本棚の中身が同じなら

本棚の中身が同じ相手と出会ったら、私はその人と心中してしまうだろう。

ずっとそう思って生きてきた。


彼は、”本棚の中身が半分同じ”人だった。

もちろん、物理的に同じということではない。


例えば私が、岩井俊二の「スワロウテイル」が一番好きな映画だと言ったら、

彼は何十回も見たという「フライドドラゴンフィッシュ」のDVDを貸してくれる。そして一緒に、3回目の映画「サヨナライツカ」を見る。

二人ともが大学時代に読み漁った岡崎京子の話を酒の肴にし、村上春樹は一通り読んだけどハマらなかったねと語る。

私が持っている楠本まきの漫画と彼の魚喃キリコを貸し借りし、「南瓜とマヨネーズ」の映画をいつ見に行くか決める。


生きていくためにやわらかな感受性を捨ててしまったことを思い出し、俗世に生きる自分たちを、それはそれで楽しいねと笑い合う。


私たちはお互い、器用で愛想がいい。だけど、自分の中にいるそうでない部分、それを共有できることが嬉しい。

きっとこんな人にはもう二度と出会わないだろうと思うけど、そう思っているのは私だけなのかもしれない。

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