各話の裏話【ネタバレ】

 ここからは完全に小説の内容のネタバレになりますので、まだ本編を読まれていない方はご注意ください。



◆サブタイトル「はじまりのうた」の意味

 はじまりの詩。そこにはいくつかの意味を込めています。


 1つ目は、彼らが旅立つきっかけとなった第7話のエルフの伝説『創世の章』のこと。――冒険はあの伝説から始まった。


 2つ目は、彼ら自身が伝説となった第52話の『救世の章』のこと。

 ――そして彼らは伝説となった。だが彼らの冒険はここでは終わらない。これは彼らの始まりのお話である。


 この物語には、始まりの伝説と終わりの伝説、二つの伝説が出てきます。


 『救世の章』はノエル達五人のことを描いている様でいて、実はもっと昔の救世主のことを描いた伝説でもあります。彼らは伝説にのっとってそれを再現してみせた。

 『救世の伝説』は終わりではなく始まりだった。ノエル達の旅はこれからも続く。歴史は何度も繰り返す……というような意味を込めています。


 そして最後となる3つ目の意味は、この第一部の物語全体が「五人の出会いを描いた、はじまりの物語」であるということ。


 これら3つのの意味を込めて「はじまりのうた」としています。(読み方は「うた」です。その方がゴロが良いかなと)



大鳥ガルーア伝説

 「第1話 少年の見た夢」と「第8話 主従、あるいは少年と青年を巡る関係」。

 この二つの話で出てくる〈大鳥ガルーア退治の様子〉は、同じ場面の描写です。


 冒頭でノエルが見ていた夢。あれは第8話のヴァイスの回想で出てくる大鳥退治で、ノエルが魔法を放つ直前までの描写(……のノエル視点回想)でした。伝わりましたでしょうか?(伝わっていなかったら、作者の力不足です。ごめんなさい)


 このガルーアの話で、ノエル・カッツェ・ヴァイスの三人それぞれに繋がりが生れています。二年前に、ヴァイスの前でノエルがガルーアを倒してみせた。そして第1話目、ノエルの前で(寝てたから見てないけど)カッツェがガルーアを倒してみせた。


 また「巨人の谷」編でもガルーアが重要な立ち位置で登場しています。ガルーアはこの物語で以外と活躍しています。(笑)


 

◆「巨人の谷」編

 「巨人の谷」編のあのハチャメチャな作戦は、次のようなコンセプトで生まれました。

・五人全員が協力して何か大きな作戦を成し遂げる

・カノアがレイアのために命を懸ける → そのカノアをレイアが命懸けで助ける → その想いの力でレイアの力が解放される → 谷が蘇る


 正直なところ、「ガルーアの巣の上に薬を撒くだけなら、ノエルの風魔法でなんとかできなかったの?」という疑問が浮かんでくると思います。風で薬を飛ばせばいいわけですからね。

 ……はい。たぶんできると思います。(笑) 魔法ですし。

 でもここでは「五人全員がそれぞれ力を出し合って」というのが書きたかったので、あえてそのことは忘れてください。(笑)


 あそこでは、カノアが命を懸けて危険な目に合わなければならなかったのです。そしてレイアがそれを助けなければならなかったのです。そのためのお話でした。(カノアごめんね……)



◆視点について

 第一部「はじまりの詩」では、基本的にノエルを主人公として物語は進みますが、所々で視点が切り替わります。


 「巨人の谷」でカノアがガルーアに乗っているときにはカノアの視点。レイアがカノアを助け、初めて精霊が視えるようになったときには、レイアの視点。……という感じです。


 一度は「ノエル視点」に統一しようかと思ったのですが、それだと緊迫感が出ないのでこのようになりました。ノエル視点だと「ガルーアに掴まっているカノアが小さく見え……」みたいな描写になっちゃいますからね。あんまりコロコロ視点を変えてもいけないとは思うのですが……。


 もっと初期には、全編をカッツェの視点で書こうかとも悩みました。ノエル視点だと最初から「精霊が視える」状態で物語が進んでいきますし、「魔導術や精霊の仕組みも既に知っている」状態になるので、読者の知識と乖離が出てしまって説明がしずらいからです。


 結局、「魔導術に詳しくないカッツェが質問して」→「ノエルかヴァイスが教える」という形にすることにしました。具体的には「戦闘と魔導術」編のあたりです。

 「聖杯伝説」や「バベルの塔」でもそうですが、ヴァイスが完全に説明役として色々と説明しております。



◆それぞれの活躍の場

 第一部では五人それぞれに活躍の場を持たせたかったので、以下の話でそれぞれ無双(?)しております。


・ノエル→「第4話 英雄<ヒーロー>」

・カッツェ→「第41話 その男、無双(?)」

・ヴァイス→「第36話 死神に抱かれた村」~「第37話 踊る妖精」

・レイア→「第35話 巨人の谷の奇跡」

・カノア→「第31話 天使の翼」「第32話 大空に舞う」


 なお第二部「魔王の手紙」ではヴァイスが主役、第三部「色紡ぐ音」ではレイアが主役になります。(もし続編があれば、第四部はカノアが主役、第五部はカッツェとノエルが再び主役……になるという構想でした)



◆冒険図鑑

 もともとこの物語は「小説家になろう」で公開していたものを書き直しながらカクヨムさんに投稿しています。が、「冒険図鑑」だけはカクヨム版オリジナルで書き下ろしています。

 カクヨムでは小説の各ページに後書きを付けられないので、その代わりに……と思い付きで始めたものなのですが、意外と皆様のお目に止まったようで良かったと思っています!



◆第一部で描きたかったテーマ

 第一部はノエルの成長や葛藤、仲間達との出会い、それぞれの成長……がテーマです。


 そしてもう一つ第一部で描きたかったのは、

「”悪”という概念そのものが、人間が創り出した幻想に過ぎない」

→「本当に悪いものなんていない」

 ということでした。これは作者の願望ですね。


 「敵だと思っていたものは、実は敵じゃなかった」「敵を作り出していたのは、人間自身だった」という感じです。

 「第37話 踊る妖精」でノエルが言っている「精霊だって悪気があった訳じゃないんだよ」とか、「第17話 揺らめく炎の先で」の「精霊に善悪の区別はない」とかも、そこに繋げようと思ってのものです。


 第一部の本編中では具体的に書いていないのですが、結局私の描く物語の中において、精霊と魔物は同じものなのだと思います。

 正の魔導エネルギーが具現化したものが「精霊」であり、マイナスの魔導エネルギー(=瘴気)が具現化したものが「魔物」である、という感じです。魔物も必要悪というか、光で照らしたときの「影」のように決して消えないものなのです。


 バトル描写のために魔物を倒すシーンなどもたくさん出てきますが。魔物が人間を襲うのも、彼らは彼らで生きるためです。人間だって獣を狩って食糧にするのですから、それと同じことなんですよね。彼らは彼らなりの摂理で動いている。それがたまたま人間とは相容れないだけ、という考え方です。


 この「本当は悪者なんていない」というのは、今後続く第二部・第三部でも基本的には同じスタンスを取っています。(ただ、第一部ほどモヤっとした終わり方にはならないはず……)


 各編にそれぞれラスボス的な存在が出てきますが、それに対してどう対応するか――は、まだネタバレせずに伏せておきます。とにかくそのラスボス的存在と対峙することで、主人公たちは何かを学び取ります。

 ただの「勧善懲悪」ではなく、どちらかというと主人公たちの「学び」に焦点を当てた物語にしたいと思って書いています。


 三部作の中でも、第一部が特にスピリチュアルな展開になってしまいました。正直、この展開には付いていけなかった……モヤっと感が残る……という読者様もいたと思います。申し訳ありません(>_<) が、どうしても描いてみたかったのです。


 続く第二部・第三部ではそこまでスピリチュアルな展開にはなっておらず、一部ほどモヤっとはしない予定ですので、ぜひ楽しんでいただければ幸いです。



◆余談:【外伝】ノエルとレイアの魔導特訓 (side レイア)

 普段の物語は三人称神視点(?)で書いているのですが、このお話だけレイアの一人称視点です。彼女は無口なので、彼女目線で描かないと何を考えているか伝わりずらいのですよね。


 個人的には、レイアが心の中でヴァイスのことを「あの眼鏡の白いエルフ殿」とか、ノエルのことを「小さな魔導師の少年」と呼んでいるのが気に入っています。

 でもカッツェとカノアのことは名前で呼んでいます。なんでしょうね、この微妙な距離感。(笑)


 レイアは第三部「色紡ぐ音」で主人公になりますので、彼女の心の内がもっとさらけ出されます。お楽しみに!(^-^)/



◆余談その2:【外伝】太陽と月

 レイアとヴァイスの恋愛話を期待してくださっていた方、期待を裏切ってしまい申し訳ありません。

 まだ先ですが、第三部「色紡ぐ音」ではエルフ二人の以心伝心っぷりがもうちょっと発揮される場面があります。こちらもどうぞお楽しみに!(^-^)/

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