色が象徴するもの【ネタバレ】

 「テーマと裏話【ネタバレ】」でも述べました通り、第三部では「色」が各キャラクターとレイアの心情を象徴しています。


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【灰色の城】

導入:

 目が覚めたとき、まず目に入ったのは灰色の天井だった。

 四角く切り出された石が無数に組み合わさって、アーチ型の天井を支えている。……もう何度も目にしているというのに、未だ慣れない天井。

(略)

 あったのは、ただ「敵」か「味方」かの区別のみ。敵であれば殺すだけ。味方であれば――裏切らないよう、監視する。自分以外、誰も信じない。それが、盗賊の世界では当たり前のルールだった。


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【赤の洞窟】カッツェ

導入:

 熱く激しい音。

 ――紅。赤い炎。


締め括り:

 紅く燃える洞窟の中で、レイアの中に新たに灯った掟。

 それは「信頼」と「情熱」いう名の戒めだった。


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【白の雪原】ノエル

導入:

 透明で透き通った旋律。

 時に暖かく時に冷たく、叡智を感じさせる荘厳な音。

 何者にも穢されない純粋な色。


締め括り:

 白く輝く雪原で、レイアの心に煌きらめいたもの。

 それは「素直さ」と「純真」いう名の白い光だった。


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【青の泉】ヴァイス

導入:

 寂しく物悲しい旋律を紡ぎ出した。

 時に高く、時に低く。

 水面みなものように漂ただよい、空のように突き抜け。

 深く広く、澄み渡る。


締め括り:

 青く光る泉のほとりで。

 レイアの心には「冷静」と「平穏」の風が爽やかに吹き抜けていった。


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【黒き山】レイア

導入:

 重く悲しい旋律メロディーを奏でた。

 重厚で、暗く。

 どこまでも冷たく、深い深い闇の音色――


締め括り:

 暗い闇に包まれた黒き山の上で。

 レイアの心には、何人にも侵されることのない「強さ」と「信念」がずしりと鎮座していた。


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【黄金の月】カノア

導入:

 高々と歓喜の旋律メロディーを奏でた。

 歓びに満ち、愉快で、幸せが広がる――。

 そんな音色が闇夜の常闇を晴らすかのように響き渡った。


締め括り:

  まるで兄弟のように虎に乗るカノアの後ろ姿を見ながら、レイアの心には「希望」と「歓び」の感情がふわりと軽やかに浮かんでいた。


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【虹色の宮殿から帰還後】

締め括り:

 レイアは自分の中に芽生えたいくつもの色彩に満ちた感情を噛みしめ、そう思った。


 今のレイアを柔らかに縛る「掟」。

 それは「絆」という確かな糸で、レイアと仲間達をしっかりと繋ぎ止めてくれているのだった。

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 物語の中で、場面は 灰色→赤→白→青→黒→黄(黄金)→虹色 と変化していきます。また、間のシーンタイトルはその中間色になっています。


 赤の洞窟ではカッツェとの絆、白の雪原ではノエルとの絆……というように、各場面でレイアは仲間から大事な感情を学びながら、仲間との絆を深めていく、というのが第三部の大きなテーマでした。


 灰色の暗い世界から始まった物語は五色の感情に彩られ、「虹色」の世界となって再び魔女の城に戻ってきます。


 ここで「虹色」というのは通常「七色」を表すと思いますが、同時に日本の伝統的な色では「淡い桃色」も表すそうです。そこで、「全ての色が合わさった色」と、「レイアの象徴=桃色」の両方の意味を掛けて、最後の場面を虹色の宮殿にしました。


◆第一部との比較

 第一部「はじまりの詩」で、ノエルは「白い世界」の中で自己と対峙し、真理に辿り着きました。

 対してレイアは、第三部で「黒い闇」の中で自己と対峙して、仲間の大切さに気付きました。


 第一部で気付いた真理とは、「裏も表もない、物事は捉え方次第」ということ。

 第三部では「天使も悪魔も結局は同じ、人の心が創り出したもの」ということ言っています。


◆第二部との比較

 第二部「魔王の手紙」の最終話で、ヴァイスは家族の元から旅立ちます。

 第三部でレイアは、「四人の仲間こそが家族だ」と結論付けて、そこに留まることを選びます。


 第二部で起こったどんでん返しは、「魔王と思っていた正体は、善き魔女だった」「魔女は王都を襲おうとしたのではなく、ただ愛する人を想っていた」という部分。

 第三部では「悪魔と思っていた者は天使でもあった」「絵の中に囚われたのではなく、少年自身が望んで絵の中に閉じ籠っていた」という、前半部分の前提を覆す話を盛り込んでいます。


 ……こんな感じで、同じようなテーマを何度も形を変えて描き直してきたのが、この第一~第三部の物語でした。(作者は、色々と象徴的な意味を持たせたり、対比させたりするのが好きなのです)

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