評価したんだがな」
と、名畑が小言を言い、クラスはどっと
LHRが終わり、休憩時間に入るとキミは椅子を横にして、僕と
「えっと、渡井くん……だっけ? 同じ委員だし、何かあったときのために連絡取れたほうがいいし、アドレス交換しませんか?」
キミは緊張した面持ちで制服のブレザーのポケットから携帯電話を取り出し提案してくる。それは、僕にとっては願ってもない提案で、
「もちろん! こっちからお願いしたいくらいだよ」
と、笑顔で返す。僕も制服のズボンのポケットから携帯電話を取り出し、赤外線通信を使いアドレスを交換する。その時の携帯電話同士の距離は15センチ――。
アドレス交換を終え、ふとキミの方に視線を戻すと、後ろに見えるキミの机の中に昨日と同じブックカバーの文庫本が見えた。そして、図書委員で――、
「ねえ、持田さんって、本が好きなの?」
と、僕は気がつくとありがちな質問をしていた。キミは一瞬驚いたような顔を浮かべていたが、小さく
「うん。好きだよ。運動とか体動かしたりはあんまり得意じゃないから、小さい頃からずっと読書ばっかりでね――」
と、キミは話し出す。本を読むのが楽しいから始まり、面白い本を見つけた時の感動はすごいと語られ、しまいには、本のインクの
僕はそれを
キミはチャイムの音に固まり、熱くなっていたことに気付き顔を赤らめる。
「なんか私のことばっかりでごめんね。話……つまらなかったよね?」
と、申し訳なさそうな表情を浮かべる。
「ううん。持田さんの話、聞いてるの楽しかったから気にしなくていいよ。よかったら今度、持田さんのオススメの本教えてよ?」
僕のその言葉に、キミは初めて僕に笑顔を向け、「うんっ!」と頷いた。
僕はキミのその笑顔に一瞬で恋に落ちた――。
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