004
見知らぬ美女たちの軍団と、それを束ねる王様……!
なんでか知らんが、誰もが俺に注目し……俺の誕生日を祝福している……!?
まるで、アマゾネスの国の闘技場に迷い込んでしまったような、異様すぎる光景……!
「こ……これは……っ!? これはなんなんだよぉっ!?」
俺は、屋上の中心で、わけもわからず叫んでしまう。
正面の飛行船……玉座に座っていた男の前に、ひとりの水着女がしなだれかかった。
叶姉妹と
女が、王冠を頂く男の顔をギュッと抱きしめると……乳の上にアゴが乗り、髭の口元にちょうどマイクの頭部が来た。
あの王様みたいな男……女の乳を、マイクスタンド兼アゴ置きにしてやがる……!
そのうらやまし過ぎる口元が、ゆっくりと動く。
「……三十郎……我が息子よ、十六歳の誕生日、おめでとう」
四方の飛行船に備え付けられたスピーカーから、重々しい声が響いた。
「オヤジ……!? オヤジかっ……!?」
名前を呼ばれた俺は、今さらながらに玉座の人物に目を凝らす。
しかし深く被った王冠と髭、そしてオッパイに隠れているので顔はよくわからない。
でも、たとえ邪魔するものがなかったとしても……俺はオヤジの顔をおぼろげにしか覚えてねぇので、たいして役に立たなかっただろう。
それでもオヤジだと言ってのけたのは、屋上に呼び出したという情報からカマをかけただけだ。
オヤジらしきコスプレ男は続ける。
「我が息子の記念すべき日、その贈り物だ……足元の箱を開けるがいい」
その言葉に、俺はズボンのチャックが開いているぞ、と言われてしまったくらいの勢いで頭を垂れる。
チャックは閉まっていたが、そのさらに下……ほぼ真下といっていいくらいの位置にスネくらいの高さの台座があった。
ご本尊でも乗せられそうな豪華な台座には、リボンと包装紙がかけられた工具箱くらいの大きさの箱が置かれている。
まわりのインパクトが凄すぎて、足元まで注意が及ばなかった……言われるまでぜんぜん気づかなかった。
だが、そんなことは今どうでもいい。
「プレゼントなんていらねぇよ! 説明しろ! これはいったい何なんだよっ!?」
俺は箱を蹴飛ばさんばかりの勢いで、オヤジにくってかかる。
「否、まずは贈り物だ。封を解け、三十郎。そうすれば、なんなりと答えてやろう」
有無を言わせぬ一言。
長いこと会話もなかったヤツに、今さらオヤジ面で命令されるのはシャクだったが……俺がプレゼントを見るまでは何も話す気がないようだ。
「くっ……! ったく、何だってんだよいったい……!?」
俺は渋々しゃがみこみ、小箱に手をかける。ロクでもねぇモンだったら、屋上から投げ捨ててやるつもりで。
悪代官が帯を引くようにリボンを乱暴に取り去り、着物を裂くように包みを解く。
ビリビリになった包装紙を放り捨てると、中からファンタジーロールプレイングゲームに出てくるような木の宝箱、それを八分の一スケールにしたようなやつが出てきた。
「なんだよ、もったいつけやがって……さっさと中身を出しやがれ!」
イライラと焦りが募り、つい悪態が口をついて出る。
『ファイナルメンテナンス』の中の俺なら宝箱を開ける前は罠が仕掛けられていないかスキルで調べるのだが、現実の俺は無防備に箱の蓋をむんずと掴んで、一気にパカッと引き開けていた。
「ばあああああーーーーーーーーーーっ!」
刹那、舌をベロベロと出した人形が、大声とともに飛び出す。
古典的、そして典型的なビックリ箱ってやつだ。
いつもなら引っかかることもなく、それにたとえ引っかかったとしてもさしたる驚きもない他愛ないモノだったが、
「うわああああああああああああっ!?」
しかし今の俺は……自分でも情けなくなるような悲鳴をあげ、みっともなく尻もちをついてしまっていた。
異常な状況と極限の精神状態で、ただのビックリ箱がミミックくらいに見えちまったんだ。
有り体に言うと、まんまと引っかかって、メチャクチャビックリしてしまった。
大きなつづらを開けた、欲張りじいさんばりのリアクションだった。
「おおっ、見たか! あの驚きようを! さすが我が息子だ!」
子供のように喜ぶオヤジの声を合図として、全方位から失笑が巻き起こった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます