目が覚めると女の子になっていた

その事故があった数日後、俺は目を覚ました。どうやら俺は事故の後、この病院に入院していたらしい。目を覚ますと、徐々に意識がはっきりしてきた。日付けは6月7日、時刻は朝9時頃だろうか。


しかし俺は病室で以下の違和感を感じた。


・少し縮んだように見える背

・数日間ではここまで伸びないというほど長い髪の毛、肩甲骨の下まである

・声を出してみると声が女の子のように高い

・胸の膨らみ、パジャマ越しでもすぐわかる

・何かがないような下半身




俺はベッドの隣にある呼び出しのベルを鳴らすと、すぐに若いナースさんがやってきた。


「早く医師の先生を呼んでください!」


俺がナースさんにこう告げると、程なくして40代くらいの男性であろう、医師の先生がやってきた。


「これは一体何なんですか!何で俺は女の子の体なんですか!」


俺は医師の先生にこう言い放つ。すると医師の先生はこう言った。


「まだ体の確認もしてないのに女の子の体だと決めつけるのか。まぁ手鏡があるから見てみなさい」


俺は医師の先生から差し出された手鏡を見る。




「あっ・・・」




俺の顔はアイドルの相沢優奈あいざわゆうなのそっくりさんになっていた。あまり詳しくないが、あるアイドルグループの中心メンバーとして活動する一方、抜群のルックスで女優やモデルとしても活躍している。学校内でも彼女の話をする生徒は男女問わず数知れない。しかし最近、彼女は体調不良で休業を発表し、ある同級生は「ゆうにゃんに何があったんだ」と嘆いていた。




「なんで俺の顔が相沢優奈みたいな顔になっているんですか!もしかして先生の趣味ですか?」


俺の質問に先生はこう答える。


「その体は相沢優奈本人だ。彼女は1ヶ月前、ある病気で脳死状態になってしまった。僕は彼女がもう生き返る望みはないだろうと生命維持装置を外す準備をしていた時に、君が交通事故で運ばれてきた。君は内臓破裂と出血多量で死亡していたが、奇跡的に脳の損傷は皆無だった。血液型も同じだったので、彼女の死は惜しいと判断した僕は3日前、彼女の身体に君の脳を移植する手術を行った。今、君がこういう状態なら手術は成功だな」


おい、ちょっと待てよ・・・


「しかし先生、そんなことをやって許されるんですか?成功したとはいえ、倫理的に問題があるでしょう。俺の人権も優奈さんの人権もあるのに・・・」


俺は先生の言葉にこう答える。


「医療に倫理もクソもない。第一彼女の病気、そして脳死になったことは世間には知らされていない。表向きには体調不良で休業していることになっている。もし彼女が死んだことが世間に知られたのなら、周囲のショックは計り知れないだろう」


そして先生は俺にこう言った。




「浅井貴彦くん、君の身体はもう焼かれたんだ。葬儀で両親や友達が泣いていたぞ。しかし、君には第2の人生がある。これからは相沢優奈として生きていきなさい」




その日の夕方、俺は優奈さんの家族と会った。優奈さんのお母さんは娘が意識を取り戻したことに泣いていた。まぁ彼女の正体は脳移植された俺なんだが。そして数日後、俺は退院し優奈さんの家に入った。

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