4.

 その日の夜、仕事から帰って、スュンとアパートで夕食を食べ、食器を片付けたあと、俺たちは寝室へ向かった。

 そしてスュンに上半身裸になってもらい、二人は約一メートルの距離を置いて向か会って立った。

 正確を期すために、スュンにはブラジャーも外してもらっている。

 ブリリンッとした、やや小ぶりの可愛らしいオッパイが俺の目の前にあった。

 男たちは「ちょうど手のひらに収まるくらいのオッパイが良い」と、よく言う。

 俺もその意見に賛成だ。

 俺は平均的な成人男子よりも大分だいぶ背が高く、当然のことながら、各パーツもそれに比例して大きい。

 手のひらも大きい部類に入る。

 それに、ガキの頃から剣術の修業に明け暮れていたために、指や手のひらにも筋肉が付いていて分厚い。

 そんな手のデカい俺からすると、正直、スュンのオッパイは……物足りない……

 いや、こんなことスュンには絶対言えないが……正直スュンのオッパイは……やや物足りない。

 しかし、だからと言って、そんなことで俺が世界一スュンを好きだという事実は揺るがない。

 女の価値は、決してオッパイの大きさなんかじゃ、ない。

 尻だ。

 尻の形こそが重要なんだ。

 ……いや……もちろん、本当に大事なのは人柄だ。性格が一番大事だ。結婚するのに何が一番の決め手かと言えば、もちろん相手の性格が一番大事だ。

 ま、それはそれとして、尻も大事だ。

 じゃあ、オッパイはどうなのかと言えば、尻ほどではないにせよ、やはり大切な部分であることに間違いは無い。

 しかし、男の俺からしてみたら、べつに小さくても構わない……大きくても構わない。

 小さかろうと大きかろうと、それに合わせて男のほうで色々と攻め手を考えるから大丈夫だ。安心して欲しい。

 ま、それはそれとして、俺の目の前、一メートル先には、スュンのプリリンッとした小ぶりなオッパイがあった。

 俺は、スュンに頼んで、五十センチメートル定規を手に持って、オッパイの横から俺の方へ向けて突き出すようにしてもらった。

 こうすることで、俺がスュンのオッパイから何センチのところまで近づいたら、例の不可解な電撃現象が起きるのか、その正確な数値を測ることができる。

「用意は良いな……」ゴクリとつばを飲み込みながら言う俺に、スュンは「う、うん……」と小さくうなづいて見せた。

 俺が、ゆっくりと両手のひらを前に出して、オッパイをわしづかみにするような形にすると、スュンの体がキュッと緊張するのが分かった。俺たちはもう何百回もオッパイもみもみしている仲なので、今さら緊張もなかろうにと思うが、きっとその夜の俺には鬼気迫るものがあって、スュンはそれに対して身をこわばらせたんだろう。

 確かに、その夜の俺には、ある種の気迫のようなものがあったに違いない。

 それは、そうだろう。

 このまま、この怪現象の原因が分からなければ、俺は二度とスュンのオッパイをもみもみ出来ないかもしれないのだ。

 俺は、今、その瀬戸際に立たされている……そんな思いがその夜の俺にはあった。

 俺は前に突き出した両手のひらを少しずつスュンのオッパイに近づけていった。

 スュンが、緊張に耐えられなくなったのか、目をつぶってしまった。

「目を閉じるなっ!」

 俺は思わず叫んだ。

 スュンがハッとして目を開け、俺を見つめた。

「ああ、す、済まない……怒鳴ったりして……」俺は彼女に謝った。「でも、目を開けていて欲しい……そうじゃないと、この実験の意味がない」

「そ、そうね……分かった。ちゃんと目を開けている……」スュンが俺を見てうなづいた。

 俺はさらに、両手をスュンのオッパイに近づけていった。

 五十センチ物差ものさしの測定距離内に入った。

 ……四十センチ……三十センチ……二十センチ……

 突然、両手のひらにバチッ! と電撃が走った。

 俺はたまらず体をらせ、そのまま寝室のゆかの上に仰向あおむけに倒れて、両腕の筋肉をこわばらせて激痛に耐えた。

「グウウゥゥゥ」

 あまりの痛みに、食いしばった歯の間から声がれた。

「だ、だいじょうぶ?」

 心配して駆け寄ろうとするスュンに手のひらを向けて、俺は必死に制止した。

「来るんじゃない!」

 スュンはハッとなって、立ち止まり、ゆかの上で打ちまわっている俺を呆然と見下ろした。

 俺は激痛に耐えながら、スュンにたずねた。

「きょ……距離は?」

「え?」

「俺の両手がお前のオッパイに何センチまで近づいた時に、俺は電撃を喰らった?」

「え、っと……たしか……じゅう……ご……センチ……」

 右手に五十センチ定規を握りしめ、スュンが言った。

「そう……十五センチよっ!」

 スュンのプリリンッとした小ぶりな可愛らしいオッパイが、プルルンッと揺れた。

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