第230話 そういうことを言いたいんじゃない
試用期間で辞める、転職してきた年上部下。
「こんな見積もりの依頼の仕方あるか? こんな見積もりを客先に出すのなら僕にCCとか入れないでください‼ 僕が許可しているなんて思われたくもない‼ 非常識です‼ 大体、普段から仕事は雑で言動が幼稚なんですよ‼ 50も半ばで新人なんだから仕方ないなんて世間で通用しますか? 指導できる年齢だから転職者として採用されてるんですよ‼ 考え違いをしないでいただきたい‼ キャリアだけなら僕の上司でも構わないんですよ‼ 数十年何をやってきたんです‼」
小言が止まらない。
クドクドと言ったが、つまりは『やりなおせ』と言ったつもりだったのだ。
ところが…こういう人物は考え方が違うのだ。
普通は、「すいません、やり直します」である。
彼は違う。
黙って席に戻って無言で何かをやっていた。
数日後…
「例の見積もりどうなりました?」
「えぇ、そのままの、やり方で進めました」
「……はい?」
「だから‼ アンタが自分を巻き込むなと言うから報告も連絡もしてません」
「……そうですか…わかりました…存分に恥をかいて、営業に文句を言われてください、フォローできませんので、会議にも僕は出ませんから」
「はい」
もちろん、営業課長に呆られ、僕のところには客先から問い合わせ多数である。
きっと前職でも、誰からも相手にされないから、何もできないまま数十年過ごしたのだろう。
会社が潰れて外に放り出された。
誰からも相手にされないって怖いことなのだと彼を見ていて思った。
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