冷凍ちゃんに解凍くん

復活 : 吐いタク

冷凍

「あいつってずっと本読んでない?」

「名前すらわかんねえ〜」

「なんだっけ?」

クラスに1人は、影の中の影がいる。

光り輝くものたちに紛れて3年も過ごすのだろうな。

いつもの3人で話すことはいつもどーでもいい。

「席につけー」

昼休みが終わった。


「じゃー俺はここで。」

「おーじゃーな」

日下部と加藤とは別れを告げた。

それから3分ぐらい歩いただろうか。

彼女だ。

高校が始まって二ヶ月はたったが帰り道を見かけたのは初めて。

へぇーここを通るのね...

ん?なんだここ、工場?

謎女は、工場らしき場所に入っていった。そりゃついて行くに決まってる。

「大丈夫?凍らなかった?」

「まぁーちょっと...」

女性と話しているのだろうか。

「あー凍ってるね...解凍室に。ほら。」

「うん。」

バリッ!

やってしまった。

木の枝が何でこんなとこにあんだよ!

「誰!!」

すっと隠れていた身をだした。

「いや!怪しいものではないんです。」

あっと驚くのは当然だ。


話を聞いてみたところ、彼女は冷凍体症候群という病気らしい。

世界に一人らしい、そして解凍しなきゃ二日で凍る...らしい。

「まぁー知ってもらっちゃ仕方ない、君には学校で三月を見てもらおう。」

さんがつ?そんな名前なの?みつきだろ...

「あ、見るってなにを?」

「普通についてくれればいーさ。」

地味子は気配を消して座っている。

「は、はい。」

謎の護衛が始まった。

「あ、急に凍る日もあるよ〜」

「え!?」


「どうした?」

「なんだなんだ?」

確かにおかしいだろうな、俺と冷女が一緒に歩いて一緒に教室に入る。(話さない)

「なにがあった?」

日下部と加藤が問うてきた。

「護衛」

ってか仮に彼女が急に凍るとしよう。

あの医者のねーちゃんに電話して、つれてったら間に合うのか...

授業中も休み時間も彼女を見つめる。

変態と化した。

トイレも帰り道も彼女について行く。

変態のバケモンだ。

報酬もなければ、称賛の声もない。

なにが俺を動かしているのか...


すたっすたっすたっ

歩道を歩く、彼女の顔はよく見たことはないが今日はなんだかつらそうだ。

「わっ」

それが彼女から聞いた初の言葉だった。

石に足を引っ掛け転んだ彼女に手をさしのべた。

恥ずかしがりながらも手をつかんだ彼女は驚いていた。

「あ、あのどうかしましたか?」

ジューー蒸発している音?

「溶けてる...」

彼女は小声でそう言った。

「にしてもすごくないですか?」

工場に向かう道中。

あまりの出来ごとにいつもは話さない俺も口を開く。

「あ、なんかすいません。」

「迷惑ですよね...」

花沢さんは首を横に振った。

「あ、ありがとう」

小声でも話してもらえたことに感動。

「俺、高橋たかるって言うんだ!」

護衛が始まって一週間はたった。今初めて自己紹介をした。

「知ってます...よ。」


「あなたの手すごいのね。」

医者のねーちゃんはそう言って俺の手を揉んだ。

「じゃーもー私いらないね!はっは!」

「ってことは、学校行事で旅行とかの日は、高橋くんを携帯すればいいのね!」

「便利!!」

確かに...一年はないがね。


「お、おはようございます。」

「おはよう。」

もちろん学校へも一緒に行く。

「危機にさらされたことはないの?その病気で...」

...

「ある。」

「どんな?」

「私、ずっと凍ってた。生まれてから10年くらい。」

「え?」

「凍った体で捨てられたの母に川で。今、一緒に住んでくれてるのは拾ってくれたおばあちゃんだったの。」

そんなことが...

「そのおばあちゃんの娘さんが医者のおねーさん。」

一列でいつも歩いているが今日は横並びだった。

「生まれたのは...6年前。」

こんなに俺に話してくれるのか...

「だったらさ知らないことも多いでしょ!」

花沢さんは驚いた顔で俺をみやげた。

恥ずかしくなって前を向いたが、心に決心はついた。

「今度、遊びに行こうよ!」

彼女の腕がいきなり凍った。

発動条件はいっぱいあるんだな...

おもいっきり手をつかんだ。

「ダメか?」

真っ赤な顔が横に振られた。

「あつっ」

「あ、ごめん。」

触れすぎたらあついのか...

触れなかったら凍るのか...

難しいな...


「おはよう。」

「お、はよう。」

「じゃー行こっか。」

この企画を大成功に収めるには難問がいくつかある。

都市のショッピングモールをまわるだけなのだが...どうしたらいいかわからない。

「ど、どこ行く...の?」

そんなに可愛く言われても俺にはわからない。

「わ、わからん。」


「はぁー」

午後5時、外のベンチに腰をかける。

「自販機って便利。」

「そうだね。」

最悪の日だったろう。

良かれと思い誘ってはみたが、頼りない男とショッピングもせずに歩いただけ。

「今日、楽しかった?」

「うん。」

彼女は大きくうなずいた。

「疲れなかった?」

「うん。」

これを聞かなきゃ俺である意味がない。

「凍らなかった?」

「ううん。」

彼女と目が合う。

「じゃー溶けるまで手を繋いでもいい?」

恥ずかしくなったのか、顔を下に向けた。そんな三月が可愛くて

「うん。」

「好きです。」


「お前それは気が早いよ〜」

日下部と加藤はそろって言った。

次の日になりその日は月曜だった。

しっかり護衛はしたのだが昨日のことがあってか全然話してくれない。

授業中見つめても

休み時間見つめても

トイレについてっても

彼女は俺をないように扱う。


「あの、昨日のことで怒ってる?」

...

「わかった。謝るよ。」

...

カァーカァーカァー

カラスだけが俺を応援してくれている。

「べ、別に...おこって、ない。」

よかった...

「じゃー今までどうりに話してくれるんだな?やったー!」

「「い、今までどうりじゃ...」」

三月はいつになく声が張っていた 。

「今までと一緒じゃダメ。」

カラスはバサバサと去っていった。

「好きです。」

俺は彼女を抱き寄せた。

おかしいよな...でも、しっかり言い訳をした。

「溶かしてるんだ、よ。」

力の入ったこの腕からもう力はなくなった。

彼女がどうであれ、俺は彼女を好きになった。

「あつっ」

触れたくても触れなれない時間があるのか...

「ごめん!」

辛すぎる。


END


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