#Mission
Mission 01
例えば、携帯のGPS。
彼にとっては大事な商売道具だから、紛失時に備えて検索出来るよう対策はされているはずだ。パソコンからの検索はIDやパスワードがわからないから無理としても、彼が家に帰った頃合いを見計らい、携帯を紛失したと彼を騙ってキャリアに位置検索を依頼すれば。
――却下。
私の声では男には聞こえない。誰かに代役を頼んだとしても本人確認が突破出来ないし、例え突破出来たところで位置検索時は携帯宛に通知が入ってしまう。彼に気付かれてしまうなら意味がない。
なら、彼がしたように、スパイツールを仕込んで――
――それも却下。
彼は携帯を手放さない。食事だろうと、トイレだろうと、固定電話で電話中だろうと。
私は、彼の携帯に触れることすら敵わない。
彼が席を立った隙に充電のケーブルを回収しておいたらどうだろう?
ケーブルどこかに行っちゃったんですか? こっちで充電しましょうか、なんて。
――甘い甘い。
そんな不審な計画に乗ってくれるような上司ではない。
そもそも、五回くらいフル充電出来る外部バッテリーが鞄の中に入っている。
素直に尾行するしかないのか。たったひとりで。
――けど、それは、
何度も失敗している。途中までは上手くいっているのに、気付かれているはずはないのに。
何故か気が付けばいつも、後ろから肩を叩かれている。ご苦労様、と。
彼は、私が諦めていないことを知っている。けれど、彼には、私の尾行を気にしている素振りはない。それどころか、気にする必要すらない、と面と向かって言われた。
『友達が教えてくれるんだよね。変なのが居るって』
変なの、といういう表現はひどいと思うのだが、それはともかくとして。おそらく『友達』の活躍は、嘘ではなかった。確かに、彼を見失うのは毎回、彼が携帯の着信を確認した後だからだ。
それならば。
彼が事務所を出て自宅に帰るまでの間、着信そのものを防げばいい。電波ごと遮ってしまえば。
彼だって四六時中携帯の画面を眺めているわけじゃない。移動中くらい、電波が途切れていても気が付かないんじゃないか?
電波を妨害して圏外にするツールなら簡単に、しかも安価で手に入る。携帯には触れられなくても、彼の鞄にこっそり忍ばせておけば。
――いいアイディア……だと、思ったんだけど。
残念ながら、そう都合良く時間設定出来る商品はなかった。スイッチから手を離せば数十秒で切れてしまうか、逆に数時間もの間妨害し続けてしまうもの。
論外だ。数十秒では意味がないし、長時間にわたって仕事まで阻害してしまいそうなものをこんな理由で使えるはずがなかった。
――いや、まぁ、そもそも違法なんだけどさ。
「むー」
自分の口から、不機嫌な声が漏れる。
「そんな頑張らなくても、知りたいなら教えてあげるのに」
上司がおかしそうに笑う。こちらが意地になっているからからかっているだけで、最初から自宅を隠すつもりなど毛頭無いのだ。私にとってはプライドのかかった問題でも、彼にとっては遊びでしかない。
結局、いつまで経っても彼の家を突き止めるという目標は達成出来ず、私はただ闇雲に、ただやけくそ的に尾行を重ね、そして、後ろから肩を叩かれた回数を重ねていった。
「あかりちゃん、降参する時は上目遣いで『教えて』って言ってごらん? 手ぇ繋いでうちに連れて帰ってあげるから」
「うっわ、ムカつく……!」
そうして季節は秋になり、――あの一件で私のほうがそれどころじゃなくなった。
*
「じゃあ、おやすみなさい」
笑顔のまま、玄関のドアを閉める。重々しい鉄のドアが閉まる金属音とともに一旦静寂が訪れた。サムターンの鍵を回し、チェーンを掛けると同時、貼り付けていた笑顔を剥がす。息を殺して耳を澄ましていると、数秒後、扉の向こう側でコツリと音がした。遠ざかっていく足音。
「はぁ……」
そろそろ限界だった。我ながら今までよく我慢したと思う。
いや、我慢なんて言ったら失礼なのはよくわかっているんだけど。
例の結婚話から一ヶ月。
目標達成に向けての尾行調査は、再開の目処が立っていなかった。
『しばらくはひとりで出歩かないようにして』
上司に言われたあの『しばらく』が、まさかこんなに長く続くとは夢にも思わなかったのだ。
あの一件以降、上司はタクシーで私を送り迎えし続けている。文字通りドア・トゥ・ドア。朝は準備を整えて玄関のドアを開ければ立っているし、夜には仕事を無理矢理切り上げてまで退社時間を合わせ、アパートの部屋の前まで付き添って、玄関の施錠はもちろん、チェーンが掛かった音までしっかりと確認してから帰るのだ。
買い物がしたいと言えばタクシーでコンビニやスーパーに寄り、店の中まで一緒に付いてくる。ストレスのはけ口として用意されているのは、上司同伴の例の居酒屋とネット通販くらい。
休みの日や、一旦家に帰ってからなら自由のはずなのだが、そんな時は必ず、一ヶ月前に言われた言葉が頭の中でこだました。
『言っとくけど、ここの大家さんも友達だからね』
思わず、げっ、と声に出してしまった私に、
『俺と鬼ごっこがしたいなら試してみてもいいよ。たまには追いかける側になってみたい気もするし。まぁ、おすすめはしないけど』
口元に小さく笑みを浮かべてそう言った上司。けれどその目はまったく笑っていなかった。冷たく細められたそれは明らかに上位捕食者のもので、その圧力に、私はただ小さく首を横に振る。
冗談じゃない。この人に本気で追いかけられるということはつまり、彼の『友達』――この街の十分の一の人間に顔が知れ渡るということだ。情報は拡散され、遅くとも数日中に私の顔を知らない者はこの街に居なくなる。いつかの家出少年とは比べものにならない状況に追い込まれるのは想像に難くない。
まぁ、実際はそこまでする必要もないだろうけど。
「……はぁ」
なんのことはない。結局、相手が横暴な親から過保護な上司に変わっただけで、逃げられないことに変わりはなかったのだ。
普段は頼りなく思えるほどに優しい上司だが、本気で怒ると怖い。それは、あの一件でよくわかっていた。そしてもちろん、根底にあるのが私への心配だということも、よくわかっていた。
けど、それでも。
――大丈夫、なのにな。
この一ヶ月、父からの着信はない。
上司としては、あれだけのことがあったんだから何かしてきてもおかしくない、という考えなのかもしれないが、父もそれだけのために第一勢力を敵に回すリスクを冒すほど暇ではない。実際プライドはズタズタだろうけど、今は失った金づるに代わるものを探すほうが忙しいのだ。これに関しては憶測ではなく、実家側からの情報もある事実。おそらく、今抱えている事業が失敗に終われば自分の時代が終わるのを感じているだろうから。
カウンセリングの効果が出てきたのか、父のことに関しても随分と冷静に考えられるようになった。
だから、もう大丈夫。大丈夫なのに――
「さすがに疲れてきますよ……城ノ内さん」
ため息混じりの独り言がわずかにかすれる。
乾燥した部屋の空気。誰もいない、冷え切った部屋。
ひとりになったという不安と、ひとりになれたという安堵。心の中は非常に複雑だった。
けほ、と軽い咳が口をつく。急に喉が渇いて、鞄の中のペットボトルを探した。
「ん?」
目に入ったのは携帯のランプ。メールの着信通知だ。気が付かなかった。
「あ……」
画面に映し出された内容に、疲れ切った心が穏やかになっていく。
『二十四日の夜空いてるか? 久々にふたりで飲もう。もちろんおごるから』
顔文字もデコレーションもないシンプルな文面。
「……律儀だなぁ」
イブのお誘いに、思わず笑みが漏れる。
『ありがとう。空けておくね』
メール送信完了の画面で、我に返る。
この状況だ。最近は上司以外の誰かと一緒に、外で飲んだことはない。
約束の日まで一週間もない。この過保護状態で、果たして行けるのだろうか。
*
「城ノ内さん、今日、事務所に戻ります?」
取り分けてもらった海老真丈のあんかけをつつきながら、隣の上司に問いかける。
十二月二十三日午後七時。私と上司は例の居酒屋に居た。
店主とも親しくなり、欲しかった情報は手に入れたらしいが、相変わらずそこそこの頻度で通い続けている。急に行かなくなると不自然だという理由だったが、単純に味が好みだったのもあるのだろう。特に、毎回注文しているこの海老真丈。
「いや、戻らない。なんで? 忘れ物でもした?」
「いえ、そうではないんですけど」
「どうかした?」
「……っと、忙しくないのかなって」
「そりゃ多少は忙しいよ、この時期だし」
何言ってんの、とでも言いたげに軽く笑いながら、上司が烏龍茶をあおる。
世間で言うクリスマスシーズンは業界的に繁忙期にあたる。浮気調査の割合が他と比べてかなり低いうちでも、いくつか依頼が来ていたはずだ。気になっているのは、そのうち彼が引き受けたのはほんの数件で、あとは断り続けているということ。正確には私に電話を代わって、尾行調査を得意とする私の古巣――宮原調査事務所を紹介させているのだけれど。
実際、この事務所で調査が出来るのは彼だけなんだから、キャパシティオーバーなのは確かかもしれない。ただ、ここしばらくは意図的に仕事を減らそうとしているように感じていた。それが、私と一緒に帰るためだとしたら、さすがに責任を感じてしまう。
「私、もう大丈夫ですよ。体調だって回復してますし」
だから、仕事に専念してください。ね? 半分以上は本音、残りは自由を求めて。なだめるように言ってみるけれど、
「駄目」
シャットアウトするような短い返答に、ため息が漏れた。いくらなんでも頑固過ぎやしないか。
彼はまたグラスを傾けて、
「君はもうちょっと危機感を持つべきだね。自分の存在価値、理解してないでしょ?」
ちらりと、視線をこちらに向けた。
「それとも、実際に痛い目みないとわかんないのかな?」
「……っ」
一瞬見せた冷たい表情に気圧されて、思わず目をそらす。
上司はくすりと息を漏らして、なだめるように私の頭を撫でた。
「窮屈だろうけど、もう少しだけ我慢して」
「……一ヶ月も経つのに。もう少しっていつまでですか」
「んー、俺の気が済むまで、かな」
優しい優しいストーカーは、こちらのむくれた顔に苦笑しながら、いつも通りの口調でそう言った。
「…………」
ため息をひとつ、ゆっくりと吐き出す。
言い出しづらい。
明日、別の人と飲みに行ってもいいですか、なんて。
――……危機感がない、か。
そう言われればそうなんだろうか。用心に越したことはないのはわかっているけれど、父がそこまで私に執着すると仮定して行動するなんて、一種の自意識過剰のように思えてしまう。
だって私はあの人にとって――
「存在価値、かぁ……。そんなの、あるのかな」
呟きながら、なんとなく、手にした薩摩切子の赤いお猪口を眺める。知り合いからのもらいものらしく、店主が『可愛い常連さんに』と私専用にしてくれたものだった。当初に比べれば客は増えてきたものの、まだまだ穴場的な店であることに変わりはなく、特に女性の客は自分以外に見たことがない。上司が親しくなったこともあって、他の客よりも店主との距離は近く、料理や酒の好みを把握してくれたりと、可愛がってもらっていた。
これが、今の自分。価値があるとしたら、それは今の私の周りの人たちが『園田あかり』に与えてくれたものだと思う。
噛みしめるように、お猪口の中身を飲み干す。
「あるに決まってるでしょ。君みたいなお嬢様、価値あるどころかプレミアもんだよ」
「城ノ内さんに言われてもなぁ」
「女の子はまた別の価値があるんだよ」
「…………」
揶揄するように口にされた、なんのことはないはずの彼のセリフに、言葉に詰まってしまう。
急に視線を下げた私に、上司が戸惑いの色を見せた。
「あー……えっと、感じ悪かった? 差別するとかじゃなくてさ、」
「あ、いえ、そうじゃなくて」
慌てて首を振る。上司が言ったのは差別的な意味でも、下卑た意味でもないことはわかっていた。
例えば穂積に娘が居たなら、私でも完全無敵のお嬢様に、穂積紘とはどこか違う『価値』を感じる気がするから。ただ、自分をそれとは重ねられなかった。そんな価値は、自分にあるはずがない。
頭の中を整理するようにゆっくりと言葉にすると、
「……俺にタンカ切った時の強気はどこ行ったんだか。お兄さんも言ってたけど、君はもうちょっと自信を持ったほうがいいかもね」
呆れたような困ったような顔で、そんなことを言われた。
「……そう、なのかな」
少し頭がぼんやりする。精神的な疲れからか、いつもより酔いが早い気がした。
「城ノ内さん、……私の兄に会った時、どう思いました?」
「ん? んー……」
唐突な質問に、少し驚いたような顔をした後、彼は迷うように目をそらした。
「いいですよ。思ったように言ってください。実は大抵、同じこと言われるんです」
「あー……、じゃあ言う。……正直ね、シスコンだと思った」
「やっぱり」
「でも、俺の一個上ってことは君の六歳上でしょ? ある程度自我も形成されて自分の世界が広がってきた頃に妹が生まれてるわけだし、お母さん取られる的な嫉妬よりは庇護の対象になった感じ? お兄さんリーダーシップのあるタイプだし、そのまま今に至ってるんじゃないかな。俺は兄弟居ないからわかんないけど」
「そうかもです。でも、それだけじゃないんですよ」
「ん?」
「私と兄が、なんで六歳離れてるか、わかりますか?」
上司が眉を寄せる。質問の答えと、その意図を測りかねている表情。
この人は、相変わらず推理が苦手だ。苦笑しながら、ひとつ、ヒントを与えてやる。
「就学時検診で、兄の心臓に雑音が見つかったんです」
「……っ。それって、」
上司の顔色が変わる。答えに気付いたらしい。
「何度か精密検査受けて無害性だってことがわかりましたけど、当時は跡継ぎが重病かもしれないって大騒動だったそうです。だから、」
「あかりちゃん」
制止するように名を呼ばれる。けれど、私はやめるつもりはなかった。
「要するに、」
「言わなくていいから……!」
この告白をどうにかやめさせようと、上司が少し声を大きくする。
そんな彼に微笑みかけながら、あくまで軽く続ける。
「――兄の『
「…………っ」
目の前の顔に、この話の流れを作ったことへの後悔が滲む。
「……ごめん」
眉間を押さえて目を閉じた彼に、
「なんで謝るんです?」
そう言ってまた、お猪口を空ける。
「嫌なこと言わせた」
バツの悪そうな顔に、少し後悔する。ここまで空気が変わるとは思っていなかった。
――言いたかったのはそこじゃないんだけどなぁ。
まぁいい。続きはまたいずれ言う機会が来るだろう。諦めて空気を変えることを優先した。
上司の顔に、にんまりと笑いかけて。
「じゃあお詫びってことでお酒追加していいですか? 斉藤さん、お酒お代わりお願いしまーす」
私の呼びかけに、はいよー、と短く返事して、店主が笑う。
「あかりちゃん、今日は飲むねぇ」
「最近ストレス溜まってるんですよー。誰かさんが心配性すぎて! いいから早くー」
実際より酔っている風を装って、努めて明るく振る舞う。ついでに嫌みをぶつけてみたり。
「城ノ内くん、いいの?」
「まぁ、それはいいですけど」
上司の複雑な表情。私の意図なんてお見通しだろう。
今まで話を聞いていなかった店主は、単なる気まぐれか、それとも何かを察して私と同じく空気を変えようとしたのか、にやりと笑った。
「あんまり酔わせると手ぇ出すのも大変だよ?」
「……またそういうことを」
茶化すようなセリフに、上司がげんなりとため息を吐く。
こういうからかい方はいつものことで、もう慣れた。伊達に半年も妻役はやっていない。面倒なので特に反応せず、手渡された徳利を赤いガラスに向けて傾ける。
「んー。俺は結構お似合いだと思うんだけどね」
「そりゃどうも。でも残念ながら、この子に手を出すと命の危険にさらされるんでね」
「……どういう意味ですか、それ」
聞き捨てならないセリフへの抗議は、上司の苦笑と、店主の豪快な笑い声でごまかされた。
*
「ごちそうさまでした」
「まいど! 送り狼に気をつけて!」
店主の軽口に笑顔を残して、呼んでもらったタクシーに乗り込む。後から乗り込んできた上司が短く私の住所を告げると、静かに車は走り出した。
「斉藤さんの中では、俺は一体どういう人間なんだろうね?」
上司の不服そうな物言いに、ブーツの靴ひもを直しながら、思わず笑ってしまう。
「……ひも靴の時はほどけないようにきっちり結んでね。いざって時に引っかかって転ぶとまずいから」
「はいはい、わかりましたよ」
心配性だなぁ、とため息混じりに呟くと、
「で、あかりちゃん。さっきの話の続きは?」
予想外に、上司のほうから促された。
「忘れてなかったんですか」
「君が自分のスペアだから、お兄さんが優しくしたって言いたかった? それなら違うよ。あれは……そんなレベルじゃない」
「……相変わらず推理苦手ですね。さすがにそうは思ってませんよ」
「じゃあ」
「私はスペアになり損ねたんです。跡継ぎの予備として作ったのに、生まれた子は女の子だった。男尊女卑の父親ですから、悔しかったでしょうね。検査結果に問題がなかったからよかったものの、物心つく前は私に対する態度、虐待に近かったそうです」
「物心つく、前?」
「母に聞いたんですけど、子供心にあんまりだと思ったらしいですね。兄が、私に対する態度を泣いて怒ったそうです。母は身体も気も弱い人ですから、父には強く言えなかったみたいで。おかげで優しくとまではいきませんでしたけど、物心ついてからは、そこまで辛く当たられた記憶はありません」
そう、良くも悪くも父は無関心だった、五年前までは。これを言うとまた謝られそうだから、言わないけれど。
「でも、背中におんぶしてくれたのも、泣いてる時頭を撫でてくれたのも、いい成績取って褒めてくれたのも、全部兄です」
「なるほどね。親代わりに育ててきたようなもんならシスコンも納得だ」
「……兄には感謝してます。でもね、城ノ内さん。だから、父にとって、私は本来どうでもいい存在で、そこまでするような価値はないんです。ここまでしてもらわなくても、大丈夫ですから。送り迎えももう――」
「ストップ。その話は終わったはずだけど?」
言葉を遮って、こちらを見る。視線がまた、こちらを黙らせるように冷たくなる。
「…………」
結局、明日の予定を言い出せないまま、タクシーは私の家へとたどり着いてしまった。
いつものようにアパートの前にタクシーを止めると、上司が先に車外に出る。
周りを確認するように軽く見回すのは、まだ警戒している証拠だ。
「お手をどうぞ、お嬢様?」
くすりと笑いながら、芝居がかった口調でこちらに手を差し伸べる。
「……ありがとう、ございます」
運転手が笑っている。頬が熱いのは酔いのせいか、それとも羞恥心からか。
振り払うのはさすがに失礼かと、うつむいたまま上司の手に自分の手を重ねる。
けれど、エスコートされながら、車から足を踏み出した瞬間、
「ひゃ……!」
上司の足に躓いた。
「……っと、」
間の抜けた声を上げながら倒れる私の身体を、上司の腕が支える。
「飲み過ぎ」
私を抱きかかえたまま静かにため息を吐くと、上司は短くそう言った。
耳元で響いた低い声に、斉藤さんの言った冗談を思い出してしまって、慌てて身体を離す。
「違います。そんなに酔ってないです」
今のは上司の足の位置が悪かったのだ。わざとじゃないかと疑ってしまうほど。
「そう?」
上司はまたくすりと息を漏らして、
「すみません、ちょっと待っててもらえますか?」
いつものように運転手に呼びかけると、
「じゃあ行こうか、お嬢様」
私の肩に手を掛けて、そのまま横抱きに抱え上げた。
「え、ちょっ、城ノ内さん!?」
「悪いけどもうちょっとしがみついてくれる?」
「いや、そうじゃなくて、何して……!」
「声抑えて。近所迷惑だよ」
「……じゃあ降ろしてくださいよ」
「却下。転んで怪我でもされたら困る」
「大丈夫ですから……こんな、人に見られますって……!」
「俺は別に構わないけど?」
「私が構うんですよ……! 何考えてんですか……!」
「大丈夫だって、斉藤さんの言うような送り狼にはならないから」
「っ、当たり前ですっ!」
「あぁ、じゃあこうしようか、あかりちゃん。
――部屋まで大人しくしてられたら、明日の飲み会許可してあげるよ」
「……っ、な、」
なんで知ってるんだ、この人。
こちらの言いたいことを察したのか、彼は私を見下ろして目を細め、
「ほら、バランス悪いからはやく」
「…………うぅ」
私は涙目になりながら、言われるままに彼の首へ両腕を伸ばした。
「よく出来ました」
再び耳元に響いた小さな声は、明らかに噛み殺した笑いを含んでいた。
「……本当に見られてますよ」
彼の肩越しに見える道路でひと組のカップルが足を止め、呆気にとられたようにこちらを見ていた。たった今すれ違ったスーツ姿の男性も、眉をひそめてこちらを振り返る。三人とも顔見知りじゃないのは救いだが、恥ずかしいことに変わりはない。
「だから構わないって」
カラカラと笑いながら部屋へと足を向ける上司に、諦めのため息が口をついた。
「……なんで知ってるんですか、明日のこと」
呟くように、質問する。
「なんでだと思う? 俺と違って推理が得意なあかりさんの意見を聞いてみたいね」
思わず、顔が引きつった。根に持ってたのか。
彼の嫌みを飲み下すと、一度ゆっくりと目を閉じて考える。
――城ノ内さんが、なんで約束を知っているか?
その疑問にまず思いつくのは。
「盗聴、したんじゃないですよね?」
「信用ないな、俺」
耳元の声が苦笑する。
「お誘いはメールでしょ? まぁ、それでも盗み見ることは出来ないわけじゃないけどね。それも含めて、誓って盗聴はしてないよ。あの時一回だけ。これからもするつもりはないから安心して」
さすがに心外だったのか、上司は珍しく弁解に回った。
「…………」
正直、彼の名誉はどうでもよかった。気になるのは、そこじゃなくて。
――盗聴『は』、か。
ただの勘だったものが、確信に近づいた気がする。
「あかりちゃん? ……眠い?」
急に黙り込んだ私に、上司が戸惑ったように言う。
「……いえ、大丈夫です。……そっか、じゃあ、兄と連絡取ったんですね」
上司が盗聴を否定するなら、残る選択肢は『本人から聞いた』しかないだろう。私が言っていないのだから、もちろん『本人』とは私を誘った人物、私の兄のことだ。
「ご名答。さすが推理の得意なあかりさんだ」
「……もう忘れてくださいよ、謝りますから」
「冗談だよ」
くすくすと笑いながら、上司は階段を上り始める。このアパートは二階建てにしては建物が高く、その分階段が急になっている。この体勢はただでさえ負荷が掛かるはず。そろそろ音を上げて降ろしてくれないかと耳で様子をうかがってみるも、残念ながら彼は息ひとつ乱してはいなかった。
心の中で舌打ちする。以前にも思ったけれど、ひ弱そうなくせに体力は無駄にあるな、この人。
「……それで、何かあったんですか? まさか頻繁に連絡取ってるわけじゃないでしょう?」
「連絡は向こうからだよ。二十四日は残業させるな、邪魔するなってさ」
「……あー……、なんか、すみません」
そりゃ誰に聞いてもシスコンと判定されるわけだ。
はい着いたよ、と、短い言葉とともにゆっくりと降ろされる。目の前には、自分の部屋の扉。
鞄から鍵を取り出す私に、
「明日、待ち合わせは七時だよね? 楽しんでおいで」
約束通りのご褒美として、上司は優しい言葉をくれた。
「ありがとう、ございます」
上司が約束を知っていたことにも驚いたけれど、私にとってはあっさり許可がもらえたことのほうが驚きだった。目の前にある裏のない笑顔に戸惑いを隠せない。そんな私の頭に手を置いて、上司は小さい子にするように、少し腰をかがめて目線を合わせた。
「ただし、事務所からはタクシー移動。家まで帰るのも呼んでもらうこと。なんなら行きのタクシー待たせておいてもいいよ。お金は経費で落としてくれたらいいから。あと、九時には帰ること。店から十五分もかからないよね。九時十五分には家に居るようにして」
口を挟ませない矢継ぎ早の指示からは、『居なかったら、どうなるかわかるよね?』という脅しが聞こえてきそうだった。けれど今、まっすぐにこちらへ向けられているのは、最近よく目にする冷たい目ではない。
「……はい」
この人は、心底心配してくれている。過保護ではあるけれど、きっと上司にとって私は、心配してもらえる程度には『価値』のある存在なのだと思っていいのだろう。有り難さを噛みしめながら、素直に頷いた。
「じゃあ、おやすみ」
わずかな乱れを直すように私の耳元の髪を軽く梳いて、どこか名残惜しそうに、上司が短い挨拶を口にする。
「おやすみなさい。城ノ内さんも気をつけて」
明日も同じ事務所で仕事をするというのに、まるでわずかな別れでも惜しむ恋人同士のような空気がおかしくて、くすりと息を漏らしながら扉を閉めた。
チェーンを下ろし、いつものように、扉越しに上司の足音を聞く。
たった今閉めたドアに背中を預けて、深呼吸のようなため息をひとつゆっくりと吐き出した。
――上手く、いった。
思わず笑みが零れそうになるのを抑える。
喜ぶのはまだ早い。計画は、まだ折り返し地点だ。
一時間後、電話を掛けた相手は、私の希望を快く引き受けてくれた。
*
「いらっしゃいませー!」
駅前の居酒屋。
隣と衝立で仕切られただけの小さな席。店員に案内されたそこには、もう既に兄が座っていた。
「お待たせ、兄さん」
「おぉ、久しぶ――」
うつむいてお通しをつついているスーツ姿に声を掛けると、彼は慌てて顔を上げた。言葉を途中で止め、一瞬、驚いたように目を見開く。
「――切ったんだな、髪」
「うん。家出てからはずっとこれだよ。おかしい?」
「……いや、似合ってる。ずっと長かったから、ちょっとびっくりした」
家に居た頃の私の姿と重ね合わせているのだろうか、懐かしむような、それでいてどこか寂しそうな顔に、そつのない笑顔で応える。
「お誘いありがとう」
「去年は会えなかったからな」
「忙しかったもんね、お互い」
一年前は私も調査員見習いという名の尾行要員で、この時期は予定など入れられる状態ではなかった。
兄は店員を呼び、ビールの中瓶といくつかの料理を注文すると、
「今は、忙しくないのか?」
少し不思議そうな表情で、聞いてくる。
兄は、私が家を出て一年の間何をやっていたかを知っているし、現在私とともにある城ノ内紘が何をしているかも、おそらく知っている。そのうえでの質問だった。
「今は、ほぼ定時に帰ってるよ。……あれ以降、ひとりになるなって、送り迎えまでしてもらってる。依頼も、時間の調整きかないのはほとんど断ってるみたい」
思わず、視線が下がる。
「ふぅん。それにしちゃ俺が電話掛けた時は忙しそうだったけどな」
「まぁ、まったく依頼受けてないわけじゃないから。たまたまかもね」
私が正体を明かしたあの日以降、言葉だけじゃない信頼をもらったのか、お金の管理を含めて色々な仕事を任せてもらえるようになった。事務員であり、妻役であり、秘書でもある私は、事細かな内容までは聞いていなくとも、依頼の概要と上司のスケジュールくらいは把握している。このところの依頼数ではそれほど忙しくなるとは思えない。頭に浮かぶひとつの考え――兄さんと話すのが嫌だったんじゃないの? とはさすがに言えず、曖昧に答えた。実際、たまたまの可能性もないとは言えないし。
「それにしたって、キャッチ入ったとかで用件話す前に二回も切られたぞ? 二回目はあいつが掛け直してきた電話で、だ」
「…………」
なんだろう。確かに、違和感を覚える。
メールと同じく、電話も簡潔な兄のことだ。そう長電話していたわけじゃないだろうに。
「何か、あったのかな」
上司の、城ノ内紘としてのプライベートは知らないが、何か問題があったのかもしれない。もしそうなら、そんな時に私のことでさらに手を煩わせていることになる。
私の表情がまた曇ったことに気が付いたのか、兄がこちらに手を伸ばした。
「どうかね? 意外と女関係とかかもよ。クリスマスだし」
「……そっか。そだね」
わしわしと髪をかき混ぜる手の感触にどこか違和感を覚え、相変わらずの子供扱いにむくれながら、私は上司の撫で方にすっかり慣れていたことに気が付いた。
女性の影は見えないけれど、隠し事の上手な上司のことだ。私が気付いていないだけで、もしかすると仕事以外でのお誘いも多いのかもしれない。兄との電話を慌てて切るくらいに重要な相手。あの上司を振り回せる女性が居るのならそれはそれでお目に掛かってみたいものだけれど。
「お待たせしましたー! 中瓶とお刺身三種盛り合わせです」
店員の明るい声に思考が途切れる。兄が軽く礼を言うと、店員はにっこりと笑顔を返し、頭を下げて衝立の向こうへ消えていった。
「ま、あいつのことはどうでもいい。飲もう。今日はめでたい日なんだから」
にっと笑いながら、兄は私にグラスを持たせ、瓶の中身を注いだ。次いで自分のグラスへ注ぎ終わると、手に持ったそれを、こちらに向けて少し掲げてみせる。
「乾杯。二十四歳の誕生日、おめでとう」
「ありがとう」
カチンと音を立ててグラスをぶつけると、そうそう、と兄は傍らに置いてあった紙袋を寄こした。
「ん。誕生日プレゼント」
「見ていい?」
「もちろん」
のぞき込んだ袋の中には、ふたつの包みが納まっていた。
「二個?」
「去年の分。送ろうにもお前の住所知らないし」
「……またメールするよ、住所」
「いや、しばらく言わなくていい。念のため、な」
目の前の盛り合わせに箸を付けながら、兄はそう言った。
「…………」
この人も父のことを気にしている。
「ほら、開けてみ? 大したもんじゃないけどな」
「あ、うん」
不織布バッグにかかったリボンをほどく。出てきたのはブランドタグのついたマフラーとニットの帽子。シンプルなデザインがとても兄らしかった。
「……ありがとう。私、何もあげてないのに」
「じゃ、来年期待してるよ」
「ん、頑張る」
久しぶりの兄との時間はとても楽しいもので、時間は飛ぶように過ぎていった。
酒豪の兄が相手な分いつもと違って制限なしで飲めるのもあって、ハイペースで徳利やグラスを空けていく。やはり最近弱くなっているのだろうか。昨日ほどではないが、自分にしては比較的早い段階で頬の火照りを感じ始めた頃、だった。
「飲み過ぎるなよ。今日は用事あるから送ってやれないぞ」
「タクシー乗るからいいもん。というか、兄さんもさ、気を使わなくていいよ?」
「何がだよ」
「イブに妹と過ごすとかさ。彼女とか居ないの?」
揶揄するような私のセリフに、兄が言葉を詰まらせた。
「……居るよ」
数秒後、ポツリとそう漏らした兄の表情が、何故か翳る。
兄ももういい年だ。相手が居るのは当然だし、それについてどうこう言うほどブラコンではない。なのになんでそんな顔をするんだろう。不思議に思いながらお猪口に口を付けていると、意を決したような表情で、兄が口を開いた。
「言うべきかと思ったけどな、」
「ん?」
「…………プロポーズした」
「えっ!?」
お猪口を置いて思わず、素っ頓狂な声を上げてしまう。
「そ、それで?」
恥ずかしそうでいてどこか暗い顔に向かって、続きを促す。
文字通り固唾を飲んで、兄の言葉を待った。
「OKもらったよ」
思わず目を見開く。
つまり、兄は、自分の結婚が決まったと、そう言ったのだ。
「嘘……、おめでとう!」
身を乗り出して、兄の顔をのぞき込む。なんだろう。嬉しい。
想像したことがなかったわけじゃない。兄が結婚する時はきっと複雑な心境になるだろうと思っていた。けれど、今の自分は驚くほど素直に祝いの言葉を口に出来た。
「どんな人? 仕事は? 職場関係の人? お姉さんが出来るのかぁ」
「普通の子だよ。図書館の司書やってる」
立て続けに質問してから、ポツリポツリと答える兄の表情にハッとする。
「あ、父さんは……?」
暗い表情の原因は、それじゃないのか。あの父なら、家柄がどうのと反対してもおかしくはない。
けれど、兄は首を横に振った。
「好きにしろってさ。一般人の方が結納金とか金が少なくて済むから好ましいそうだ。まぁ親父の許可を受ける必要はないけど」
「……そう」
それならよかった、と胸をなで下ろす。
「え、じゃあ、なんでそんな暗い顔してるの?」
結婚が決まって、阻むものもない。幸せ一杯のはずなのに。
まさか彼女に対して何か不安なことがあって、一応探偵事務所にいる私に依頼をしようと?
いや、それなら私に言わなくても上司に直接言えばいい話だ。
いやいや、待て。上司は忙しいらしいから、まともに話が出来なかったのかもしれない。
兄の返答を待つ間、様々な思考に頭の中を占められる。眉を寄せて悩む私に、兄は呆れたように苦笑した。
「……お前、ついこの前あんなことがあったばっかりなのに、よく祝えるな」
「は?」
「お前にだけは言うべきか悩んだ。兄妹なのに、なんでこんなに違うんだろうな」
――あぁ、そうか。
無理矢理結婚させられそうになったばかりの妹の前で、周りから祝福されてごく穏やかに幸せな結婚をしようとしているという、感じる必要のない負い目。
表情に影を落とす原因がそれなら、話は簡単だ。兄は大きな勘違いをしている。
「……そうだね」
徳利からお猪口に酒を移しながら、ふっと笑う。
「でも、何か勘違いしてない?」
自分が幸せになることに負い目を感じるということはつまり、兄は思っているわけだ。
――妹は不幸だ、と。
「私、今幸せだよ。家に居た時より、ずっと」
自活するのは大変だけど、今の私にはちゃんと居場所があるし、あの一件があったからこそ余計なしがらみからも解放された。
「兄さんのスペアにはなり損ねたけど、そのおかげで今の私がある」
強がりなんかじゃない。これは本心だ。
家を出て二年足らず。色々あったし大変な思いもしたけれど、どれが欠けても、きっと今の私は手に入らない。
「私はね、これでも今の状況が――園田あかりが気に入ってるんだよ。不幸みたいに言わないで」
手の中の水面を見つめて、一気に飲み干す。
言いたいことがありすぎて、考えがまとまらない。けれど、心から口にする。
「今までありがとう。本当に感謝してるよ」
いつかの公園で上司相手にそうしたように、
「だから、幸せにならなきゃ許さない」
力一杯の笑顔と、強気な口調で告げた。
「私に出来ることがあるならなんでも協力するけど、出来ればうちの事務所に用のない人生を送れるように努力してほしいかなぁ」
冗談めかして付け加えたセリフに、兄は笑ってくれた。
「……了解。ありがとな」
短い礼に微笑みを返す。
ほんの少し訪れた沈黙に、衝立の向こう側で、ありがとうございましたー、と威勢のいい店員の声が聞こえた。隣に居た三人の男性客が笑いながら通路を抜けていくのを流し見ると、兄はちらりと腕時計を確認した。つられてのぞき込んだ盤面では、細い針がリミットまであと三十分の時間を指し示していた。
「彼女さん、今日は一緒にいなくて良かったの?」
「お前の誕生日だってのは言ってあるよ。それに、後で会うから」
先ほど言われた言葉を思い出す。『用事あるから送ってやれないぞ』。あれはこの後彼女と会う約束があるからだったんだろう。
「じゃあ私、そろそろ帰るね」
唐突に席を立つ私を見上げて、兄が驚いた顔をする。
「え? 時間までまだあるだろ?」
「なんか、最近弱くなってるみたいで、酔ってきちゃったから」
「……そうか。それならまだ時間あるし、やっぱり送っていこうか?」
「いや、ひとりで大丈夫だよ。兄さん、彼女さんとの待ち合わせは何時にどこで?」
送りはいらないけどもう出るなら一緒に行く? と問いかける私に、兄は意味ありげに笑った。
「お前には内緒。しばらくひとりで飲んでいくよ」
「…………そう。残念、見てみたかったのに」
そのうちな、とまた私の頭を撫でる兄に、じゃあね、と手を振った。
駅前で利用客が多いのか、店の前にはいくつか空車のタクシーが止まっていた。
そのうちのひとつに乗り込んで自宅の住所を告げる。
頬は熱く感じるものの、頭の芯はハッキリしている。
『お前には内緒』
あれは、元探偵としての私への言葉だ。――尾行されそうだから、お前には内緒。
あのセリフがいたずら心に火を付けた。兄の相手に興味を引かれたのは本音。でも、どちらかというと、久々に尾行をしてみたかっただけかもしれない。
上司との約束を、違えることにはなってしまうけれど。
つかの間の解放。気分転換は必要なのだ。
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