片想い
私の名は
片想いの人の名は浅井貴彦くん。ルックスは眼鏡をかけていて、髪もロン毛っぽくて少し冴えない女顔だったけど、どうも私はそういうルックスがタイプらしい。
最初に浅井くんと知り合ったのは高1の秋の文化祭だった。お互いのクラスが同じ出し物をすることになったのがきっかけかな。出し物の内容は演劇。とはいえオリジナルの作品だったけど。そして私と浅井くんはメインのカップル役に選ばれた。
今思えばあれは運命だったかもしれない。浅井くんは優しくてひたむきだった。そして文化祭の演劇は大盛況に終わった。ちょうどその頃だろう、私が浅井くんに惚れたのは。
文化祭が終わると浅井くんと話す機会はほとんどなくなった。私も浅井くんも普段は友達といることが多かったから、顔を合わせたらとりあえず挨拶するくらいだった。
高2になって同じクラスになった。私はそれを運命だと思った。そして始業式が終わるとすぐに告白した。しかし交際は断られた。でも、浅井くんに好きな人がいないということがわかった。だからまだ諦めるつもりはなく、毎日のように浅井くんに話しかけていた。浅井くんも私の話に乗っかってくれた。
しかしそれ以上の仲には発展せず、「友達以上恋人未満」という状態だった。結局は私の友達からも、「浅井くん鈍すぎ」と言われる始末だった。だからそろそろ浅井くんをデートに誘おうとした矢先に・・・
浅井くんの葬儀では、私が一番泣いていたかもしれない。葬儀では浅井くんの両親やお姉さん、妹さんと話す機会があった。お姉さんからは、「あなたが白石さんね。貴彦がよく私にあなたの話をしていたわ。その時は友達以上恋人未満って感じだと思っていたけど、亡くなる前日に貴彦が、『俺、そろそろ白石と付き合うかもしれない』と言ったの。貴彦がもっと早くあなたの恋に気が付いてくれたらねぇ・・・」と言われた。
どんなに寝て、そして起きても、実感が沸かない。頭ではわかっていることだけど、感情がその現実を受け止めることができない。浅井貴彦くん、君はもうこの世界のどこにもいないんだってことに・・・
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