第三章 Kir
気がつくとグラスの横にチョコレートが置かれている。
いつの間にか笑い止んだマスターが出してくれたものだろう。
「これはどこのチョコレートですか?」
ここは通しで聞いたことのない季節物の果物や老舗のお菓子を出してくれる、きっとこのチョコレートもその類のものかと思い聞いて見たら
「市販のチョコレートですよ」
と肩透かしの答えで、さっき落とした肩をさらに落とした。
「次はキールなどどうですか?」
残り少しになったグラスを見てマスターが尋ねてきた。
「それはどんなお酒ですか?」
名前は聞いたことあるような気がするがどういったものかは知らない。
「白ワインベースのカクテルで最高のめぐり逢いという意味があるんでお客さんと彼女の出会いを記念してどうかと」
なるほど、見た目に反してロマンチストのマスターが考えそうなことだ。いや、さっきのことを思うとただ単におちょくっているだけかもしれない。
特に次飲みたいものがあったわけでもないのでそれを頼んでみることにした。
「彼女はよく来るんですか?」
チョコレートを齧りつつきいてみた。
「いや、今日が初めてですよ。お客さんが来るまでつまらそうに飲んでいたんですけどね、それこそ最高のめぐり逢わせなんじゃないかと」
おちょくっていただけではないらしい。
そんな話をしているうちにキールが出された、まずは一口。
口の中にワインの酸味とほのかな甘みが広がる。
「好みの味だけどもうちょっとアルコール感が欲しいかなー」
「やっぱりラムですか?」
「そうですね、やっぱりラムですかね〜」
と見つめ合いクスクスと2人で笑いあった。
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