本当は気づいている

本当は気づいている、君が大した男じゃないことくらい。

会社に勤められる気がしなかったとか、満員電車に乗るのが嫌だったなんて、成功しているうちは響きがいいけれど、うまくいかなくなった途端に色褪せるのだ。

その年で今更将来について不安に感じ始めるなんて、リスクヘッジばかりして生きてきた私にとってみれば愚かとしか言いようがない。


君は相変わらず一人でバーに入れば逆ナンされるし、コンビニでは「イケメンですね」と店員に言われる。それでも、合コンやクラブで若い女の子に相手をされなくなってきているから、自分に惚れ込んでいる私を傍に置く。昔ならセフレだった私を、恋人未満、セフレ以上にしている。

私たちは一緒にいても「お似合いですね」とは言われない。褒められるのはいつも君だけだ。


恋は盲目だ。

だけど君が大した男じゃないことくらい本当は気づいている。でも好きなのだ。


君がこのまま年を重ねて、容姿が衰えて、誰にも相手をされなくなったとき、私の存在がどれだけ君の自尊心を支えてきたか気づけばいい。

その頃私はもう君を好きでいることに疲れて、君の隣にはいないだろう。


茶番。


私は私のことを好きな人を好きになりたい。自分と同じくらい、好きになってくれる人が欲しい。

私は、私のことを好きな人が「好き」と言ったことに対して「ありがとう」と返す。

相手はいつも、悲しそうに微笑む。でも私が好きなのは、君だけなのだ。

もうやめたい。

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