巨人再臨
高く透き通った青空に、オレンジ色の爆光が弾けて消える。
スターフィッシュの放つ粒子砲。
その光に貫かれ、最新鋭の
「グラスパー1よりグラスパー2!久富!まだいるか!?」
粒子砲の雨を掻い潜りながら、地球防衛軍、”
『…ハッ!…真下に…おります!隊…長っ!』
耳障りなノイズにまみれながら、通信機の向こうから返事が返って来た。
大竹が風防の下を覗けば、返事の主、”
『酷い有り様ですね隊長…!一時間も経っていないのに…残ったのが自分達三機だけとは…、…っ!?』
途端に、大竹の視界左端で、ぱっと光の華が咲いた。
久富機とは別の僚機が粒子砲の直撃を受けていた。
機体はくの字にひしゃげ、NT-1製の装甲がぼこぼこと泡立ち、一拍置いて、爆散する。
「………!」
その光景を、大竹はただ口を真一文字に食い縛って眺めていた。
映画やドラマなら、此処で撃墜されたパイロットの名を哀しげに絶叫すればドラマティックなシーンになるだろう。
だが、爆炎の中から光の球に包まれた阿呆面のパイロットが飛び出て来るのを見れば、叫ぶ気も失せるというものだ。
パイロットは恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべながら空中をぷかぷかと浮いている。
「馬鹿野郎、飛行機乗りが撃墜されてへらへらすんない。」と、大竹は溜息を一つ。
やがて、一機のスターフィッシュがパイロットへと近付き、彼の身体を光の粒子へと変え、機体内へと吸い込んでしまった。
『…一昨日全滅したガルーダ隊みたいに、ルーリアの城に転送された様ですね』
「…ちょっと羨ましいな…おっと、不謹慎不謹慎」
『最低でも一週間は、食べ放題、寝放題の捕虜生活らしいですからね。隊長、ご存知ですか?ルーリアの捕虜収容所って帝都ホテル以上に豪華みたいですよ?おまけに可愛いルーリア人の侍女付き』
「帝都ホテルなぞ泊まった事が無いから、想像しようが無いな」
『我々も早々に撃墜されて、地球を眺めながら
久富の皮肉めいた提案に大竹は「馬鹿は休み休み言え」と応えた。
最近、欧州あたりではルーリアの捕虜になりたくて態と撃墜される軍人が続出しているらしい。
(情けのない話だ…)
『グラスパー隊!何を無駄話をしているか!?攻撃を続行せよ!攻撃を続行せよ!!』
基地司令室で踏ん反り返っているであろう司令官からの、苛立ちを孕んだ声がコクピットに響く。
でっぷりと肥えた司令官が唾を飛ばしてがなり立てている様を想像し、大竹は眉をひそめた。
(…全く、馬鹿の一つ覚えみたいに…椅子をケツで磨くしか能の無いお偉い様が。言うだけなら御立派様さ)
大竹はそう心中で悪態を吐きつつ、前方を飛ぶスターフィッシュをロックオンする。
「グラスパー1、
大竹は操縦桿のセーフティーカバーを開き、中のボタンを押す。
サンダーウイングの主翼に懸架された空対空ミサイルが切り離され、
!!!!!!
ミサイルがスターフィッシュへと直撃し、大爆発を起こした。
澄んだ空気を焼きながら、空に紅蓮の泡が膨れ上がる。
爆発の衝撃波にサンダーウイングの装甲がびりびりと震えた。
「やったか!?」
思わずそう口にしてしまった事を、大竹は心底後悔する。
(娘が、
案の定、爆炎の中からスターフィッシュが飛び出して来た。
ミサイルの爆発点とスターフィッシュの飛行速度から計算して、先程自分がロックした機体だと、大竹は確信した。
無傷。
鋼鉄すら貫通する程の運動エネルギーの衝撃と、数万度にも及ぶ高熱を受けて尚、無傷。
「糞っ!一体どんな技術を使えば、あんな鉄壁が手に入るんだ!?」
『大阪では
「倒したんじゃない!たこ焼き屋の看板につまづいて倒れただけだ!アレは!」
大竹は即座に機体を反転させた。
「埒が開かない!一度体勢を立て直す!」
『御供します!』
久富の機体も、手近のスターフィッシュに機関砲を浴びせながらくるりと旋回、大竹機の後方へ付く。
並走する二機のサンダーウイングに、スターフィッシュ達はV字に陣形を組み、ミサイルの返礼とばかりに粒子砲を照射。
光の雨を大竹と久富はバレルロールを用いて回避。しかし、粒子砲が久富機をかすめ、主翼の先端数センチを溶かした。
『ぐうっ!?流石に…捌ききれない…!』
「諦めるな久富!この程度…娘の『お父さんクサイ!』『お父さんジャマ!』の集中砲火に比べれば…屁でもない!」
『隊長…また娘さんと喧嘩したのですか!?』
「喧嘩どころか…此処一月は口すらきいてくれない!」
大竹は息を呑んだ。
進行方向の雲の中に、三機のスターフィッシュが待ち構えていたのだ。
『あ、ぁ…!?』と、久富の諦めにも似た声が通信機から漏れてきた。
こちらは二機。ミサイルの残弾はゼロ。機関砲は雀の涙。燃料も心許ない。
向こうはざっと十機以上。無機物のみを破壊する意味不明な粒子砲を湯水の如く撃ちまくり、余裕綽々に飛び回る。
前方のスターフィッシュ達の先端部に、粒子が集束してゆく。
(畜生…!)
大竹は中指を立てて見せた。
大人気ないが、仕方がない。
それが、地球のあらゆる兵器を無効化する異星人に対しての、せめてもの反抗であった。
(夕実…優花…っ!)
愛する妻子の名を心の中で呟きながら、大竹は『その時』を待つ。
自分が機体ごと粒子砲に貫かれる時を。
自分が捕虜となって、ルーリアの城へ連れて行かれる時を。
…………。
………。
!!!!!!!
「は…!?」
その光景に、大竹は目を疑った。
目前のスターフィッシュ、その内一機が突如墜落し、爆発したのだ。
「な、なんだ!?何が起きた!?」
!!!
「またか!?」
また一機、スターフィッシュが砕け散った。
見えた。今度ははっきりと見えた。
スターフィッシュの直上から光の弾丸が雨の如く降り注ぎ、その無敵の装甲をまるで古い障子紙の様に破り穿ったのだ。
『隊長!隊長!』と、息の荒い久富の声。
「今度は何だ!?」
『我々の真上に機影!識別信号不明!数は…一!』
久富はごくりと息を呑んで、
『何かが!物凄いスピードで!来ます!』
「ルーリアか!?」
レーダーを確認するより先に、大竹は上空を見上げる。
「何だ…アレは!?」
遮光機能の効いた風防の外、群青の遥か彼方。
太陽の光の中に隠れる様に、『何か』の影があった。
ヒトだ。
ヒトの影だ。
風を切り裂く音を立てて、影が舞い降りて来る。
その姿を、大竹ははっきりと確認した。
「き、巨人!?」
巨人。
大竹にはそうとしか形容しようが無かった。
大きさはサンダーウイングと同じくらい。白と青に彩られた無機質で武骨な体躯の巨人が、翡翠色の双眼を煌めかせ、空を颯爽と舞っている。
「き、機械の巨人!?」
『い、いわゆる…巨大ロボットってヤツでじゃないですか…?』
「ロボットって…子供のオモチャじゃあるまいし…!?」
『しかし…二つ眼に二本角…あのカラーリング…、あんな趣味的なデザイン…ロボットとしか…!』
あの巨人は何なのだ?
大竹と久富。二人の軍人は頭の中をハテナマークでいっぱいにしながら巨人を目で追った。
巨人は、サンダーウイングには目もくれず、スターフィッシュの編隊へと突入し、隊列を搔き乱していく。
そして、頭部左右に設けられた銃口らしき穴から光の弾丸をスターフィッシュ達目掛け乱射し始めた。
『ルーリアを攻撃している…?じゃあアレは…味方…なのですか?』
「…何と!?」
久富の疑問に、大竹は反応する事が出来なかった。
大竹は驚愕した。
巨人がこちらを見ていたからだ。
翡翠色の眼でサンダーウイングを見遣り、小さく頷いたように見えたのだ。
まるで、『逃げろ』『ここは任せろ』と言っているようだった。
巨人が機械ならば、AIで制御されているのか。それとも、何処からか遠隔操作されているのか。
まさか、子供騙しのフィクションの様に、何者かが直接乗り込んで操縦しているのか。そんな筈はない。
「…………」
やがて、サンダーウイングの警告機能が、自機の燃料が十パーセントを下回った事を告げる。
「…久富…撤退するぞ…!」
『は…?隊長…?ルーリアは…?あの巨人は…?』
「…撤退だ、久富三等空尉。お前の機体も、燃料が少ない筈だ。…それに…この状況、今の俺達に何が出来る?」
久富はしばらく黙り込んだ後、
『……確かに……』
渋々、といった声色でそう応えた。
猪苗代上空を大きく旋回しながら、二機のサンダーウイングは戦域を離脱してゆく。
最早、スターフィッシュは去り行く大竹達を相手にしなかった。
「………」
スターフィッシュと戦う巨人を大竹は静かに眺めて。
そして、そっと敬礼をしたのだった。
きっと、巨人には見えないだろう。
果たして、巨人は味方なのか、はたまた敵なのか、さっぱり分からない。
だが。だがしかし。
「…カッコ良過ぎるぞ…っ!」
それでも、大竹はその巨人へ、敬礼がしたくてしょうがなくなってしまった。
異星兵器群へ単機で立ち向かう機械の巨人。
その姿に、胸の奥が熱く沸き立つ衝動を、大竹は抱かずにはいられなかったのだ。
****
「はあぁぁぁぁっ!!」
自らを鼓舞させるように叫んで、時緒はエクスレイガを急降下させる。
強烈な慣性がジャージ姿の時緒を縛った。
「よし!軍人さんは逃げてくれた!バルカン…ッ!」
エクスレイガの頭部銃口から光弾の雨あられが低いモーター音と共にばら撒かれ、スターフィッシュ達を穿っていく。
蜂の巣となったスターフィッシュ達。
ある機体は暫く飛んだ後爆散し、またある機体は未だ万全な機体を巻き添えにして燃え散った。
「よし…っ!」
額に汗を浮かべながらガッツポーズを取る時緒。
油断は禁物。
そう自分に言い聞かせながら、次の標的を狙う。
「リボルヴァー!」
【ルリアリウムリボルヴァー、展開】
エクスレイガの左大腿部の装甲が左右に割れ、巨大な拳銃が現れた。
拳銃を手に取り、エクスレイガは粒子砲を撃ちながら突撃してくるスターフィッシュへと構える。
「
!!
発砲。
盛大な砲撃音と共に拳銃の銃口から光弾が放たれ、スターフィッシュへと命中する。
その威力は頭部バルカンとは比べ物にならず、一撃でスターフィッシュを粉々に破壊してしまった。
!!
!!
!!
立て続けにリボルヴァーを発砲する時緒。
確かにリボルヴァーの威力は目を見張るものだったが、反動が大きく、発砲するたびに滞空しているエクスレイガの駆体は大きく仰け反り、上手く当たらない。
(射撃なんてやった事無いから…!せめて…
時緒は顔をしかめ、自身の不出来さに舌打ちを一つ。
銃口を赤熱化させたリボルヴァーを大腿部内に再格納すると、時緒はエクスレイガを空中で翻えさせる。
残ったスターフィッシュは、あと四機。
「コレなら心得はあるのさ!ブレード!」
【ルリアリウムブレード、
展開された肩部装甲から柄を抜き放ち、それを掌に接続、翡翠の光剣を生成。背中から光の羽を散華させ、加速したエクスレイガは瞬時に敵へと肉薄。
粒子砲を避け、時には刀身で受け流しながらエクスレイガは、時緒は剣を構え、振り下ろす。
光か疾る。剣が光となって疾る。
刃が煌めく度にスターフィッシュが斬り割れ、無残な残骸となって爆発。
時緒はただ前を睨み、エクスレイガを駆る。剣を疾らせる。
自身が猪苗代を護るのだ。
自分が芽依子達の力となるのだ。刀となるのだ。
心音のリズムに合わせるようにそう唱えながら、時緒は最後の一機となったスターフィッシュを、
「いあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
真っ二つに斬断した。
****
「はあ…!はあ…っ!」
スターフィッシュを全て斬り伏せて見せたエクスレイガは、ゆっくりと猪苗代町へと降り立つ。
「はあ…は…、良かった…何処も…壊れてない…!」
疲労か、先程から波の様に押し寄せる倦怠感を無理矢理振り払いながら、時緒は猪苗代町を見渡した。
避難のため、出歩いている人は確認出来ないが、それ以外はいつもののどかな
安堵の息を吐く時緒。
やった。やりきった。
自分はエクスレイガを、一人で乗りこなして見せた。
ルーリアと戦い、二度目の勝利を掴んで見せたのだ。
これで母も、芽依子も、認めてくれるだろう。
(帰ろう…!皆の所へ!きっと母さんや芽依子さん…最初は怒るだろうな…、でも!この戦果を見ればきっと喜んでくれるぞ!芽依子さんも、僕を信じてくれる!)
そう確信した時緒は、瞳を輝かせ、再びエクスレイガを飛翔させようと操縦桿に力を込めた。
『くそ!やっと繋がった!時緒!時緒ぉ!おい!馬鹿息子!!』
突如、時緒の視界端に立体モニターが浮かび上がる。
モニター内には鼻の頭を赤く擦りむいた真理子が映っていた。
時緒は一瞬ぎょっとしたが、意を決し、胸を張って見せた。
「どうだい母さん!任務完了さ!ルーリアの兵器は全部僕が倒し…、」
『バカ野郎!!今すぐ!今すぐソコから逃げろ!!』
「…はい?」
切羽詰まった表情の母の言葉に時緒は首を傾げた。
はて。母は何を言っているのか。何から逃げなければならないのか。
ルーリアの機動兵器は全て破壊したというのに。
『良く聞け馬鹿!たった今、衛星軌道上にあるルーリアの城から射出物が確認された!真っ直ぐ…もの凄えスピードで猪苗代に落ちてきてる!!お前の所に落ちてきてんだよ!!』
「射出物?敵?ふふん!だったらそんな物、僕とエクスレイガで一網打じ、」
『良く聞けつったろうが馬鹿!数は一つだが反応がデカい!スターフィッシュじゃねえ!お前もミーチューブとかで見たろ!?防衛軍が大敗した月面基地奪還作戦!北京攻防戦!映ってたヤツ!』
「…え?…まさか…?」
口をぽかんと空ける時緒を睨みつけ、真理子は叫ぶ。
『落ちてきてるのは…ルーリアの…有人機だ!!逃げろ!!お前じゃ…、”ルリアリウムに慣れきってない”今のお前じゃ武が悪過ぎる!!エクスを飛ばして逃げろ!!』
「……あ……」
真理子に応えること無く、時緒は空を見上げた。
そして、小さく声をあげてしまった。
青空高く、濃い群青の中に、小さな光が見えたのだ。
流れ星か。
違う。
光はぐんぐんと大きくなっていく。
膨らんでいるのではない。
近づいている。地表へ向けて落下しているのだ。
ざわり。
時緒の背中を悪寒が駆け抜けた。
ジェット音を立てて、空を縦に焼きながら落下する光。
やがて、光の正体が、大気摩擦の高熱を纏った物体だと時緒の肉眼が理解した丁度その時、
光が四方へ弾け飛んだ。
後に残ったのは、何処か歪に見えるヒトの形をした物体。
両腕は逞しく大きいのに、両脚はナイフの様に鋭い。
大きさはあくまで時緒の目測だが、エクスレイガよりも一回り程大きく見えた。
「ろ、
声を震わせ、時緒は唖然と呟いた。
悪寒に全身の産毛が逆立つ。
時緒の価値観からすれば、物体姿は紛れも無く、巨大ロボットそのものだった。
妖しく紫色に輝く装甲を纏ったそのロボットは両腕を横に伸ばし、鋭い爪先を揃え、十字架の様なシルエットを形成すると、落下速度を緩めた。
太陽光を背負って舞い降りてくる謎のロボット。その姿のなんと神々しく、なんと禍々しい事か。
「……」
時緒はロボットを只眺めた。いや、眺める事しか出来なかった。
予想外の出来事に時緒の思考は一時的に停止してしまったのだ。
……!
やがて、ロボットはエクスレイガの数百メートル先、かつて時緒の学舎であった小学校の校舎屋上にふわりと着地した。
ピポポポポ…と奇妙な電子音を鳴らし、ロボットは頭部の四つ眼を山吹色に光らせ、周囲を見渡す。
素朴な猪苗代の街並みを。
遠くに見える磐梯山を。
陽光を反射してせせらぐ長瀬川を。
『…%=+**##…』
エクスレイガの通信回線が奇妙な言葉を捉えた。
鋭いが、何処か暖かさを帯びた男の声。
感嘆しているような声音。
だが、何を言っているのか時緒にはさっぱりと分からない。
すると、ロボットが突然、エクスレイガを睨みつけた。
「ぅ……っ!?」
光る四つ眼が威圧感となって時緒を拘束した。
見てる。
こちらを見てる。
冷たい汗が背中を流れ、口の中がからからに乾いていく。
『°=*○*#<%*%?』
再び謎の声がする。
『#°%=?』
「あ…ぅ…?」
言葉が理解出来ず、時緒が躊躇していると、
『…?%%?…!』
「…………」
『…@…。あー…失礼した。私の言葉、理解出来るか?』
「は、はい…。…って、はい!?」
意味不明な言語が、突如流暢な日本語となって時緒の鼓膜を叩く。
驚いた時緒は酷く滑稽な裏声をあげてしまった。
『済まない。気が急いで、翻訳機のスイッチを入れ忘れていた』
「ほ、翻訳機…っ?」
男の声と同タイミングでロボットが静かに、エクスレイガに向けて首を垂れた。
どうやら声の主は、かのロボットに搭乗しているらしい。
「あ、あ、貴方は…一体?」
『む?重ね重ねの無作法、申し訳ない…!』
ロボットが再びエクスレイガを見詰めた。
『私はルーリア銀河帝国、第二皇女ティセリア殿下率いるティセリア騎士団筆頭騎士、名はシーヴァン。”シーヴァン・ワゥン・ドーグス”』
「ルーリア…の騎士…!?」
『君は地球人か?名を聞いても?』
「え…えっと…」
時緒は名乗る事を一瞬躊躇したが…。
「僕は、時緒って言います。椎名 時緒。地球人…です」
時緒は自らの名を口にした。
たとえ異星人とはいえ、たとえ侵略者とはいえ、名乗ってくれた相手に挨拶をしないなど、時緒の矜持が許さなかったのだ。
『トキオか…。ふむ、良い名だ…』
ロボットが流麗な動作で、己が左腕をかざす。
すると、ロボットは左手甲部から山吹色の光を噴き出して、エクスレイガのブレードに酷似した光刃を生成しだした。
『トキオ、君が先日、そして先刻、キュービルを屠った”巨人”、そして…その操縦者たる地球人だな…?』
「え…きゅーびる…?」
『君達地球人がスターフィッシュと呼称する兵器だ』
「あー…は、は…い」
ロボットが、光刃の切っ先を、ついとエクスレイガへ向ける。
『勇猛な戦い、見事であった…!…トキオ、単刀直入に言う。次は…この私を相手にして貰おうか?』
「…っは…は……?」
『ルーリア騎士の名にかけて、己が武腕…試させていただく…!』
『…トキオ!いざ、尋常に、私と勝負せよ…!!』
続く
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